《Waving Life ~波瀾萬丈の日常~》28話 咄咄怪事
咄咄怪事
1
5日目。
明日になればこの沖縄から去り、いつもの地に帰ることになる。
し寂しい気もするが、故郷もおしくじられるようになった。
2日前は、絵里と水族館デート。
連続でイベントが起きたからか、昨日、そして今日も特にイベントは起きず、各自で思い思いの時間を過ごした。
このまま終わるのかな…、と思っていた。
だが、簡単に終わらなかった。
夜8時。
日は完全に沈み、夜が訪れた。
ここでの夜は今日が最後と思うと、ここから見られる景を目に焼き付けておきたくなった。
食事を終え、半彌と部屋に戻ってきた俺はカーテンの隙間から外の景を眺めていた。
「なぁ、剣也」
いきなりの言葉に俺はの向きを聲の主、半彌の方へと向けた。
かなり真剣な眼差しだ。
「どうした?」
「真剣な話だ。真面目に聞いてほしい」
「いったい、どうしたんだよ。改まって」
普段は決して見せることのない、真剣な顔つきに俺は驚きを隠せなかった。
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「隠していることあるだろ?」
「な、何を?」
隠していることは確かにあった。
だけど、その容は半彌に言ってもいい事なのだろうか。
今の自分では判斷がつかなかった。
だから、咄嗟にはぐらかしていた。
「面で何か隠しているよな」
「面?」
図星だ。
隠している容を確かめるようにして、選択肢を絞ってくる。
「岸川さんと皆田さんが関係しているよな?」
またもや図星だ。
恐らく半彌が考えていることは事実だ。
「聞いた話によると、お前2人から告白されているんだろ?」
思った通りだった。
2
「どこでその話を聞いた?」
この話は、先輩以外には言っていない。
「當たってたのか?適當に言ってみただけだけど…」
一瞬、噂とかで學校の生徒の間に流れていたのではないかと心配してしまった。
まさか、適當だったとは…。
「てっきり噂で流れているものだと…」
「それはないと思う。でもまさか本當に両方から告白されているとは…。羨ましい…」
ハッキリ言えば…。
2人から告白されると言うことは、されない人にとっては羨ましいことかもしれない。
だけれど、本人側からしたらかなり難しい問題なのだ。
將來、2人とも幸せにすることなど出來ない。
だとすれば嫌でも選ばなくてはならないのだ。
そして、今。
俺は選択肢を選ぶ期日が近づいてきて焦っている。
「どっちがお前は好きなんだ?」
「どっちか…」
「まぁ、答えられないだろうな。その選択肢、答えはないからさ。恐らく両方とも正解なんだと思う」
「…」
「でも、どちらかを選ばなくてはならない。もしお前が両方とも好きであるならばな」
事実、両方とも好きだという気持ちはある。
ただ、どちらの方がより好きかというと難しい話なのだ。
「半彌は、人を好きになったことあるのか?」
「何でそんな質問をする…」
「やけに知りだなと思ってさ。そういう経験ないとこういうのは分からないだろうし」
経験がないのに語れるほど簡単な話ではない。
俺の見解だと、半彌にはその経験がある。
「俺は、告白された事がある。そしてその人のことを好きになった」
正直、驚きだった。
飛行機の中でナンパをするほどに飢えているやつかと思っていたのだが、そういう奴でもないのかもしれない。
こんな難しい話を分かってくれるのも頷ける。
「付き合ったのか?」
俺は素樸な質問を投げかける。
すると半彌は視線を落とした。
恐らく嫌な過去なのだろう…。
「俺は、中學3年生の學園祭。その終際に校舎裏に呼び出されて告白された。その彼は學年で最も可いと評判で格もいい、まさに完璧なの子だった。俺自、その子の事が好きだったこともあってその日から俺達は付き合うことになった」
「それで?」
「だけど、付き合ってからが問題だったんだ。付き合ってから、本當に彼の事が好きなのか。好きって何なのか分からなくなったんだ」
「どういう事だ?」
「付き合うまでは確かにあった。彼の前に立ったときのの高まり、彼の事をいつも考えてしまう。それが好きだという気持ちだと思っていた。だけど、それが現実になってからそういう気持ちがなくなってしまった。そしていつしか、本當は彼の事を好きだと勘違いしていたのではないかと思うようになった。だから、付き合ってからわずか1ヶ月で俺達は別れることになったんだ」
「…」
もしかしたら俺の思っている、好きだという気持ちは勘違いかもしれない。
もしそうならもっと慎重に見定めることも必要なのかもしれない。
彼たちともっと長く過ごして、本當の好きだという気持ちに気づく。
それから答えを出しても遅くはないのではないか。
そう思った。
「好きって事が実際、どういう事なのか分かってからでも遅くないと思うぞ。だから剣也、結果を急いでは駄目だぞ。これが親友から出來るアドバイスだ」
こんな近に、腹を割って話せる人がいるとは思っていなかった。
にこみ上げてくるものがあった。
親友を持っていて良かったなと、この時素直に思った。
「ありがとうな。俺、頑張るよ」
「頑張れよ!応援してっから。あ、それと…」
話はこれだけで終わらなかった。
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