《Waving Life ~波瀾萬丈の日常~》74話 橫暴な彼

橫暴な彼

1

「なんでここにいるんだよ?」

絵里たちが遊びに行った公園の方向と逆の方にあるこの公園は、他の人がいないためとても靜かだ。

周りは、たくさんの木に囲まれていて都會にしては珍しい場所だ。

そんな靜かな公園のベンチで俺は聲を荒らげる。

「お前は……。自分が何をしたのか分かってんのか?」

そんな俺の怒りの聲に晴大は全く怯えたりしない。

寧ろ、ケラケラと笑っていた。

俺はその態度を見て余計に気分を悪くした。

「分〜かってるって。そんなに怖い顔しなくてもいいじゃんか?折角の再開なのにさぁ」

「何が折角だよ。お前の顔なんて2度とみたくなかったし、俺は絶したんだよ」

俺はあの時、こいつと完全に絶した。

なぜなら俺を危険な目に合わせたからだ。

「絶なんて噓でしょ?だってあんなに仲良かったじゃん?」

「っ!」

俺は怒りを抑えられず、晴大のぐらを摑んだ。

「てめぇ……。いい加減にしとけよ……」

「ひぃ〜、怖い怖い」

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「お前がやったことは決して許されないことだ……。まだ俺だから良かったけど、他の人が同じ狀況におかれたらどうなっていたんだよ?」

彼のやったことは、ほぼ犯罪である。

でも俺は彼を許した。

それは、余計な優しさだと分かっていたのに……。

公園に吹く風は冷たく、吐く息は白い。

あまりの怒りで、頭から湯気がたちこめそうだ。

「ふぅ〜、寒いなぁ」

「おい、話聞いて……」

『話聞いてんのか?』と言おうとした時だった。

晴大が腹に蹴りをいれた。

そして、腹部に鈍い痛みが生じた。

そのあまりにも辛い痛みで、ぐらを摑んでいた手を緩めた。

「いつまで摑んでんだよ?」

急に彼は鋭い目つきになった。

こいつは昔からオンオフの切り替えが激しく、今のように急に人が変わる。

「お前がそれだけのことをしてきたんだ。お前がけたのはあくまでも罰でしかないんだよ」

俺は腹部を抑えてしゃがみこんでいた。

痛みはまだ引きそうにない。

晴大は、俺の髪を左手で摑みあげた。

「詫びいれないといけないのはどっちだ?」

「お、お前……。っ!」

俺の言葉を聞き、次は右手で腹部を毆った。

「聞こえないなぁ〜。どっちかなぁ?」

「……」

俺は腹部の痛みに堪えられず、聲も出せなかった。

それを見たからか、彼はこう言った。

「まぁ、その答えは次の機會に聞くとするか……。次までに考えておけよ?」

晴大は、左手を放した。

そして俺は、地面に倒れた。

ほぼ意識を失いかけていた。

だが、晴大が高笑いしながらここから去っていく足音だけははっきりと聞こえた。

そして、俺は気を失った。

2

中學2年生の時だった。

俺の通う中學に彼、二神 晴大(ふたがみ せいた)は転校してきた。

最初の印象は別に悪くなかったし、彼はクラスのみんなとすぐに打ち解けた。

俺も彼とは、友達だった。

よく遊んだり、話したり……。

あの時は本當に楽しかった。

今、俺がそれなりに績がいいのは彼と切磋琢磨し合ったからで、彼がいなければ今の俺はいないと言っても過言ではない。

彼は績優秀で、運神経抜群のみんなの憧れだった。

でも……。

彼には裏があるんだと、俺は知った。

その裏は、俺にしか見せていなかった。

『こいつはウザい』とか『こいつは嫌い』といった愚癡を俺にらすようになった。

その時だけ彼は、普段學校で見せない表になっていた。

鋭い目つき。

ニタニタと嘲笑う。

そんな、普段の真面目でどんな人にも優しい彼とは正反対の面を彼はもっていたのだ。

次第にそれもエスカレートしていった……。

嫌いな人の靴を隠したり、人の機に落書きをしたりと遠回しに嫌がらせをするようになった。

俺は、それがいけないことだと分かっていながらも止められなかった。

彼の裏の面に、俺は怯えていたからだ。

とても口出しが出來なかった……。

しかし、さらにエスカレートした彼を見過ごす訳にはいかなくなり、勇気を振り絞ってある日の下校時に言ったのだ。

『そういうの、やめにしないか?』

と。

でも、彼は友達である俺に対して聞く耳を持たなかった。

『なんで?別にいいじゃねぇか。ウザいやつに嫌がらせをするのは當然のことだろ?』

彼はそんな腐った理論を並べる。

そして彼はさらに表を変えて、俺にこう言ったのだ。

『でもさぁ……。ぶっちゃけ、1番ウザいのはお前だからな?』

その言葉を聞いて、心を痛めた。

彼に何1つ危害を加えた記憶もないし、今も一緒に下校しているのだ。

気が合ういい友達だと思っていた人に、そう言われれば誰だって心を痛めるだろう。

『ど、どこがウザいんだよ……?』

と、俺は恐る恐る彼に聞いた。

すると、冷たく低い聲でこう言った。

『自分で考えろよ』

自分で考えろって言われても……。

別に何かした記憶はないんだけどな……。

俺はこの日を境に、彼と一緒に登下校したり話したりするのをやめた。

丁度、冬が終わりを迎えた時の出來事だった。

時は過ぎ去り3年生になった初日。

俺は新たな始まりに期待を持って登校しようと道路を歩いていた。

今日は曇り。雨が降りそうな天気だった。

しかし俺の期待はそんな天気を吹き飛ばすくらい清々しいものだった。

中學まで家からは遠くないけど、途中大きな道路を挾んでいる。

その道路の所までやって來た。

ここは普段から車が多くてとても危ない。

信號が青になり、それを確認して渡ろうとしたその時だった……。

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