《Waving Life ~波瀾萬丈の日常~》16話 形勢逆転
形勢逆転
1
いつぶりだろうか。
蘭華の家に泊まるのは。
中學2年の頃までは、よく泊まっていた。
あの事故が起こる前まで行っていたのに、いつしかこの家に來なくなっていた。
「じゃあ、また後で」
「早く來てね、剣也。待ってるから」
「あぁ」
そう言葉をわし家へと再び歩き始めた。
あの事故がなければもっと仲良くなっていたかもしれない。
もっと楽しめたかもしれない。
別に今の生活に不満はじていない。
だけど…。
「私、剣也の事好きだから」
あの時の言葉をもっと早く聞けたら…。
タラレバで話してても後悔しか出てこない。
俺はこのことをスッキリ忘れるために一言口に出す。
「よーし、頑張ろう!」
壊滅的な數學を打破するために…。
けない。笑。
家に帰って素早く準備して香に泊まりに行くことを伝える。
「じゃあ、行ってくる」
「どうするつもりなのなぁ…」
聲が小さくてよく聞こえない。
「どうした?」
「いや、何も無いよ。行ってらっしゃい!」
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「あぁ」
俺は家の扉を開ける。
「お兄ちゃん」
俺は服を摑まれ呼び止められた。
「お兄ちゃんは蘭華さんと絵里さん、どっちを選ぶの?」
2
「お兄ちゃんは蘭華さんと絵里さん、どっちを選ぶの?」
予想外だった。
香が知っていたことよりも、その事を直接伝えてきたことを。
「2人から別々に聞いたよ。告白されたんでしょ?」
確かに告白された。
俺のことが好きであると。
でも未だに答えは口にしていない。
心の中では決まっていたはずの思いが揺らぎ始めた。
「別に告白されて答えを出してないことに文句はないよ。だけどね、そのままにしておくのは良くないと思うよ?」
分かってる。
答えを出さないと解決しない。
數學と一緒だ。
だけどその答えは數學のように1つとは限らない。
だから、俺は未だに頭を悩ませているのだ。
「それは俺の問題だ。何とかする」
結果を出せないことに焦りをじていたからか、し気が立っていた。
「うん。頑張って」
妹はし、しゅんとしてしまった。
俺はそれを追い払うように聲を出す。
「行ってきます!」
俺の明るい表に安心したのか、妹も表を取り戻した。
「行ってらっしゃい」
さっきの出來事で気持ちが揺らいでしまった。
俺は1つの結論を固めようとしていた。
だけど、答えは1つではないしもうし慎重に考えてもいいだろう。
そう心で決めた。
「お邪魔しまーす!」
「剣也!って!」
中學2年の時ぶりにこの家の香りをじた。
あの時から変わらない木材の香り。
帰ってきたという実が湧いていた。
時刻は6時を周っていた。
次第に日が長くなっているので、外はそこまで暗くない。
「とりあえず、部屋に荷置いて夕食ね!」
「あぁ」
俺達は階段を登って2階にある蘭華の部屋に向かった。
ん?蘭華の部屋?
まさか、2人で寢るのか?
絵里の時だけでもうお腹いっぱいなんだけど…。
食はあるけど。
3
「あら、いらっしゃい剣也君」
「ご無沙汰してます、お母さん。それにお父さん」
「暫く見ないうちに逞たくましくなったな、剣也君」
昔から來ているのもあって、蘭華の両親とは面識がある。
2人とも落ち著いて優しい格の人だ。
その點は蘭華も似ている。
「夕食にして、お母さん」
「はいはい」
俺達は席に著いた。
「怪我はもう大丈夫なのか?剣也君」
お父さんが口にカレーを頬張りながら話す。
「えぇ、もうすっかり」
あれから約1年。もう怪我の事を忘れてしまいそうなくらい良くなっていた。
今では他の生徒と変わりなく走ることも出來る。
「お父さん、口に頬張りながら話さないで!」
「あぁ」
「お前も口にご飯付いてるぞ」
「あら、ごめんなさい」
こんな仲のいい夫婦になれたらな。
そう思えた。
食事が終わって蘭華の部屋に移った。
「さぁ勉強會やるよ、剣也!」
「よろしくお願いします」
「メス」
「おい。これからオペを開始します、メス。みたいな流れでやるな」
「1回やってみたかったんだよねぇ」
こいつが手すれば患者は死んでしまう。
天然ぶりが思いっきり影響するだろう。
「そもそも、解の公式ってなんだ?」
「えーっとね、2次方程式って分かる?」
分かるわけが無い。
なぜなら1次方程式すらよく分からないからだ。
そもそも方程式ってなんだ?
「はぁ、そこからね。みっちりやるから覚悟してね。それでは開始します」
「お願いします」
「メ…、いてっ!何するの、剣也」
2回もくだらないことに付き合ってなどいられない。
その前にチョップを頭にかました。
俺達はいつしか勉強に夢中になっていた、
時間を忘れるくらい集中していた俺たち。
時間はいつの間にか日をまたいで1時になっていた。
各自で風呂を済ませ、明日のためにもう寢ることにした。
「剣也、電気消していい?」
「いいぞ」
そのまま、靜かに夜が過ぎていくと思っていた。
だけどそうは行かないのが、現実。
「寢てないよね、剣也」
「そんな早く寢れるかよ」
電気を消してからわずか10秒後の出來事。
寢られるのはギャグ漫畫の世界だよ。
「剣也は、私が好きって言った時どう思った?」
「と、唐突だな」
いきなり過ぎて揺してしまった。
あの日。
學校からの帰り道のいつも別れる差點。
何気なく通っていたその場所は、忘れられない場所となった。
『私、剣也の事好きだから』
今も耳に殘っている。
蘭華の優しい聲が。
正直に言うとあの時、キスもされた事で激しく揺してあまり鮮明には覚えていなかった。
なんてとても言えない…。
1つ覚えているとしたら、心の中でドキッとした事だ。
「お前が本気なんだなって思ったよ」
「そ、それだけ?」
「それだけ」
「そう。ねぇ剣也こっち向いて」
俺は顔を彼の方から背けていた。
2人並べられたベットで向かい合って寢るのは神が持たないからだ。
俺は呼びかけに答えるように、顔を向ける。
彼を暗いながらも近くで見ると、いつもより可く見えた。と言うか普通に可い1人のの子だと思う。
あまりに近くて息の音が聞こえる。
それに恥ずかしさをじて俺は視線を逸らす。
「私の顔、見てよ」
「は、恥ずかしいんだよ」
「剣也、可い。笑」
「お、お前。冗談でもそんな事言うなよ。恥ずかしいんだって」
「ねぇ、剣也」
「ん?」
「真剣に聞いて」
暗闇の中でもハッキリと分かった。
彼が真剣に話そうとしていることが。
「私は剣也の優しいところとか、カッコいいところとか々知ってる」
「あぁ」
「いついかなる時も剣也は私のこと考えていてくれた」
「あぁ」
その時は突然だった。
「だからこれは確認ね」
2度目の。
あの日じた思いが一気に思い出された。
彼のこと。
思えば、ずっと傍にいてくれた。
「おやすみ」
彼は布団の中にを潛める。
俺が折れそうな時。
苦しかった時。
悲しかった時。
そんな時、彼は俺を助けてくれた。
楽しかった時。
嬉しかった時。
そんな時、彼も一緒に楽しんでいた。
その彼にある気持ち。
それは謝。
それと1つの大きな思い。
「俺は、蘭華のことが好きだ」
ちゃんと伝えられた。
はずだった…。のに。
『くかーっ。』
寢てる。
10秒以に寢られるのはギャグ漫畫だけだったんじゃなかったのかよ!
俺はまた別の機會に伝えればいいと割り切り、眠りにつくことにした。
「好きだよ。剣也」
ふっと寢言が聞こえた気がした。
補習に、普段勉強を重ねて挑んだ中間考査。
數學のテストの結果は、格段に上がり先生に褒められるほどだった。
だが、お気づきだろうか?
數學をどれだけ上げようと、他の教科が下がれば意味が無いことを。
數學のみ集中的に勉強していたため、ほかの教科の點數が下がり、総合152位。
「もぉ〜!」
そうびながら崩れた。
テストの個表を貰いに行った教卓の前で。
クラスメイトからは白い目で見られた。
そんなことも気にせず、さらに一言。
「どうしてこうなるんだよ〜!」
その聲は外の風に乗せて遠くに消えていった。
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