《Waving Life ~波瀾萬丈の日常~》2話 桜花五分咲き
桜花五分咲き
1
登校2日目。
昨日より暖かく、一層過ごしやすい環境になったように思う。
俺は昨日の帰り道に約束した場所へと向かっていた。
登校途中にある小さなコンビニだ。
このコンビニは多くの人が利用するためいつも多くの車が停めてあるのだが、今日は比較的ない。
予定の10分前に著いてしまった。
暇なので、コンビニにることにした。
コンビニの中は食品類を冷やしているためか、外より涼しい。
たくさんの商品を一つずつ眺めているうちに、約束を言い出した張本人がやって來るだろう。
アイスコーナーに目を移すと、一瞬で目を奪われた。
そこには、モデルのような容姿の綺麗なが立っていた。
よく見ると彼はうちの制服を著ていた。
その彼が俺の視線に気づいたのか、振り返ってこちらを見た。
見覚えのある顔だった。
それもそのはず、彼を見たのはこれが初めてではないからだ。
今年の春休み。
家で特にすることもなく、ぼーっとテレビを眺めていた。
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リビングにあるその大きなテレビに映し出されたのは、最近始まった毎週土曜日に放送されるドラマ。
初回から見た訳ではなく、既に3話だったので當然容などよく知らない訳だが、なんとなくそれを見ることにした。
俺は僅か數分で、このドラマに釘付けにされた。
何の気なしで見たにも関わらず、見ってしまったのには、このドラマに出演する優があまりにも良かったため。
整った顔立ち、キリッとした目。
髪は黒髪ロングで、どことなく蘭華の髪型に似ていた。
もちろん良いのは、容姿だけではない。
注目すべきはその演技力だった。
このドラマは、殺人事件が起きてその犯人を捕まえるいわゆるサスペンス。
その優が演じていたのは、犯人側なのだが、その完璧な演技力で上手くを表現し、セリフのキレも素晴らしかった。
そのため、俺が気付いた頃にはドラマが終わるほど見ってしまったのだ。
エンディングの時にあるキャスト紹介。
そこでその優の名を知った。
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そしてすぐさま、その名前を調べてどのような人なのかを確認した。
すると俺は驚いた。彼がまだ高校生であることや、ここまでの出演履歴では無い。
彼が通っている高校が、俺の學する高校だったことだ。
その事が、驚きと同時に喜びを生んだ。
因みに、その日は興のあまり寢れなかった……。
そして昨日の學式の場の際、出迎える2年生のまとまりの中に、見間違うことのない、その彼が輝きを放っていた。
その人が今、目の前のアイスコーナーに立っているのだ。
「私に何か用か?用がないなら邪魔しないでほしいのだが」
彼は、演技なしのし低めの冷たい聲で俺に言った。
俺はその冷たさにかなりグサッときたが、驚くことは無かった。
と、言うのも実は彼、狹間 玲はざま みれいは、高校ではあるあだ名で呼ばれている。
聲が冷たく、言葉が剣つるぎのようであることから、剣つるぎの王と呼ばれているのだ。
そのため自分から話しかける生徒はおらず、さらに先生からも敬遠されていると聞いたことがある。
この話は、昨日の學式終わってすぐに周りから聞こえてきた話だった。
つまり昨日初めて知ったのだ。
「す、すいません。別に何もないです」
彼は1つ上の先輩なのだが、同級生や先生からも敬語を使われているらしい。
余程怖いのだろう。
演技を見ている限り、そんなふうにじなかったのになぁ。
彼は呆れた様子でアイスコーナーを去って口へと向かった。
彼の行き先をそのままをボーッと眺めていると、り口付近で、誰かと話し始めた。
よく見ると蘭華だ。
「あ、久しぶり!元気?」
え?こいつ……。
學校1怖いとも言われている人に、こんな軽く話していいのか?
しかしそんな軽い話方をしたにも関わらず、先輩は表1つ変えようとしなかった。
剣の王たる所以を見たかったんだけど……。ってさっき俺、剣で斬られたんだったわ。
「あぁ、久しぶりだな。お前こそ元気にしてたか?」
え、顔馴染みだったのかよ!
俺は驚きながらも、一旦落ち著いて再び向を見た。
「私は別に変わりないよ!」
「まぁ確かに、変わりはなさそうだけど……。そうだ私は……」
長々と話しは続き、今ようやく終わったようだ。
先輩は一言挨拶を蘭華に言って、コンビニを去った。
俺は話の間、彼たちとの間に何があるのか想像してたのだが……。
例えば、彼たちはカップル説とか、実は蘭華も怖い説とか、逆に先輩は優しい説とかその他たくさん……。
そして今、ふと我に返ってけなっているところだった。
はぁ、とため息をついて話が終わった蘭華の方に向かう。
彼が俺を認識したところで、聲をかけた。
「おはよう!蘭華」
「うん、おはよ!」
え、終わり?
剣の王との方が仲がいいってことなのか……。
「行こっか、學校!」
そんな気を落としている俺に構うことなく、テンションの高い蘭華はそう言った。
「今日は始まったばかりなのになぁ……」
始まったばかりの時に、こんなことがあったようでは、先が思いやられてしまう。
俺は、小さく聲をらした後大きなため息をついた。
「はぁ……」
「剣也!そんな大きなため息つくと幸せ逃げちゃうよ!」
「うるせぇ〜、ほっとけ」
2
今日1日はなんだったんだろう?はぁ……。
あの出來事の起こったあと、全然テンションが上がらず1度も蘭華と言葉をわすことなく登校した。
當然彼はそんな俺を気にも留めずに鼻歌を歌いながら橫を歩いていた。
俺は、その1つぐらいはいい事もあるだろうと、その小さな希を求めて學校に行った。
が……。災難はそれだけではなかった。
筆箱は忘れるし、弁當も忘れる、廊下で転けそうになるなど、1日學校生活を送ったが、起こったのはそんな災難だけだった。
そして、この日最後の授業の最中にあることを思いついた。
俺はその災難続きの元兇、蘭華と剣の王との関係をどうにかすれば、流れも変わるのではないか、と。
俺はこれで悪運続きも終わるという喜びのあまり、ドンっと機を叩いた。
お気づきだろうが、今は授業真っ最中。
黒板に注目していた生徒達は、一斉にその音のした方に注目を集める。
……、ほんとうに災難だらけだ……。
授業が終わった。
俺は気まずい雰囲気を作ってしまった1組の教室を素早く抜け出し玄関に辿り著いた。
俺は、一緒に下校する蘭華を玄関前で待った。
その間、橫を通り過ぎる1組の生徒に痛い視線を向けられた。
何のために急いで玄関きたのやら……。
しばらく待つと、こっちの気分とは真反対のテンションの蘭華が現れた。
「ごめんごめん。遅くなっちゃった」
「ごめんじゃ済まないぞ……」
「え、駄目なの?というか、さっきの授業の途中でなんで……づぐぅえを……」
俺は、その先を言わせまいと手で蘭華の口を無理矢理抑えた。
言おうものなら、あの恥ずかしい記憶がまた戻ってくるじゃないか……。
蘭華が靜かになったところで、手を除けた。
「っ!ちょっ、いきなり何?」
「その話はもう忘れろ!」
「なんで?面白かったのに。退屈な授業を面白くしようとしたんでしょ?」
「そ、そんな訳あるか〜!」
俺がそんな格じゃないしことくらい蘭華も知ってるはずなのに……。
第一、そんなことで面白い雰囲気を作れるなら、友達作れなくて困ってる人が、みんな授業中に機をバンバン叩くぞ……。
そんなうるさい授業はごめんだ。
「え、違うの?じゃあなんで?」
「うるさ〜い!これ以上話したら、ばら撒くぞ!」
「え、何の?なんてなかったような気がするけど。でももし、剣也がばら撒こうと私、剣也のあんなことやこんなこと、全部知ってるんだよ?」
「ちょっ、わ、分かった!もぅ〜、勘弁してくれぇ〜〜〜!」
俺は、昨日と同じように校門へと1人走り出した。
その後ろを「待ってー!」とびながら走る蘭華がついてきた。
俺たちはこうして高校2日目を……。
って、ちょっと待ったぁ!
大事なこと忘れてる!
実は、授業中にある作戦を考えついていた。
どんな作戦かというと彼を遊びにいそこで、さらに彼と剣の王との関係を聞くという作戦。
なぜ遊びにうかと言うと春休みに、暇な時に遊びに出かけよう、と約束していたからだ。
せっかくなら、その約束も果たそう。そう思ったのである。
というわけで、ストーップ!
俺は全力で走っていたのに急ブレーキをかけて校門の前で止まった。
後ろを追いかけてきた蘭華が俺の背中にぶつかった。
「ったぁ〜。急に止まってどうしたの?」
「ちょっと思い出したことがあってね。んー、長くなりそうだし、喫茶店行くか」
「うん!行こっ!」
學校の門をくぐって左に曲がると大きな下り坂がある。
そこを下ってすぐの所に、壁の丸太が印象的な喫茶店がある。
俺たちはそこに向かって、ゆっくりと歩き出した。
喫茶店の中はとてもいい雰囲気だった。というのも靜かすぎない雰囲気だったからだ。
俺たち以外にも高校の生徒はかなりいた。
どうもここは、いい溜まり場らしい。
俺たちは、木で作られた床を歩いて、外の景が綺麗に見える大きな窓がある席に座った。
そして早速、俺はコーヒーを2つ注文した。
コーヒーを待っている間、とくに話すことも思いつかないので、もう本題にることにした。
「あのさ、今週の日曜日って空いてる?」
「うん」
「遊びに行かない?2人で」
「あー、春休みの約束覚えてたんだね!行こう、行こう!」
「じゃあ決まり!」
こうしてあっさり遊びの予定ができた。
「ところで……」
蘭華がそう口にした。
「何?」
「今日の授業中……」
「だぁ〜!馬鹿野郎!」
「失禮します。コーヒーお持ちしました。」
全く懲りることなく、先程の話題を口に出そうとしたところで、注文したコーヒーが來た。
まさにコーヒーのように、ほんと苦い思い出が出來てしまった……。
「もう、その話はいいんだよ!」
「え〜、だって気になるんだもん」
「んなこと、どうでもいいんだよ!それよりもどこ行く?」
俺は再び本題に戻し、話を続けた。
「んー、遊園地?」
「何か、デートみたいじゃない?」
遊園地と言えば、家族連れかカップルのデートしか思い浮かばない。
「いやなの?」
そう彼は、ししょんぼりとした顔で俺に問う。
嫌ではない。馴染で、長い付き合いだ。
ただやはりカップルのように見られるのは、何か抵抗があるのだ。
「嫌じゃないよ」
そう、言葉を返すと蘭華の表は明るさを取り戻した。
そして目を輝かせて、
「んじゃ、今週末で決定〜!っと」
「分かった」
「これで、遊びに行く話はオッケーだね。じゃあ次は……、あ、そうそう」
「うん。次に言おうとしてること分かるから、止めようか」
「今日のじゅ……」
「や、やめろ〜!」
この後も俺たちは、話し続けた。
ただ、その想は楽しかったよりも、あの話題が再び出てこないようにするのが大変だった、ということの方が強かった。
そんなこんなで、長い1日が終わった。
朝からろくなことがなかった。
だけどこうして、楽しく話ができたのだからそれで良かったと思う。
それと同時に、もうあのことは忘れてくれと思う、俺であった。
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