《Waving Life ~波瀾萬丈の日常~》62話 信頼の重要
信頼の重要
1
「絵里!」
彼を見つけたのは授業開始5分前。
校庭のベンチに座っているのを見つけた。
俺は思いっきり息を切らしている。
「なに?ストーカー?」
「お前……。俺たちの話を聞いてたのか?」
俺たちの話とは、3日目の校舎裏での話のことである。
「聞いてたけど?それが?」
「ごめん……。絵里には直接言うつもりだったんだけど」
「何を?」
「俺は、蘭華のことが好きだ。ごめん……」
何のごめんなのか自分でも分からなかった。
付き合えなくて?好きになってあげられなくて?
分からなかったけど、俺は取り敢えず謝っておいた。
何か悪いことをした気がしたから。
「謝らなくてもいいから。別にどうだっていいし」
彼はボーッと空を見上げながら興味なさげに話す。
「でも、俺はいつもの絵里でいてしい……」
「何?ふったに優しいままでいてしいって?ふっ……。あんた、何やっているのか分かってるの?」
そんなことくらい分かっている。
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優しい絵里でいてしい。そんな願をふったの子にするべきではないだろう。
ましてや、好きなの子がいるというのに。
だけど、俺は嫌だ。
彼との思い出が全て噓だったという事実になることが。
だから俺はこうして無茶苦茶なことを彼に言っている。
「私が演じていたのは、昔の自分。今思うと馬鹿らしくなる。あんな醜い自分がね……」
「なぁ、絵里……。演じているのは、今の絵里なんじゃないのか?」
「……」
「ふられたという事実から逃れたくて、ふられた自分が嫌だから否定している。だからいつもと違う絵里を演じている。違う?」
「あんたに何が分かるってのよ……」
彼は低い聲音でそう言う。
そして立ち上がり彼は、俺を避けるように玄関と逆の方向に歩いていった。
『キーンコーンカーンコーン』
予鈴が聞こえてくる。
その音を聞いても彼は歩く向きを変えなかった。
今から追うのも手段なのかもしれない。
でも今の彼の背中からは、近づいてしくないというオーラがじられた。
だから、授業をサボろうとしている彼を見ているにも関わらず、自分だけ教室に向かった。
2
放課後。
1人の下校はいったい、いつぶりだろうか。
靜かな夕方の街をゆっくりと歩く。
でも、1人の下校はものの僅かな間で終わりを告げた。
「蔭山!」
背中の方から走りながら聲をかけたのは玲先輩だ。
結局、急遽仕事がり學校祭には殆ど來ていなかった。
おかげで1度も學校祭中に會っていない。
「蘭華は、一緒じゃないのか?」
この際、先輩に全て話すのも悪くないかもしれない。
きっと先輩なら打開策を出してくれるに違いない。
そんな信頼が約半年で築かれていた。
「なるほどね……。大変だな、君らも」
『も』ということは先輩も忙しいのだろう。
次第に名が売れ始めている先輩は、今が1番の踏ん張りどころだ。
忙しいのも仕方ないだろう。
「君は、今すぐ付き合いたいという気持ちはないのか?」
「完全にないと言えば噓になります」
もし、留學がないのであれば今すぐ付き合いたい。
でも留學を挾む間に、気持ちが揺らぐようなことがあればこの先一緒にやっていけない。
そんな將來を見據えているからこそ、付き合わないという選択肢を取ろうとしているのだ。
先輩と2人で歩くいつもの帰り道は、蘭華と帰る時とはまた違うじがした。
「この先を見據えているのだろう?蔭山」
「まぁ、そうですね。その程度で気持ちが揺げば、きっといつかは好きという気持ちはなくなると思いますし……。彼への気持ちがどれだけ強いのか試すのにはいい機會だと思います」
「妥當な選択肢だよ。ただ、選択肢に絶対の正解はない。それは蔭山も重々承知だろう?」
「まぁ」
「私は蘭華の選択肢も妥當だと思う。だから、どちらが正しいかなんて分からない……」
「そうですか……」
先輩の言う『選択肢に絶対の正解はない』という言葉は理解していた。
それは、前から何度も選択肢で悩んで最終的に分かった1つの結論でもあったからだ。
でも選択肢は必ずどれかを選ばなければいけないのだ。
俺は、一層深く考え込む。
暫くの沈黙を打ち破ったのは、先輩だった。
「君たちは、すごく初々しいよ」
「え?」
「初々しいからなのか、君たちには欠けているものがある。それがあればきっとこの問題も解決に向かうはずだ」
「それって何ですか?」
「信頼だよ」
「信頼?」
「相手のことを完全に信頼できない。信頼出來ないから相手の意見が正しくないと思って、自分の意見を通そうとする。だからこうやっていさかいが起こるんだよ」
信頼があるからお互い、接な関係を紡いで行ける。
そんなことを聞いたことがある。
「……」
「お互いを信頼すること。そうすれば、きっと君たちなら解決できる問題だよ」
次のステップにようやく進むことができて俺は一安心した。
だが、すぐに新しい壁にぶつかった。
信頼するためには、いったいどうすれば良いのか。
それを次に考えなければいけない。
「ありがとうございます……」
「またいつでも相談してくれ。私は、君たちの味方だ」
本當に心強い人だと思う。
だから俺は先輩を信頼できている。
その厚い信頼が、蘭華に対しても出來たならもっとお互いの距離を近づけられるのかもしれない。
俺は先輩と別れて、暗くなってきた道を歩いて家へと帰った。
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