《引きこもり姫の?そんなことより読書させてください!~》閑話 雙子様

僕の姉は一言で言うならば特徴のありすぎるだ。

金髪でナチュラルメイクなのにそれが一層人な顔を引き立たせて。後は長がとても低い。兄弟姉妹の中で一番低い。それが地雷だそうで踏んだ直後に発する質の悪いやつだ。

「……っ。ふぐ、ぬぅぅ」

「なにしてんの月海。自販売機の前でぴょんぴょん跳ねて」

「そこまで実況してんなら分かるだろうが! 今日こそ自力でアイスティーを買うんじゃぁぁ!」

アイスティーは一番上。月海は背びしてやっと真ん中ギリギリだから無理なのに。

「無理しすぎると腕つるよ。僕が取ってあげるから」

「ぶっ飛ばすぞ片割れ風が!」

いやそりゃ片割れですが。早く戻らないと凜音を待たせているわけだし。

ポチッ。

「「あ」」

ジャンプして屆いた先にあったのはアセロラジュース。月海が一番嫌いな飲みだ。

「「……」」

「飲め」

「斷る」

そのいらないものは弟に押し付ける癖どうにかしようよ。

「凜音なら飲んでくれるんじゃないか?」

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「いや。あいつには何十回と渡したせいでもう飲んでくれなくなった」

金の無駄遣い。

「風柳! お前に服作ってやるから飲め!」

「だからやだって。服はもうタンスに収まりきらないくらいってるからいらない」

ちなみにその店で買ったやつは僅か五著くらいだ。後は兄ちゃん達のお下がり。

流石にこれ以上無駄遣いをしたくなかったのか――悔しがりながら――僕に押させた。最初からそうしてれば良いのに。

「やっぱりバレンタインも近づいてる訳だしダークブラウンにピンクのハート型刺繍が良いと思うの。勿論脇腹辺りに大きく一箇所だけね。後はワンピースの丈なんだけど」

月海の部屋は型紙やら布やらでもうどこがベッドだかも分からない狀態だ。まあいつものことだけど。ただ不思議なことが一つ。何で僕に服の質問すんの? 麗姉とかいるじゃん。

「皆忙しいの。それに風柳だってファッションに疎くは無いでしょ? 食事の次くらいには」

「まあね」

「ねえお願いアドバイスして。今度何か奢るから」

「うーん。ダークブラウンでも良いけどそうするとピンクがし地味になるんじゃない? どちらかと言うと白生地に赤に近いピンクとか」

「それも考えたんだけどそうすると凜音が更に細くなることが判明した」

あ、凜音に著させるのね。納得。ん? でも

「白って確か著膨れするんだよね。黒だと更に痩せて見えない?」

「私もそう思ったよ。そしたら顔の白さ増しちゃってさぁ。悪い方向に」

ふむふむ。要するに月海はバレンタインで凜音が病弱に見えないようにしようと。

「あ、ついでにエロさ増してね」

「……」

言うと思った自分を毆りたい。ていうかワンピースって言ってる時點でもうアウトだったね。

「チョコ塗れになったを神宮寺さんが隅々まで舐めとって凜音の神は熱くそしてエロさ全開の火照りのせいで神宮寺さんの理は崩壊。そしてリア充が発すれば良い」

線してる線してる」

前に一度彼氏を作る気は無いのかと聞いたら今はまだいらないと言っていた。だけどやっぱりラブラブ――あの二人にはあまりラブラブ要素無いけど――は見てて不快に思うらしく帰ってきた後は桃李兄ちゃんに八つ當たりしてる。

「ねえ風柳」

「なに?」

「お前の長を寄越せ」

「急」

これも月海と僕の日常茶飯事。もし會話がすぐに途切れて話題が無くなってもこうやって自分の願を急に話し出す。

「何で子柴家の長が低いんだ。男はこーんなに大きくなったのに」

「まあでもの子がバスケ選手みたいに百八十越えとかも怖いよ」

「それな」

これにて話題終了。

「そういえば明日は唐揚げ定食とうどんとチキンカレーらしいよ」

「うっわ凜音が嫌がりそ。凜音の分の食券買っといた?」

「うん。一番重い定食」

「鬼畜〜」

そんな月海もどこか楽しそうだ。やっぱり二年も凜音と會話をしてこなかったことが大分ショックだったんだろう。こう見えて結構繊細だからな。

「……よし」

「ん?」

「とにかくこれをさっさとあの子に著させることを目標にしよう。そのためには太らせないと」

路線変更? 凜音を太らせて何でも著れるようにしようというわけか。

「きっと凜音のクローゼットなんて小ってないんだしアクセサリーも作っちゃお。よーし頑張るぞー」

頑張れ。僕の姉さん。

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