《カノジョの好度が上がってないのは明らかにおかしい》第11話 自稱ナビゲーター ティア
 「何しに來た」
 俺はこの上なく低い聲でそう言った。だが、目の前の年、小川紗空はおどけて笑った。
 「そんな怒らないでくださいよ。自分の彼とその元カレが一緒にいたらそりゃ気になりますって」
 紗空はわざとらしく、「彼」という部分を強調してそう言った。そんな挑発的な態度に、俺は歯を強く噛みしめた。
 「で、俺の元カノの今カレさんが何の用で?」
 「別に、用はないですよ。元カノにこっぴどく言われた殘念な年をバカにしてやりたかっただけです」
 またもや紗空は俺を嘲るように笑った。
 「あと、僕たちの仲を邪魔したりしたら僕怒りますよ? 第一、彼に捨てられたあなたにはできっこないでしょうですけど」
 「ああ。捨てられたさ。だけど元カレが元カノに付き合う相手ぐらい選んだほうがいい、ってぐらいのアドバイスをしても、バチは當たらないと思うが?」
Advertisement
 おかしいことを言っている。そんなのは自分でもわかっていた。だけど、このくらいの欺瞞でしか、今のこの気持ちを紛らわせることしかできなかった。
 「本當に付き合ってたんですか?」
 唐突に放たれたその一言に俺は虛をつかれた。
 「小春先輩は本気っぽかったですけど、馨先輩はどこかぎこちなかったですし。もしかして……狀況に流されて付き合ってることになっちゃったとかですか?」
 意地の悪そうな瞳が、靜かに笑っていた。
 確かに、狀況に流されていたのは事実だ。でも、それでも……
 「俺は六実と付き合ってたし、好きだった。いや、あいつにベタ惚れだったと言ってもいい」
 なんて恥ずかしいこと言ってんだ。そんな思考がよぎったが、今はとりあえず無視して続けた。
 「まだあいつについて俺が知ってることはない。だけど、俺は六実の容姿、仕草、格、全てが好きだ。大好きだ!」
 本當に、自分でもいかれていると思った。だが、今はこのの中にある衝を言葉にしたい、しなければいけない。そうじた。たとえ、いつか消えてしまうとしても、今この瞬間がなくなることはないのだから。
 「だから、だから……」
 両手を強く握りしめ、下を向いてしばし思案した。
 そして、力強く紗空を見據えると、こう言い放った。
 「お前から六実を奪い返してやる!!」
 その、びにも似た聲は、晝時の屋上にこだました。
 獨善的だと言われてもいい。わがままだとも言われて當然だろう。でも、それでも、俺は六実のことを想っている。だから俺は六実を奪い返す。
 「ふっ、ははははは!! なっ、何言ってんですかこの人!  バカじゃないの!!!  もっ、もうお腹痛い……」
 そいつは、俺のびから一泊置いた後、腹を抱えて笑いだした。
 「おまえ……」
 俺が今にも顔パンしそうな拳を親鸞並みの神力で押さえ込んでいると、紗空の周りが急激に変化しだした。
 「予兆……?」
 そう、それはまさに予兆のようだった。何日か前の老人のように、関係がリセットされる直前には白い靄のようなものがその人の周りに出現するのだ。
 彼の周りにはそれと似たようなものが現在出現している。しかし、それはいつもと違い、し青みを帯びていた。
 「おいティア!  紗空の好度を教えてくれ!  早く!」
 俺はスマホを取り出すと、それに向かって思いっきりんだ。傍から見ればとても稽な景(灑落じゃないです……って俺はこんな時に何言ってんだ)だろうが、俺はとても必死だった。
 「いくらんでも出てこないと思いますよ?  馨さん」
 その聲は聞き飽きた「彼」の聲だった。
 
 目の前で微笑んでいるのは小川紗空のはずだ。だが、俺にはその姿に三頭の可らしいキャラクターが重なって見えてしょうがなかった。
 紗空の周りの靄は次第に濃くなっていき、紗空自の姿はもう見ることができなくなった。そして、その靄、いや、今の狀態は青いか。それはやがて一點に集まると、俺のスマホの中にゆっくりとっていった。
 「どもども、馨さん。まさか私が実化できるとは思ってなかったでしょう!」
 がスマホの中にっていった直後、ディスプレイが自然に點き、三頭の可らしいキャラクターが出てきた。
 「……ふざけんなよ」
 「はい?」
 「いやいや、なんでかわいらしく首傾げちゃってんのさ。 何? 俺から彼取ったのって嫌がらせ!?」
 ティアは「はて? なんのことやら?」みたいな表で俺を見つめてきた。
 「いやだなぁ、馨さん。私は馨さんを良い未來へ導くナビゲーターなんですよ?  これもいい未來へのフラグ立てです! まぁ、馨さんの反応が面白かったってのもありますけど......」
 「おいそこ! 最後の一言余計だろ!」
 「いいじゃないですか〜。突如現れたのライバル! 的なじで」
 「あぁ。なんかもういいや」
 まぁ何はともあれ、実際のところ、六実は俺以外と付き合っていないということだ。とりあえずは一安心だな……って。
 「おいティア! 小川紗空が実際には存在しないってこと六実に教えないといけなくないか ︎」
 「あ、はい。 六実さんには事を知ってもらった上で協力してもらってますので大丈夫です」
 と、ティアはとてつもなくいい笑顔でそう言った。そっか。六実ちゃん知ってたんだ。それなら安心……って……!
 「って、ええ ︎   六実知ってた上で協力してたのか ︎」
 「はい、ついでに言うとさっきの涙も演技ですよ。いやぁ、流石、演技のレッスンをけてるだけありますよねぇ。馨さんもまんまと騙されてましたし。ぷぷぷ……」
 「おい! それマジかよ!」
 ティアは、笑いを堪えてますを出しながら俺を嘲る。
 でも、あれが演技だというのならショッピングモールの帰り道、あのときの涙も噓なのではなかろうか。あ、「泣き顔見られるの恥ずかしい」ってのは、笑いを誤魔化すためのカモフラージュなのでは……
 やべぇ。死にたくなってきた。
 「馨さん! 早まらないでくださいね? なんならカウンセリングしてあげましょうか?」
 「だから心の中読むなって。というかそもそもの原因はおまえだろうが!!」
 「え?  そうでしたっけ?  んー……てへぺろ?」
 がちゃり。そんな音がした。
 そう思った時にはもう遅く、俺のスマホはコンクリートの地面に打ちつけられ、凄慘なる狀態になっていた。
 「ああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
 俺はなんてことをしてしまったんだ……
 大事な大事なスマホ様を破壊してしまうなんて……
 いくらスマホをめちゃくちゃにしようと、機種変をすれば中のティアは平然とそこにいる。
 そんなこと分かりきっていたのに俺はスマホを壊してしまった。
 ……俺のバカ。
 スマホを買いに行かなければいけない憂鬱に肩を落としながら、予鈴のなる中屋上からの階段を下っていった。 
 
 
 
婚活アプリで出會う戀~幼馴染との再會で赤い糸を見失いました~
高身長がコンプレックスの鈴河里穂(すずかわ りほ)は、戀愛が苦手。 婚活アプリを宣伝する部署で、強制的に自分が登録することになり、そこで意外な出會いが待っていた。 里穂の前に現れた幼馴染との関係は? そして里穂にアプローチしてくる男性も現れて…。 幼馴染の企みによって里穂の戀はどうなるのか。 婚活アプリに登録したことで、赤い糸が絡まる甘い物語。 第14回らぶドロップス戀愛小説コンテスト 竹書房賞を受賞をいたしました。 お読みいただきありがとうございます。 9月22日、タイトルも新しく『婚活アプリの成婚診斷確率95%の彼は、イケメンに成長した幼なじみでした』 蜜夢文庫さま(竹書房)各書店と電子書籍で発売になります。 ちょっとだけアフターストーリーを書きました。 お楽しみいただけたら嬉しいです。
8 178色香滴る外資系エリートに甘く溶かされて
大手化粧品メーカーのマーケティング部に勤務する逢坂玲奈(26)は訳アリな初戀を引き摺っていた。5年前の夏の夜、お客様だったあの人のことが忘れられなくて……なのに、その失戀の相手である外資系コンサルタントの加賀谷春都(32)と職場で再會して————結婚してほしいって、どういうこと!? 色香滴る美貌のコンサルタント × 秘密を抱える化粧品マーケッターの5年越しの戀の行方は? *完結しました (2022/9/5) *改稿&加筆修正しました(2022/9/12)
8 117秘め戀ブルーム〜極甘CEOの蜜愛包囲網〜
「觸れたくて、抱きしめたくて、キスしたいって。ずっと思ってたんだ」 ある事情で仕事も家も失った香月志乃は、再會した同級生で初戀の人でもある諏訪翔の提案で彼の家に居候することに。 トラウマから男性が怖いのに、魅力たっぷりな翔の言動にはなぜかドキドキして――? 男性が苦手&戀愛未経験・香月志乃 × とことん甘やかしたいCEO・諏訪翔 甘やかされて、愛されて。 また、あなたに墮ちてしまう――。 \初戀の同級生と甘やかで優しい大人の戀/ ※この作品は別サイトでは別名義で公開しています。 ノベルバ→2021,8,14~2021,8,22
8 133草食系男子が肉食系女子に食べられるまで TRUE END
女性が苦手で、俗に言う草食系男子の雄介は、ある日クラスのアイドル的存在の加山優子に告白される。 しかし、その告白を雄介は斷ってしまう。 それでも諦めきれずに、熱烈なアプローチを繰り返してくる優子。 しかし、主人公は女性が苦手な女性恐怖癥で? しかも觸られると気絶する?! そんな二人の戀愛模様を描いた作品です。 変更內容 もしも、雄介が記憶をなくさなければ..... もしも、あの事件がなければ...... これは學園祭が通常通り行われていた場合のストーリー あの事件がなければ、物語はこのように進んでいた!! 「草食系男子が肉食系女子に食べられるまで」の分岐IFストーリーになります。 前作をご覧でなくてもストーリーを楽しめます。 前作をご覧の方は「文化祭と新たな火種4」から分岐しているので、そこからご覧いただければこちらの作品も楽しめるかと思います。 毎週更新実施中!! 良かったら読んで感想をください! コメントもお待ちしています!!
8 111悪役令嬢は斷罪され禿げた青年伯爵に嫁ぎました。
斷罪され、剝げた旦那様と結婚しました。--- 悪役令嬢?であるセシリア・ミキャエラ・チェスタートン侯爵令嬢は第一王子に好いた男爵令嬢を虐めたとか言われて斷罪されあげく禿げたローレンス・アラスター・ファーニヴァル伯爵と結婚することになってしまった。 花嫁衣裝を著て伯爵家に向かったセシリアだが……どうなる結婚生活!!?
8 101戀した魔法少女~生まれ変わった魔法少女が、15年ぶりに仲間と再會する~
「あの時死んだ魔法使い、佐倉町子は私だよ!」 二〇世紀も殘り僅かとなった時代。 大魔女から力を授かり、魔法使いになった五人の少年少女が居た。 最初こそテレビのヒーローのように、敵を倒して意気揚々としていたが、楽しいことばかりは続かない。 ある日、魔法少女の一人・町子は、不可解な行動をする仲間を追って戦闘になり、この世を去る。その魂が蘇った15年後の世界で、彼女は仲間だった魔法使い達に再會して-ー。 仲間との年齢差・約16歳の、記憶と戀が求める未來は? ※過去に新人賞用で書いていたものです。以前カクヨムにアップしていました。 完結済み作品なので、毎日更新していけたらと思っています。 よろしくお願いします。
8 57