「．．．遅い」

玄関のドアを開けて階下の景をボーと眺めながら呟く。

現在の時刻は【am.6:30】。冬李の腕時計が狂っていない限り、時刻は合っている筈だ。

ドアにもたれ掛かりしゃがみ込む。元々寒がりだった冬李は、夏の猛暑でも快適に過ごせる様に作られた制服がしばかり寒かった。

薄い生地の白のワイシャツに薄茶の校章がったニットベスト、ズボンも同じく生地が薄く、緑のチェック柄だ。

指定の赤いネクタイは付けていない。抑制のチョーカーの上からだと、流石に首元が窮屈だったからだ。

「．．．寒い」

ポケットから攜帯を取り出してリズム良く畫面をタップする。「昨日の森塚は自分の事をバカにしていただけなんだ」重いため息と共にそんな考えがよぎった。

「7時．．．。まだ來ない」

ぷくぅと頬を膨らませて、忙しく通るサラリーマンや學生を目で追っていく。

「．．．眠い」

＊＊＊＊＊

ユサユサとが揺れる。

よく考えると、宙に浮いている気もする。

優しい揺れが心地いい。

冷たかったも今は暖かい。

『．．．李、冬李』

「ん、ぇ？もりつか？」

気が付くと、薄い壁、暗い室のベッドの上にゴロンと寢転がっていた。

『もう寒くないか？．．．俺が來た時、外で寢てるしは冷たいしで．．．心配した』

「．．．アンタが遅いのが悪い」

『ごめん。．．．今日は學校行くのやめよう。俺もお前が起き上がらない様に見張ってる』

優しく頭をでられ、冬李のらかい貓っが嬉しそうに揺れた。

「．．．今何時なの？」

『ん？大7時半かな』

「．．．行く」

『え？』

森塚に背を向けたまま、小さく呟いた。

「學校。．．．間に合うんでしょ？」