《カノジョの好度が上がってないのは明らかにおかしい》エピローグ 前へと
「へぇ……そんなことがあったんだ」
ファミレスのテーブル席。そこでメロンソーダをちゅーっと吸いながら青川はそう言った。
「あぁ。こうやって、ことがうまく運んだのも青川、お前のアドバイスがあったからだと思う」
「そんなことはないよ。というか、私もこうして恩恵に授かれたんだから、結果オーライだよね」
俺の向かい。正面の椅子に座る彼は隣に座る男、倉敷勇人の肩に笑顔で寄りかかった。
「いや、オレも、消えてしまってたなんて実はないんすけど……とにかく、助けてくれてありがとうございます」
「別にお前を助けたわけじゃないから」
「それでも、謝してます。こうして生徒會長の橫に居られるのは、馨さんのおかげですから」
そのチャラ男で、生徒會長の彼氏というリア充で、この前まで存在自が消えていた彼。
隣の青川とを寄せ合う姿はとても幸せそうだ。
「……かおるん。本當にありがとう」
呟くように言った青川の言葉に、俺は冗談めかして返す。こんな時にしんみりしたって、何の得にもならない。
「何言ってんだ。お前の呪いを解いてしまったのはおまけみたいなもんだよ。というか、青川の呪いだけかけっぱなしにしてもらっておけばよかったな」
「え、なに? その下手なジョーク。……ごめん、笑うところが見つからなかったよ」
「お前を気遣ったの! しんみりしちゃわないようにしようとしたんだよ!」
こめかみを押さえて謝る青川。そんな彼に俺はいつものようにツッコミをれる。
「噓だよ、噓。……ちゃんと分かってるから。かおるんが自分より人のことを大事にしちゃうおバカさんだなんてこと」
「何言ってるんだか」
「ほんと、何言ってるんだろうね?」
そうやって二人で笑い合う。
なんだかそれだけのことなのにとても懐かしくじてしまった。
「ごめんね、遅くなっちゃった」
「すまない、支度に思いの外時間がかかってな」
そう言って登場したのは私服姿の小春と凜だ。
「おはよ。凜には珍しくおしゃれだな」
「珍しくとはなんだ、珍しくとは!  ……わ、私だって、その……著飾るぐらい、する」
しまった、毆られる! と、思ったのは束の間。彼はを捩らせて自分の服裝を恥じらいながら隠した。
なんだろう。おしゃれという俺の言葉を褒め言葉ととってくれたのだろうか。
「えっと、みんな揃ってるね。じゃあ、早速行こうか」
「ちょっと待ったぁ!」
皆に呼びかける小春。しかしそれに一人の聲が割り込んだ。
「私を置いていかないでくださいよ〜! ひどいじゃないですか、仲間はずれなんて」
そうして頰を膨らませる金髪の。
彼は俺の方を向いて微笑んだ。
「ね、そう思うでしょ? お兄ちゃん」
「ティア……?」
そう、そこにいたのは間違いなくティアだった。いつもの給仕服はまとっていないものの、彼はティアだと俺は直した。
「えぇ。馨さんの妹、ティアですよ?」
「……そうか。帰って、きたのか」
「はい! また、よろしくお願いします♪」
その彼に俺は頷く。
彼の隣に立っていた小春は、おしげにティアの頭をで、「おかえり、ティア」と囁いた。
「さて、じゃあ行こうか。遊園地へ!」
「うん、行こう、かおるん」
「行くっすよ!」
「行くとするか」
「行きましょう、お兄ちゃん」
そうして、俺たちはファミレスを飛び出した。思わずにやけてしまいそうな高揚をに、みんなで歩き出した。
……遊園地まではし距離がある。
だけども、このみんなとならその距離も大変ではないのだろう。
好度も、興味度も、數値でわかったりしない今だけど、だからこそわかるものがあると俺は思う。
手探りで、もがきながら、関係をつないでいって、しずつその人のことを知っていく。
なんでもない、その人と人との親が、どれだけ尊いものなのか。俺は……俺たちはきっと知っている。
手をばして、必死にばして、それでも屆かなくて、知りたくて、わからなくて、辛くて、たまに心から笑えたりして。
そんな、人との繋がりを俺は持っている。
あの誓いを立てたことでできた繋がり。
あの呪いを消したことでできた繋がり。
様々な繋がりがさらに繋がって、俺を作っているんだろうと思う。
「馨くん。置いていかれちゃうよ?」
一人立ち止まった俺に気づき、小春がこちらに駆け寄ってきた。
「あぁ。大丈夫だ。さぁ、いこう」
「うん。……行こう。一緒に。ずっと、一緒に」
「あぁ。ずっと、一緒に」
そして、俺たちは歩き始めた。
小さな歩幅で、しずつだけど、しっかりと前へ。前へと。
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