《Waving Life ~波瀾萬丈の日常~》46話 すれ違い、そして……
すれ違い、そして……
1
次の日から、俺たちの間には不穏な空気が流れるようになった。
いつものように會話が全く弾まない。
「おはよ」
「おはよ、蘭華」
「……」
必要最低限の言葉だけしか、俺たちの間には無かった。
近に起きた出來事とか楽しかったこと、辛いこととかを話題に話をしながら登下校していた。
でも今は全くない。
「今日は會議あるのか?」
「多分、あるよ」
「……」
話し始めたとしても、二言位で話が切れる。
原因はあの時。
『なんでさっきから西島君のことばかり話題になってるの?』
蘭華が発したその一言からだ。
西島を話題にされると困ると言っているかのようだ。
ちょっと怒っていた気もした。
困っていた気もしていた。
恐らく、西島の事で何か問題があったのだろう。
でも、俺たち2人の間に壁はないと思っていた。
どんなことも隠し事1つしないくらい強い絆があったと思っていた。
でもその言葉から、俺の勘違いだったのかもしれないと思った。
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そしてその勘違いに多のショックをけていた。
おかげで気分も冴えない。
蘭華は蘭華で、悩みを抱えているかのようにいつもボーッとしている。
多分、西島のことで。
出來れば彼の口から何があったのか聞きたい。
でも聞けないならば、いつかは俺から話を切り出さないといけないのかもしれない。
とにかくしばらくは、待つことにした。
それから幾度も幾度も、彼と會う機會があった。
毎日の登下校。學校。運営委員。でもそのどこの場面でも彼は一向に自分から口を開こうとしなかった。
そして日々が経つにつれ、更に會話の數も減っていった。
『そこまで信頼されてないのか……』
俺のショックは日々膨らむ。
俺が彼に信頼を寄せるように、彼も俺のことを信頼している。そう確信していたはずだった。
だから多言いにくくても、いつか言ってくれるはず。
そう思っていた。
でも現狀はどうだろう。
待てば待つほど、2人の関係が悪くなっていっている。
何か喧嘩をした訳でもない。
お互い悪いことをした訳でもない。
だけど思っていた信頼関係がさほど強くなかった。
ただそれだけなのに……。
俺はそのことが、
「たまらなく悔しい」
辛く、そして本當に悔しいのだ。
2
9月は後半。次第に夏の暑さは薄れて秋の天候に移り始めていた。
20日。學校祭まで2週間程まで近づいてきていた。
かなり順調に準備は進み、楽しみの日は近づく一方だ。
ただ、俺が構想していた學校祭からは遠のいている気がした。
原因は明らかだ。
そのため近頃は、テンションは上がらない。
教室でボーッと外を眺めることが多くなった。
「どうした?剣也?」
「元気無さそうだよ?」
後ろの方から聲がかかる。
半彌、そして絵里だ。
珍しく2人が一緒にいる。
普段はそこまで仲は良くない気がするのだが、気のせいか……。
「いや、そんなことは無いけど」
「けど?」
絵里の表はとても心配そうだ。
そんなに落ち込んでいるように見えるのか……。
まぁ、半彌がそう見えるくらいだからな。
「そんなことは無い」
「何かさ、最近蘭華ちゃんも元気ないし何かあったのかな?って」
いつも元気を持て余している蘭華は影を潛めている。
ただ席に座って、俺と同じようにボーッとしているだけ。
「何も無いよ」
「なんかあったんだろ?言ってみろよ」
半彌の聲はいつもより優しく、眼差しはいつもより真剣だ。
沖縄旅行の時、部屋で2人で話した時と同じじだ。
「何も無い……」
「なんか隠してるよな?」
「何も」
噓、偽り。
ここで頼れるのは友だけだと、自分は知っている。
けど、何かが足りないから俺は口を開けない。
「隠してるよな?絶対」
半彌の口調は、質問を繰り返す度に酷くなっていく。
怒りが込み上げてきているのが分かる。
聲も大きくなってきているので、周りの生徒も俺たちの會話に注目している。
「隠してない」
俺もそれと同じく、答えるごとに聲が荒々しくなってきていた。
相談は要らない。だから早く諦めろ。
そんな心の思いがあるから、苛立ちが募ってきているのだ。
「隠してるだろ!」
半彌は機を両手で思いっきり叩いた。
その音でさっきまでは注目していなかった連中も全員こちらを向く。
今は授業の合間の休憩。
それぞれ予習をしているというのに申し訳ない。
「隠してない。とにかく、靜かにしろよ!周りに迷だろ!」
「今、そんなことどうでもいいんだよ!お前のこと心配してるから聞いてるんだろ?お前は悩みを抱えた時はいつもボーッとしてるから分かりやすいんだよ!」
半彌は怒りをさらに強めた。
今までに見たことのないくらい、明らかに怒っている様子だ。
それと同じく、俺も怒りを止めることはもう出來なかった。
「だから、ないって言ってるだろ!ないのに話すことなんてねぇよ!」
「ちょっと、2人ともやめて!」
絵里の止めの聲は全く耳にっていなかった。
「あぁ、そうですか……。俺はどんな悩みでも互いに相談できる位の間柄だと思ってたんだけどなぁ。そうか、それは俺の勘違いだったのか……。なんかあほらしかなってきた」
「な、なんだと……」
「やめて!」
絵里が再び聲を張る。
でもやはり俺たち2人には屆かない。
「人の話に首を突っ込むなよ……」
一、俺は何を言っているのだろうか。
「はぁ?」
「誰だって話したくないことくらいあるんだよ!」
俺はこんなことを口にしていた奴と何故か喧嘩したみたいになって。
「大きなお世話だ」
それが原因で、蘭華ともすれ違いが起きて。
「な、お前なぁ!」
「だから、邪魔だ!」
信頼関係が薄かったことにショックをけていた。
問題を解決出來ない自分に苛立ちをじていた。
だからその苛立ちが今の俺をつくっていた。
その堪えられなくなった怒りを、何の罪もない寧ろありがたいことをしてくれていたはずの半彌にぶつけていた。
そうやって、心の苦しみを解こうとしたからだ。
悪いことだと、心の底では理解していたのに。
『パァーン』
この音は、頬を叩いた音。
半彌が俺の頬を平手打ちした。
そして、彼は廊下へと走っていった。
自分がされて嫌なことを人にするな。
そんな戒めをい頃言われた気がする。
人の優しさを踏みにじるような行為をされて俺は嫌だった。
そしてそれと同じ行為を今、俺は半彌にしていた。
い頃からやり直しだな……。
俺の心は一気に冷靜さを取り戻していた。
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