《Waving Life ~波瀾萬丈の日常~》22話 楽園到來

楽園到來

1

8月1日。夏休み。

あと1ヶ月と思うと長いがもう4週間と考えると短い。

夏特有の照りつける日を焼いていく。

その日焼けを嫌う俺は日焼け止めをこれでもかというくらいに塗りたくる。

今日から5泊6日の沖縄旅行が始まるわけだが、俺の一番心配なところなのだ。

エメラルドグリーン。

そこは1度は行ってみたいと思っていた。

でも亜熱帯獨特の暑さがそれを妨げている。

そんなことを沖縄に向かう飛行機の中でぼーっと考えていた俺は隣に座っている半彌の聲が屆いていなかった。

「剣也?おーい」

「いや、ちょっと考え事さ」

「彼のこと?」

「ちょっ、おまっ、お前!」

考えるだけでも顔が赤くなる。

思わず言葉を詰まらせてしまった。

「図星?まぁそりゃそうだよなぁ。好きな人と5泊6日の沖縄旅行。妄想してもおかしくないよな?」

「お前じゃないからそんな卑猥なこと考えてねぇよ」

「し、失禮な!俺はこれでも健全な男子高校生なんだぞ!」

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健全?相談しようと喫茶店に行こうとした時にストーカーしていた奴が言えることなのか?

まぁこいつの言ってることはスルーして…。

って、ちょっ!まさか…。

「な、なぁ剣也。ちょっと気分が悪いんだけど…」

「おい、今の今まで大丈夫だっただろ?」

「いや、急に…。おぇぇ〜!」

「だぁ、お前!き、汚ぇ!早くトイレ行けよ、トイレ!」

そう言うと半彌は口を抑えながらトイレに走っていった。

全く…。

嘔吐が俺の荷にかからなかっただけましか…。

そう思いながら嘔吐の処理をしようと席を立ち上がろうとした時、後ろの席にいた蘭華が聲をかけてきた。

「剣也!半彌君走っていったけどどうした…の?って…。そういうこと、ね」

「まぁお察しの通りです」

「私も処理手伝うよ」

「悪いな…」

蘭華は席を立ってこちら側まで來た。

そして、席にセットされていたビニール袋を手渡しして床に著いた嘔吐を処理する。

「はぁ…。初っ端からこれだと先が思いやられるな…」

俺は獨り言のように呟く。

空港を出てからわずか1時間、到著まではまだまだかかる。

こんな狀態のあいつとは隣に座っていたくない…。

「別にしようと思ってした訳じゃないし、許してあげて」

しようと思ってしたなら、マジでアイツを飛行機から落とすぞ。

「はぁ〜。面倒くさいなぁ〜、あっ!」

ポケットにっていたポケットティッシュがポロリと落ちた。

俺が拾おうとした時に蘭華が取ろうとしたのと同時になり、手が重なってしまった。

「ご、こめん!拾おうと思って…」

蘭華が気の毒そうに謝ってくる。

「いやいや、別に…」

普通ならばスーパーラッキー展開な訳だが、嘔吐の上じゃ臺無しだ…。

「ところでお2人さんは何イチャイチャしているのでしょうか?」

前の席に座っていた絵里が席の上から覗き込んでくる。

「別に、イチャイチャなんて…」

俺は否定しようと言葉を発した。

だけど言い終わる前にもう1人の人が現れてそれを邪魔した。

蘭華の隣に座っていて、トイレから帰ってきた狹間先輩だ。

「仲良さそうだな」

「先輩まで…。話をややこしくしないで下さい!」

『後でゆっくり聞かせて貰おうか…』

先輩と絵里の聲が重なって怖さは倍増だ。

俺は観念して、言葉を返す。

「分かりました。それはまた後で話しますよ」

そう言うと絵里は元の向きに戻り、先輩も自分の席へと戻っていった。

「さぁ、早く処理してしまうか…」

「そうだね!」

俺達は嘔吐を素早く処理して、それぞれ席に戻った。

2

嘔吐の処理が終わって席に戻ってすぐに、絵里と先輩に説明させられて、俺はぐったりしていた。

「はぁ〜」

ため息を著いていると、落ち著きを取り戻した半彌が戻ってきた。

「ふぅ〜」

「ふぅ〜、じゃねえよ。それはこっちの臺詞だ!」

「ごめんごめん」

こいつの謝っている姿を見ると全く気持ちがってないのがよく分かる。

「ところでさ、トイレに行ったら可い子いたんだけど!」

「興味ない」

「いや、すっぱり切るなよ!お前も高校生なら多にも興味あるだろ?」

健全な男子高校生の半彌君が言ってもいい臺詞なのでしょうか。

と心の中でツッコミをれておく。

「あまり無い。それよりお前にはもっと興味が無い」

いこと言うなよ〜、とりあえず聞くだけ聞けよ!」

聞くだけね…。

そう言う奴は大聞くだけで済ましてくれない。

それを分かっていながらも聞くことにした。

聞かないとうるさいだろうし…。

「高校生っぽいの人だったんだけど、それがスゲー可くてさ!」

「はいはい、それで?」

「ピンクっぽい髪ので、すごく大人しそうだった。俺のタイプなんだよ!」

お前のタイプなのはいいが、お前の嫁さんになる人のことを考えると気の毒に思えてくる。

大人しい子にとってこいつは荷が重すぎる。

「ふーん」

「俺さ、その人のこと知りたくてさ、名前聞いてみたんだよ!」

お前、初対面の人にあってすぐに名前聞くとかどうかしてるぞ…。

「そしたら名前がめっちゃ綺麗でさ!桃山ももやま 実咲みさきっていう名前だってさ!聞いてすぐにメール換までしたよ!」

會ってすぐに名前を聞かれ、更にメアド換するとかある意味尊敬するわ〜(軽蔑)。

桃山さん。友達の自分が代わりに謝らせていただきます。すいません。

「それでな、その桃山さんが…」

そんな、初めて會った桃山さんのことを嬉しいそうに語る半彌を華麗にスルーしながら、俺は頭の中で々考えていた。

蘭華の件は実際のところ、意見がまとまっていない。

絵里からは一時休戦を申し出られたので暫くは進展することは無いかもしれない。

だけど何もしない訳にもいかないのだ。

とりあえず飛行機の移時間。半彌の隣で無駄話聞かされながらも、ある人に相談を持ちかけることにした。

後ろの席にいる、狹間先輩だ。

ただ、橫に蘭華がいるのでメールでしなくてはならない。

攜帯の電源を付けてメールを開こうとした。が…。

そう言えば攜帯は使ってはいけないという決まりがあったのだ。

俺は諦めて攜帯の電源切ってポケットにしまった。

そうこうしている間に時間は過ぎ去り、気づけば到著まで1時間になっていた。

まぁたまには半彌の話、まともに聞いてやるか…。

こうして俺は、到著までの間の1時間、半彌によるの子の話で時間を潰したのであった。

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