《カノジョの好度が上がってないのは明らかにおかしい》第44話 超天才的な作戦(?)

『私達も手伝うよ』

そう言ってくれた彼達に俺は謝の言葉を告げ、一番けそうな凜にライフルを、ティアと青川には索敵をお願いしたのち、再び行軍を開始した。

そうして、俺の六実奪還大作戦は滯りなく進行を見せていたーーのだが……

「敵は……敵はどこだぁ!!」

「お兄様〜、しは休みませんかぁ〜? もうくたくたですよ〜」

「かおるん、何か食べ持ってないの? お腹減ったよ〜。 あ、ついでに飲みもお願い」

とんだ混沌カオスが渦巻いていた。

ある月凜は銃を渡した途端、目のが変わり、戦いを求めるバーサーカーと化してしまった。

ある、ティアはまだ2分も歩いていないというのに疲れただの休もうだの喚きだした。

ある、青川靜香は朝食を摂って來てないらしく、お腹減った、乾いたとこれまた喚いている。

……はっきり言おう。こいつら邪魔。

しかし、ここで彼らに文句を言うのも助けてもらっているとしては筋違いというやつだろう。

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まぁ、もともと戦力になることは期待してないし……

短い溜息を彼達に悟られないよう小さく吐いたとき、事は起きた。

「前方約百メートルに敵影察知! 茂みの中に擬態している模様!」

「敵裝備確認! メインウェポンは小型のサブマシンガン! 攻撃擔當は即時勢にれ!」

直前まであれがしいだの休みたいだの言っていたティア、青川は急に真剣な目つきになったかと思うと、敵影やらメインウェポンなどと意味不明なことをびだした。

それに呼応するように、凜は一瞬でうつ伏せの勢になり銃を構えると、一切の迷いもなく引き金を引く。

直後、森の奧から斷末魔が響いた。

そして、凜、青川、ティアは振り向き俺を見ると、ドヤァとでも言いたげに顔を歪めた。

「……いや、えぇっと、……ご苦労……?」

俺が畏怖をし含んだ苦笑い混じりにそう返すと、一人は當たり前だと言うように、一人は誇らしげにを張って、一人はとても嬉しそうに微笑んだ。

        *    *    *

の、可憐でいて力強いびが響いたのち、ライフルの銃聲が大地を轟かす。

そうして何人かの男達を屠り続けること約30分。結構な距離を登って來たとは思うのだが、あの広場で聞いた、拠點とやらは未だ見つからずにいた。

方向を間違えたか……? という思考も一瞬よぎったが、敵がしっかり出てきているという事から拠點がこちら側にあるというのは確実と考えていいだろう。

時計を見れば、9時し前をそれは示している。もう始まってから一時間も経ってるのか、とし驚く。

闘いの中の高揚からだろうか。とてつもなく時間が過ぎるのが速い。

「かおるん、あれ!」

青川の澄んだ聲が俺の意識を現実に引き戻した。

「ん? ……あれか」

青川が指さす先にあったのは、一つの窟のり口だった。

「てっきりちょっとした建の中だと思ってたんだがな……まさか窟とは」

「とにかく、ってみましょう!」

元気よく先陣を切り窟にっていくティアに続き、俺たちもその暗い窟の中へ足を踏み込む。

った瞬間、冷たく、鋭い空気が俺を包んだ。

夏のじめじめとした外と違って、窟の中はひんやりとしている。

松明の一つでも設置してくれればいいものを、その中には一切の源もなく、まさに暗闇だった。

これじゃあし先も見えないな、俺はそう心の中で呟き、手探りでを進んでいく。

しかし。

「……お兄様、窟は……ここで終わりみたいです」

「……本當だ。行き止まりになっている」

唐突に聞こえたティアの聲に続き、凜が驚きの聲を上げる。

そして、俺自窟の行き止まりに突き當たった。

――これはどういうことだ?

てっきりこの奧に奴らの拠點があるものだと思っていたが、実際はそこまで長くないただの窟だった。

これは自然にできたものなのか? それとも、他の意図があって――

「――姿勢を低くしろっ!!!」

瞬間、俺はそうんでいた。

こんなところに偶然ぽつりと窟があるはずない。

加えて、今はサバイバルゲームの最中。

こんな狹い窟の中なら、そこにった敵を簡単に片づけられる――!

直後、銃弾の嵐が俺たちに降り注いだ。

窟のり口に幾つかの人影が出現し、俺たちへ連続的に発砲を始める。

――してやられた……!

俺はそう、負けを覚悟した。

……だが、銃弾が俺に直撃する直前、凜が俺たちの前に立ちふさがり、多くの銃弾をその一つにけた。

そのおかげで、俺は全くダメージをけていない。だけど……

「おい凜! もういい! お前も下がれ!」

「さがれるかっ! いいからっ! ここは私に任せて先にいけぇっ!」

「てめぇが塞いでるからいける訳ねぇだろっ!!」

弾をけ苦悶に顔を歪める凜に、俺はぶ。

その時、一つの案が俺の頭に過った。

「……ティア、お前、――俺にもなれるよな……?」

「馨さん、じゃなくて、お兄様っ、なんてひどいことを考えているんですかっ!? と言いたいところですが、狀況も狀況ですしね。いいですよ、把握しました」

ニコリと微笑むティアに頷き返すと、俺は凜の肩からスナイパーライフルを取り、両ポケットにっているを確かめる。

「凜、俺が避けろと言ったら橫に避けてくれ。――3……2……1……避けろっ!!」

瞬間、凜は橫に避け、俺は構えていたスナイパーライフルのトリガーを引いた。

銃弾を察知し、口に佇んでいた彼らは橫に回避。したがって、窟のり口が完全に空いた。

「ティア! 今だ!」

「わかってますよっ!」

直後、ティアは金髪のお嬢様という姿を、完全に変化させ、俺、朝倉馨に変えて見せた。

そして、その朝倉馨――の姿をしたティア――は窟を疾走し、そして、外へ飛び出す。

突然、飛び出してきたそれに、隠れていた男たちは慌てつつも照準を合わせる。

だが、瞬間的にそれは男の姿から可らしい金髪のの子へ姿を戻した。

剎那、ティアに続いて窟から飛び出した俺は、左右に構えたハンドガンでぽかんと呆けた表をした男たちをを瞬時に撃した。

「ふぅ……一丁上がり、っと」

「やりましたねっ!」

一つ短い溜息を吐き、俺はティアと微笑み合った。

ティアのどんな姿にでも変われるという利點を生かした超天才的な作戦。やっぱ俺すげぇ、と思いかけたが……

「こいつらの記憶全部消さないとまずいよな。凜たちも含めて……」

「そうですね、好きに姿を変えれるの子なんて……騒がれても困ります」

だよな、と返した俺は、さっきまでの微笑みを崩し、苦笑いを浮かべた。

……ま、ピンチは乗り切ったしいいでしょ。

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