《攻略対象外だけど、好きなんです!》13 「予想外」

 朝食後。

「船が……また地上に降りた。どういうことだろう?まだ僕たち以外にも乗ってくる人がいるの?」

「いや、そんな話は聞いていないぞ。」

「私が様子を見てきましょうか?」

「待った。の子が出て行くのは危ないよ。どんな土地に降りたのかも分からないし、まずは俺と海斗で見てこよう。」

「はぁ?なんで俺が……」

「おう!よろしく頼むな!」

「ったく、いつもいつも俺のことを巻きこみやがって。いい格好してぇなら、自分一人でやれよ。」

「まぁまぁ。だってさ、もし不審人ってきたら、海斗にとってもまずいだろ?可い弟に危険が及ぶかもしれないんだよ。」

 そうそう。東くんには、湊くんという可い弟がいたんだっけ。

「う!」

「能力者は九人。多分それは確かだと思うんだ。太一の場合は分かりやすい能力だったから信用出來たけど。もしかしたら俺たちの中に、能力者じゃない人間が混じっているのかもしれない。」

「…………」

 うん。桐ヶ谷くんは能力者じゃないよ。

 でも今言ったら殺されそうだから言わない。

「まぁ、全部推測だけどね。」

「……行くぞ。」

 私も後ろからこっそりついて行こうっと。

「ふん、こんな大きな飛行船だって、私の相手ではないわね。」

 ……アレ?おかしいな、日梨ちゃんの格が変わってる。でも、著てる制服は変わってない。

 あ、日梨ちゃんの足首に砂原くんのツタが巻きついた。

「!?ちょっ、ちょっと、やめなさいよ!!火あぶりにするわよ!」

「何だぁ?この、船に乗る前から制服著てるぞ。」

「そうだね。うーん、これはどういうことかな。」

「も、もう!やめなさいったら!」

 日梨ちゃんが炎を出してツタを消す。

「これは……。」

「確実に能力者、だよねー…。ねぇ君、ついてきてよ。みんなに君のこと、紹介したいんだ。」

「ふん、最初からそう言えばいいのよ。」

 うわぁ、だいぶ格悪くなってない?

  …早くデレてくれますように。

「えーっと、これで全員か?うん、揃ってるぞ。」

「揃ってないぞ。湊とロン、それに晴翔。あと海斗も途中で逃げたな。」

「ンな!?ったく協調のカケラもないやつらだなぁ。」

 四人もいないのによく揃ってるとか間違えたな…笑

「いないやつは、あとで挨拶に行かせるよ。俺は砂原 隼。さっきはごめんね。」

「さっきのことは、もういいわよ…。あーゆうの、慣れてるし。」

 慣れてるんだ……。何かあったのかな?

「……隼、何かしたのかい?」

「うん。出會いがしらに襲ってしまったんだ。」

「それは…への対応とは思えないな。」

 さすが澄くん…紳士だなぁ。

「本當に悪かったと思ってるよ。もし後でどこか痛いところがあったら言って。薬ならたくさんあるから。」

「分かったわ。」

「僕は澄 紬だ。初っ端から迷をかけてしまってすまないね。」

「あなたがしたんじゃないんだし…。それにもう、気にしてないわよ。」

「私は須 雪月です。この船にはの子は二人だけですが…」

「私は白井 菜々香。…私たち二人だけだからこそ、たくさん仲良くしたい。よろしく。」

「……よろしく。」

  か、可い!!

 ちょっと頰を染めた日梨ちゃん、マジ天使!

「あー俺は伏見 和樹。この船では年長者の部類にるから、何かあったら言ってくれ。」

「オレ、乙哉 太一!よろしくな!…えっと、そういやお前の名前聞いてなかったな。」

「私は日梨よ。苗字は覚えてないわ。…しばらく人と接してなかったから、忘れたのよ。」

 格以外は変わってないんだ。

「ところでさ、君、その制服どうしたの?」

「ああ、これは旅人さんからもらったのよ。この服は特注品で、私の炎で燃えることはないそうよ。だから著ていたの。」

 今、日梨ちゃんの著てる制服は、普通この船に乗ってからもらうものだ。

 つまり、船に乗ってもいないのに、制服を著てるのはおかしい、というわけで疑われていたのだ。

「旅人さん?それは一誰なんだい?」

「その人のことは、あまり覚えていないの……。もう何年も會ってないし…。でも、悪いことをするような人じゃないのよ。」

「そっか。…この制服がどういう経路で彼に行き渡ったのか分からないけど…僕には彼が噓をついているようには見えないな。だから、この話はここまでにしないかい?」

「だなー。ここでオレたちが話しても仕方ねーじゃん。警吏に行けるわけじゃないんだし。…もうこの船飛んでるんだぜ?」

 それは、まぁ…確かに。

それに、日梨ちゃんは悪くないしね!

「たしかに、空の上に警吏はいない。…どうしようもない。」

「じゃあ、ここで解散にしようか。」

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