《カノジョの好度が上がってないのは明らかにおかしい》第4話 彼は、土曜の朝の始まりを告げる

 時は、4月8日土曜日、午前7時半の事。

とりあえず狀況を整理して落ち著いてみようと思う。

 まずここは俺の部屋だ。その點は昨日ここに寢たから問題はない。

 次に今は朝だ。時計もそう言ってるし、外を見てもわかる。

 3つ目に、今朝はに起こしてもらった。そいつは俺の彼なわけでこれも問題ない……

 「な訳ねぇだろ!!!!!」

 俺がそうぶと件の彼、六実小春は短い悲鳴をあげてし飛び跳ねた。

 俺はその姿を見て、「かわいい……」なんて思っている自分自とこの意味不明な狀況に対して「はぁ……」とため息をついた。

 「とにかく馨くん、朝ごはん食べよ?もう冷えちゃってるかも」

 「ん? あぁ」

 俺はそう六実に促されるまま、階段を下った。

 いや、なんで促されるままになっちゃってるんだよ、俺。

 しかし、人間の三大求の一つ、食には俺も敵わず、六実についていくしかなかった。

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 階段を下りるたび、ミシミシいうこの家だが、建ててから、まだ20年も経っていない。20年って結構経ってるか……

 両親は共働きで、顔をあわせることもほとんどない。かといって仲が悪いわけでもなく、良い距離を保っている、ってじだ。

  居間の扉を開けると、食う香りがたちまち中を包んだ。

 「馨くん、座ってて。料理出すから」

 「わ、わかった……」

 いろいろと疑問はあったのだが、せっせと料理を運んできてくれる彼を見ていると訊く気も失せ、俺の思考は朝食のことへとシフトした。

 今朝は洋食だった。

 丁寧に焼かれたオムレツとウインナーに、付け合せの野菜。

 こんがりと焼かれたトーストは、いつもと同じパンなのになぜここまで食をそそるのだろうか。

 俺がまじまじと料理を見ていると、彼はニコッと笑い、

 「召し上がれ」

 と言った。

 

 俺は両手を合わせていただきますを言った後、ゆっくりとオムレツを口に運んだ。

 これは……!

 と、心につぶやいてみたものの、この味を表現する力は俺にはない。

  だからただ一言つぶやいた。

 「うまい……」

 俺がそう言うと、六実の顔に、笑顔の花が咲いた。

 「本當に? 」

 「あぁ。うまいよこれ」

 やったぁ……という呟きが聞こえたのはおそらく気のせいだろう。だって俺への好度20パーセント以下だよ?

 そんなこんなで全て完食。

 「ごちそうさまでした」

 「お末様でした」

 俺と六実が靜かにそう言う。なんか老夫婦みたいでこういうのいいなーと俺が思っていると、俺の手首は何か、らかいものよって圧迫された。

 それが、六実の手で、俺は手首を六実に摑まれたと気付いた時にはもう遅かった。

 「行くよ!」

 俺は六実の手に引かれ、勢を崩しながら引っ張られていく。

 もちろん、強引に手を振り払うこともできそうだが……まぁ、健全な男子校高校生がに腕引かれて何か期待したりしないわけありませんよね。

 で、俺は彼に引かれるまま、家を飛び出し、街を駆け抜けた。

 たなびく髪が、顔にビシバシ當たって鬱陶しい。

 ……すみません噓つきました。すっごくいい匂いでめっちゃいい気分です。

 六実のはぁ、はぁ、という吐息と、し赤く染まった頬がどこか艶かしく、俺は見とれてしまった。

 こいつどんだけ俺の目を惹きつけるんだよ……目を奪う能力とかあるんですか?

 そんな他もないことを考えてるのが間違いだった。

 「著いた〜」

 「えっ」

 ガラガラガッシャーン、とかそういう効果音が多分合うと思う。

 俺は急停止した六実のせいで、思いっきり道端のベンチに突っ込んだ。

 「えっと、大丈夫?」

 「あ、あぁ。大丈夫大丈夫」

 髪を耳にかけながら、六実は俺のことを心配そうに覗き込んでいる。

 そんな顔で見つめられたら痛みなんてぶっ飛んでいったぜ!

 多分そんじょそこいらの醫者なんて目じゃないくらいこの人治癒能力持ってるよ。多分バーサクヒーラーとかと同レベルだと思う。

 「はい」

 彼はそう言うと、らかそうな、もといらかかった手を俺に差し出した。

 俺はすぐにそれにつかまろうとしたが、手と手がれ合う直前、俺は手を引っ込めた。

 「どうしたの?」

 「ん、いや、このくらい一人で立てるから」

俺はそう言い、自分の腕で立ち上がった。

 六実はし不満そうな顔をしていたが、きっとこれが正解なのだ。

 俺はこうやって、六実と一緒にいるのが嫌いじゃない。これまでの態度から彼もそう思ってくれているだろう。

 だが、一歩踏み間違えてしまえば待つのは虛空だ。全てが消えて、俺に悲しみだけが殘る。

あんなの……もうごめんだ。

 瞬間、俺の右ポケットが振する。

 恐らくティアだろう。俺は六実に一言言い、攜帯のロックを解いた。

 すると、畫面に三頭のキャラクターが奧から出てきた。

 そしてそのティアは、嘲笑っているかのような、目でしの間俺を見ると、まったくこれだから……のようなじで首を振ってみせた。

 ティアから吹き出しが出てきて、そこに臺詞が表示される。

 「馨さん、何か勘違いされてるみたいですけど、小春さんの好度20パーセントどころか今18パーセントですよ?」

 えぇ……? マジで?

 「はい、私の計測が狂ったことがありますか?」

 なんだよこいつ、テレパシー使えんのかよ。勝手に人の心読んでんじゃねぇ。

 俺が不機嫌そうな顔をティアに向けると、

  「私に心を読む機能はありませんよ?カメラを通して見える馨さんの馬鹿面から推測をしているだけです」

 と表示された。

 恐らくティアのスキルには、「何気なく相手のHPを削る」とかあるのだろう。

 なにそれ便利。FFのパーティーとかにしい人材だわ。

 「馨くん、バス來たよ〜」

 俺がティアとそんな會話(正確には一方的な言葉の暴力という)をしていると、六実が俺を呼んだ。

 よく周りを見渡せば、ここはバス停で、今ちょうどバスが來た。

 俺は六実に言われるまま、バスの前まで移した。

 だが、俺にはこのバスが、俺を新たなイベント発生地へと送りつける、魔の移送車に見えて仕方がなかった。

 

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