意外な始まり

1

これは、剣也と蘭華が學校祭から帰っている時。

その時の半彌側での出來事。

ついに學校祭が終わった。

桃山さんと約束をして楽しみにしていた學校祭は、あっという間に過ぎてしまった。

でも、今。俺の中にあるのは、名殘惜しい気持ちではなく達だった。

桃山さんと初めてゆっくり話せたし、彼の々な表とか仕草を間近で見られて。

本當に幸せな日だった。

そして今、俺はまた彼をおうとしていた。

一緒に帰ろう、と。

「桃山さん？」

夕方祭りが終わって、生徒がどんどん帰っていく。

その人混みの中に、鞄を背負って1人で帰ろうとしていた彼の姿が目にった。

彼がこの街の人だと気付いた夏祭りの日。

あの日から、彼を次第に意識するようになった。

そして、いつしか彼を見つけるのが得意になったのだ。綺麗な桃の髪が目立つからかもしれないけどね。笑。

「げっ！」

彼の返事は、とても嫌そうなじだった。

それもそのはず。俺が彼の機嫌を損ねてしまっていたからだ。

下ネタをばせて、恥じかかせてしまった……。

ただ、彼は何故か逃げようとせずにその場所に留まった。

話くらいは聞いてやる、という意思表示なのだろうか？

「一緒に帰らない？」

「……、だと思った……」

俺のいに、ため息混じりの聲でそう返した。

最近冷えてきて、外の空気は凍えるように寒い。

俺たちの息は白かった。

「……。いいよ……」

彼はなんと言ったのだろうか？

「聞こえなかったの？いいよって言ってるんだけど？」

「えっ？」

そう照れながら彼は言った。

どういう風の吹き回しだろうか？

不思議に思って、思わずポカーンとしてしまった。

「嫌なら帰るけど？」

「行こう！」

俺は、今日初めてのエスコートをした。

2

誰も周りには人がいなかった。

街頭に照らされた道をゆっくりと足並み揃えて歩き出す。

「何か、話あるんでしょ？」

「……」

どうやら彼は、俺の意図を見抜いていたようだ。

そう。彼をったのには目的があったからだ。

俺は彼の問いかけにコクンと首で頷いて答えた。

「迷だった、よね？」

目的とは謝罪。

恥をかかせてしまったのは、俺のせいだからせめてお詫びを言っておかないといけないと思った。

だからこうして2人きりの狀況で話しているのだ。

彼は俺が問いかけをしてから空を見上げた。

俺もそれに釣られて、空を見上げる。

かなり都會のこの地では、あまり見られない星が浮かんでいた。

それを彼は、ずっと見つめている。

「責任じてたのね……。別に、謝る必要なかったのに……」

彼は見上げながらそう呟く。

「だって、もう慣れたもの。あなたがしてくる大抵のことはね。だから、気にしないでいいよ。岡部君」

「い、今なんて？ちょっ、も、もう1回！」

今、間違いなく彼は苗字を呼んでくれた。

それがもう1度聞きたかった。

「は、恥ずかしいでしょ！」

再び、照れの表が浮かんできた。

彼はそれなりに勇気を振り絞ったのだろう。

それを彼の表から読み取った俺は、言葉を続けようとは思わなかった。

その後は沈黙が続いた。

暗い道を靜かに歩く。

次に靜寂を切り裂いたのは、桃山さんだった。

「1つ、聞いていいかな？」

「何？」

意外な言葉だった。

彼は俺のことなど全く興味が無いものだとじていたから。

「なぜ、私と積極的にコンタクトをとろうとするの？」

「……」

彼との出會いは、沖縄旅行の行きの飛行機。

乗り酔いで、トイレに行ってしスッキリした後だった。

トイレから席に戻ろうとした時、桃の髪のとすれ違った。

見た目で判斷すると、彼は間違いなく年が近かった。

「あの〜」

話がしたいな、という求を抑えきれず聲を掛けてしまった。

「はい？」

振り返った彼はそう言った。

「お名前は？」

「桃山 実咲」

「年齢は？」

「16」

「メアド換しませんか？」

「嫌です」

俺の質問に彼は冷靜に答えた。

そんな個人報を簡単に言っていいのだろうか？という疑問はさて置き、俺は彼に話し続けた。

「ゆっくり話しませんか？あ、俺の名前は岡部 半彌です」

「その報いらないです。もう2度と顔を合わせることは無いでしょうから」

「そ、そんなことありません。生きてる限りは可能あり！ですよ」

彼とずっと立ち話をしていた。

それが本當に楽しかった。幸せだった。

でも、1つ今も覚えていることがある。

あの時にじたこと。

それは、俺は彼に……。

「一目惚れしたからだよ……」

俺は彼の顔を見てそう答えた。

彼の頬を見ると、何故か赤くなっていた。

「桃山さん？」

俺の聲に反応していなかった彼にそう問う。

そしていつもの彼の表に戻る。

「ごめん。岡部君」

「え？」

「私、勘違いしていたのかもしれない」

「どういうこと？」

「私は、てっきり岡部君のことをただのナンパ男だと思ってた。でも、違った。ちゃんとした理由があったのね……」

「……」

「ねぇ、岡部君？」

彼の表は満面の笑みだった。

「これからもよろしくね！友達として！」

俺は、『友達として』という言葉をふられた言葉としては捉えなかった。

多分彼はそういう意味で言ってないと確信を持っていたからだ。

俺はただ、友達として彼と関わっていけることにものすごい嬉しみをじていた。

そのが湧き上がっているのが、自分でもじとれた。

「よろしく！桃山さん！」

そう俺は笑顔で返した。

お互い笑顔のまま、俺たちは夜道を帰ったのだった。