《Waving Life ~波瀾萬丈の日常~》63話 本の信頼
本の信頼
1
「あんた、これ以上しつこくして來たら訴えるからね」
先輩にアドバイスを貰った日から、もう1週間。
『信頼』を得るためにどうしたらいいのか?という問題は、未だ解決の糸口を摑めていない。
だがその日から毎日、彼に話しかけることだけは欠かさずにしていた。
いつか、心を開いてくれる。そう信じているからだ。
だが、今日もこうして俺の前からすぐに姿を消した。
「駄目か?」
「あぁ」
この件については、半彌にも話してお互い協力することで一致していた。
「しくらい変化があってもいいものだが……」
半彌の言う通り、彼は態度を1つも変えていない。
1週間も話せば、しくらいは変化があるのではないかという推測は見事に外れていた。
「現段階だと、岸川さんに頼ることも出來なさそうだしな……」
俺と蘭華の件も既に話してある。
ちなみに、距離をとるようになってから今まで1度も會話をしていない。
メールをしたりすることもない。
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ただこの間、ずっとには落ち著かないものがあった。
表現しづらい、もどかしさや歯さが居心地を悪くしていた。
正直、距離を取ってよかったと思っている。
新しい、いや元々あったのかもしれない。
そんな気持ちに気付けるかもしれないからだ。
きっと気付ければ、次へと進める。そんな気がする。
今は、1限開始前。予鈴がなるまでと15分といったところだろうか。
教室には殆どの生徒が來ていた。
「あの……」
『?』
俺たちは、聲のした背中側を振り向いて見た。
そこに居たのは、學級副委員長の白川しらかわ 舞まみだった。
清楚系の雰囲気が漂う。
今思うと、彼と話すのは初めてかもしれない。
學してから約半年が経ったというのに……。
「絵里ちゃんの件で何か悩んでる?」
「そうだけど……」
そう言えば、學校祭の出し決めの時。絵里と仲良さそうにしていた気がする。
確か半彌がメイド服でやるのか?と質問して、それに対して2人が息を合わせて、
『卻下』
って言われてたな……。
というか、半彌って誰にでも酷い目に合わされているよな?気のせいなのかな……。笑。
「もしかしたら、協力出來るかもしれないわ」
「本當か?」
「私、彼と同じ中學だから、今の彼を見ているの」
2
彼は先に自分がどんな経緯で彼と中、高一緒になったかを話してくれた。
白川さんは元々がここに住んでいたわけではなく、高校にる前に親の転勤の都合でこの街に來たとのことだった。
だから、絵里と中、高と同じになったのは偶然だったらしい。
今の絵里の人格が出來たのは恐らく中學。
その頃の話を聞こうにも、知る人はこの辺りにいない。
そんな時に、白川さんが現れた。
これは、かなり助かる。
「蔭山君って、絵里ちゃんと小學校同じだったんでしょ?」
「うん」
「學して間もない時に、している人がいるって絵里ちゃん、言ってたわ。優しい子だったから、周りのこともすぐに仲良くなれて、私ともすぐに打ち解けた。多分小學校もそんなじだったんでしょ?」
「そうだな。優しいという印象が強かったよ」
「でも、寧ろ悪い方向に行ったみたい。浮いているって馬鹿にされてたの」
『優しさは、時に人を傷つける』
半彌の言葉は、今でもに刻まれている。
「君は、皆田さんを助けなかったのか?」
俺の橫で話を聞いていた半彌が、そう質問した。
「もちろん助けようとしたわ。でも、相手は男子。それも集団。とても手が出せなかったわ」
白川さんは、視線を落とした。
半彌と俺もそれを見て同した。
友達なのに、救えない。
そういう狀況になったら、俺も白川さんのように悔しい思いをするんだろうな……。
暫くして半彌が再び口を開いた。
「馬鹿にされた皆田さんは、そのあとどうなったの?」
「絵里ちゃんは、何を言われようと優しいままであり続けた。心が強かったから、折れずに耐えていたんだと思う。でも、さすがに限界だったんだろうね。絵里ちゃんは、たった1人でその男達に反撃したの。それを見ていた近くの先生が、絵里ちゃん1人だけを悪い人扱いして……」
『……』
絵里が反撃するところだけを見れば誰だって、そう見えてしまう。
でも実際、彼が悪い訳では無い。
多分言い訳した所で、その先生は聞く耳を持たなかっただろう。
彼が手を出そうとしていた現場を見ていたから。
本當に、理不盡だ……。
「絵里ちゃんが、男に暴力しようとしたという噂が一気に広まったわ。それで、彼の周りにいた人は次第に離れていったの」
「酷い話だな……。」
人はすぐに噂に流されてしまう。
だから、その噂を信じた人達は絵里を途端に信じなくなった。信用、信頼しなくなったのだ。
それまでいくら信頼していても、例え事実と異なった噂だったとしても一瞬で消え去ってしまう。
俺は、思う。
多分、それは本當の信頼じゃないと。
本當の信頼は、そんな噂ごときでは消えたりしない。
友達の関係が崩れたりしないはずだ。
今も友達でいる白川さんと絵里の間にあるのは、その本當の信頼だろう。
「それから、絵里ちゃんは……」
『キーンコーンカーンコーン』
予鈴だ。
立っていた生徒は一斉に、1限の準備にいた。
俺達も準備をしなくてはならない。
「なぁ、白川さん。放課後続き聞かせてもらえるかな?」
「分かったわ。放課後、ここでいいかしら?」
「うん」
俺たち3人は、急いでそれぞれ席についた。
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