《Waving Life ~波瀾萬丈の日常~》33話 寢耳に水
寢耳に水
2日目の朝。
今までのお泊まりは必ずと言っていいほど何か起こるものだったのだが…。
殘念。
何も起こらなかった。
2人の関係に進展があるかのように思われた夜は一瞬にして過ぎ去ってしまったのだ。
というのも…。
昨日の午後11時。
蘭華が前回泊まりに來た時のように、何か起こるなと思いつつ、同じ部屋で寢ることにした。
電気を消す。
「おやすみ、剣也」
「おやすみ」
そう言ってそれぞれ布団にる。
目を瞑る。
…。
靜かな空気が流れる。
多、期待でが躍っていた俺だったが勉強疲れで次第に意識が遠のいていく。
あ、まずい…。おちる…。
なんて思った頃には、夢の中へ。
まぁそんなじですぐに眠ってしまったのだ。
せっかく楽しみにして、寢るまでウキウキしてたのに臺無しだ…。
でも、今は別のことで俺を悩ませている。
昨日よりは低くなった山だが、まだ高い。
何のことかと言うと、もちろん課題である。
2日目となり、2學期が更に近づいたと思うと一層焦燥に駆られた。
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そんな俺に対して、蘭華はというと…。
「さぁ〜!今日もやるぞー!」
なんて言って、すごいやる気だ。
表を見る限り、彼から全く焦りなどじられないのだ。
そう言えば、昨日から全く焦りが見られない。
來た時も、西島が來た時も、夕食食べる時も、寢る前も…。
俺には彼が楽しんでいるようにしか見えなかった。
こんなピンチでも楽しめるなんて凄いな…。
こういう面は素直に尊敬する。
「なぁ、蘭華」
勉強しようとペンを握った蘭華に聲をかける。
ノートを見ていた蘭華は、顔を上げた。
そしてペン回しをしながらもこちらを見てくる。
蘭華は、笑顔で質問する。
「どうしたの?剣也!」
「もう3週間くらいすれば、夏休み終わるよな」
「うん。そうだね」
「このままじゃ、間に合わ無いかもしれないよな」
「うん!そだね!」
依然、彼は笑顔をくずさない。
「まさにピンチだよな」
「うん、ピンチだね!」
より一層笑顔が輝いたようにも映るその表は、一の花のようにしく輝いている。
そんな一の花も時には、浮かない顔も見せるけど今はその影はなかった。
「何で、そんなに楽しそうに出來るんだ?普通なら焦って楽しむことなんて出來ないだろ?」
俺がそう言うと、彼はペン回しを止めた。
そして、1度笑顔を消して視線を落とした。
何かまずいこと言ったかな?
と一瞬思った。
だけど、そんな思いは瞬く間に消し飛んだ。
「剣也が、傍に居るから。傍に居てくれるからどんなに大変な狀況でも乗り越えられる。そんな気がするの。だから、きっと大丈夫だよ!」
蘭華はまた顔をあげてそう言った。
その彼の表からは何か、別の気持ちが乗っている。
そんな気がするような笑顔だった。
多分、その気持ちは…。
「す…」
好きだからなのか?と言いかけたその時。
蘭華は、かき消すように言葉を出す。
「ねぇ、剣也」
蘭華の表は一転して真剣そのものに変わった。
俺も、更に気を引き締めて彼の次の言葉を待った。
「やっぱりこの狀況まずくない?」
と衝撃の言葉を口にした。
「はぁ…」
俺は、ため息をついた。
「気付くの遅すぎだ、お前」
俺がそう言うと彼の表はみるみる焦りの表へと変わっていった。
「っだぁー!どうしよ。間に合わないよ〜!」
「お前な〜!まぁ嘆いていても仕方がない。もう1回気を引き締めて頑張るぞ!」
「うん…」
彼は渋々、現狀をけれた。
そして、再び勉強會がスタートした。
それから1時間後の10時30分。
段々暑くなってきた頃、家のインターホンがなった。
まさか、また西島を呼んだのだろうか。
「蘭華、西島を呼んだ?」
「いやぁ、誰もってないけど〜」
ということは、ただのお客さんかもしれない。
そう思っていたのだが…。
蘭華が、玄関に行くとすぐに數人が階段を上がってくる音が聞こえた。
誰だろう?
部屋の戸があく。
1人はで、1人は男。
頭の中で、思いつくことはただ一つ。
勉強の効率が間違いなく下がってしまう。
ということだ。
「おはよー!勉強會してるって西島君から聞いたよ!」
絵里である。
俺より番數が低い。
「よっ!呼べよ〜!2人きりはずるい!」
半彌である。
同じく、俺より番數が低い。
俺の目には2人とも、かなり気楽に考えているように見えた。
それが、イライラを生み出した。
「お前ら、まさか課題が終わってないとか言わないだろうな?」
そう聞くと案の定、
「終わってないよ」
「終わってね〜」
と2人が聲を重ねた。
「あ〜!どうしてくれるんだよー!」
怒りは同時に悲しみを生み、そう心で泣きんだ。
この4人は、全員沖縄旅行に出かけている。
つまり、俺と蘭華と全く同じ狀態である。
課題がまずい狀態になっていることは言うまでもない。
俺より頭は良くないので、寧ろ聞かれる側となる。
そうなってしまえば、課題の効率は悪くなる一方だ。
この後、この4人での勉強會が6時に終わるまでどうなったかは、言うまでもない。
ワイワイと騒がしくなって、勉強には集中出來ず1日をほぼ棒に振ってしまった。
「何でこうなるんだよ〜!」
という聲は、夕方の近所中に響くのだった。
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