《~大神殿で突然の婚約?!~オベリスクの元で真実のを誓います。》過去を揺らしながら、生きて行こう

〝貴たちが、ここからの世界を創るんだよ。ねえ、ティティインカ〟

「兄さん……」悪諱に呑み込まれ、炎の蒼海に溺れるようにして、クフの容の炎が灼熱の中でゆっくりと揺らめいたが、また炎に戻ろうとする。(絶だ)ティティは眼を瞑った。絶はティティも良く知っている。でも、絶の裏には、希もある。クフに教えてやりたい……! ティティは乾くに唾を流し込んだ。

「――……あげる!」

さらさらと必死で流れる記憶を止めた。

「もう一回、わたしが世界に産んであげる! あんたは嫌だって言うだろうけど、でも、もう一度やり直せるように、わたしがあなたを世界に産む。どう? いいでしょ?」

クフの焔は初めて眼を見開き、涙を溢れさせ、笑顔になったように見えた。

炎がクフの長まで舞い上がった。マアトの業火の世界の崩壊の音。イザークが炎を掻き分けた。

「ちょっと、待て! 何か言ってから消えろ!」

――ありがとう。待ってて。また絶対、逢いに行く。あの世界、嫌いじゃなかった。お人好しだよ。ティティ。

火影が揺れて、《聲》が遠ざかった。サアラ神も、ネフティス神も、もうすぐ世界のひとつになる。

「結局、消えたじゃねえか! もう知らん! やっぱり悪魔の」

「違う」項垂れたイザークの前に、ティティはしゃがみ込んで、いつかのように頬にれた。

「救ったんだよ。だって、あのクフが泣き笑顔になったのだもの。わたしには見えたの。最期、笑ってた。クフ、笑ってたよ……」

「笑って……あいついつも笑ってんだろ」

「信じて。――クフ、泣いて笑ってたよ。ありがとうって。世界、嫌いじゃないって」

「……そっか」

イザークは男泣きの顔を上げた。

「ね?」とティティが手を握りしめた剎那。天空から、が……。

「太と月が還って行く……。いっぱいの世界に戻ろうとしているんだ」

二人で手を繋ぎ、二つの天がゆっくりと元の世界に向かう景を見屆けた。

は歓喜でいっぱいだ。の中、マアトに裁かれた諱たちが、再び現世へ戻ろうと、天の河を築いていた。悪諱も、諱も、みな、生きたいと足掻いただけ。

ティティは壁畫を思い出した。數億年前は太と月があった。ティティとイザークのように、遠い時代。どこかの人たちが頑張って、神から逃れて、を伝えようとしたのかも知れない。

――どんな世界でも、する人となら楽しいじゃない? ティティインカ――

ネフトの最後のメッセージを、悪の諱たちも訊いていてくれるといい。

大切な人の名を呼んで、一片の過去を揺らしながら生きて行こう。

過去は振り返らない。何故なら、これは始まり。振り返る過去はないのだから。かくして業火は飛び散り、後にはだけが殘った。現世へ戻る謚の橋を、一歩ずつ歩いてゆく。神さまはもういないから、自らの足で、一歩ずつだ。

〝還るべき、場所へゆこう。ティティインカ、イザーク。最後の私の力。汝のイザークへのが最大限になった時、汝にのみ聞こえる諱を託す。神はそうそう渉には答えぬ。優しいものではない――〟

耀の中、マアトの聲が聞こえている。

――汝らの、これから始まる本當の世界。楽しみにしていよう――……。

    人が読んでいる<~大神殿で突然の婚約?!~オベリスクの元で真実の愛を誓います。>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください