《攻略対象外だけど、好きなんです!》15 「襲撃」
 
 日梨 視點
「おはよう!日梨ちゃん。…昨日はよく眠れたかな?」
 慣れしていそうなこの男は、私の顔を伺ってくる。
 (確か名前は……神楽かぐら晴翔はると…だったかしら?)
「おはよう。それなりによく眠れたわ。」
「それは良かった。…かーくんと湊ちゃんのところに行こう。チームの紹介をするよ。」
 (…湊みなとちゃん?
 湊ちゃんなんての子はいたかしら?
 昨日雪月や菜々香と話したときは「私たち以外にの子はいない」と言っていたのだけど…?
 それに、かーくんとは誰?)
「湊ちゃん、って……もう一人の子がいるの?昨日は『俺のチームにはの子はいない』って言ってたじゃない。」
「違う違う。湊ちゃんはの子じゃないよ。俺がつけたあだ名。」
 ということは、かーくんと言うのも晴翔がつけたあだ名なのだろう。
「……そう。」
「それより早く、みんなのところへ行こう。……あ!かーくん、丁度いいところに!今そっちに行こうとしていたんだよ。」
Advertisement
「本當に連れてきたんだな、日梨を。」
 かーくんこと、伏見和樹ふしみかずきは呆れたように答えた。
「…日梨よ。改めて、よろしくね。」
「ああ、よろしく。」
「日梨ちゃん、実はかーくんはね、よくくし気がきくし、苦労が大好きな人間だから、いろいろと便利だよ。」
「…そ、そうなの。よく分かったわ。」
「……しかし、いいのか、晴翔?お前、湊に何も話していないだろう。」
「いいじゃない。可い日梨ちゃんがいれば、きっと出てきてくれるよ。」
 (か、可い…!?)
「ん?どしたの、日梨ちゃん。顔、赤いよ?」
「…………」
「あ、もしかして照れちゃった?ふふ、嬉しいな。じゃあ、紹介がてら、湊ちゃんを連れだそう!」
「そう簡単にいかないことは、分かってるくせに……」
 (簡単にいかない?どうして?)
「……どういう意味?簡単にいかない、って。」
「いや……まぁ、會えば分かる。」
「?」
そして私たちは、湊のもとへ向かった。
「湊ー、朝だぞ。早く起きてこい。」
 和樹がノックをして、聲をかける。
…しかし、反応は帰ってこない。
「湊ー!」
 和樹がもう一度ノックをした。
…やっぱり、反応はない。
「…いないんじゃないのかしら?」
「いるよ。あの湊ちゃんが外へ出るはずないから。」
 (外に出るはずない、って何よ?
 もしかして、病気とかかしら?)
「もうかれこれ五日くらいは、姿を見ていないな……」
 (う、噓……ヤバくない?)
「も、もしかして、病気とかじゃないの?」
「病気というか、その………
 あいつは、人と話すのが苦手でな。
 なかなか人前に出てこないんだ。」
「食事は雪月ちゃんが運んでるみたいだよ。甘やかしすぎも、よくないと思うんだけどね……おーい、湊ちゃーん!」
「湊、っていうのかしら?早く出てきなさいよ。」
 私もノックしてみた。
 すると、妨害音に我慢できなくなったのか、扉が開いた。
 姿かたちは見えないけれど、し出來た隙間に人影が見えた。
「湊!生きてたのか!心配したぞ!」
「……生きてます……人を…勝手に…………はぁ。」
 (最後までいいなさいよ!っていうか、出てきなさいよ!
 ……この人、正真正銘の引きこもりね。どうしたものかしら。)
「ほら、湊ちゃん。早く出て、一緒に屋上に行こう?」
「……!また…あなたですか。やめてください……あなたも澄さんも、僕には眩しすぎます。…目の毒です。」
「ははは!また面白い冗談言うなぁ。」
 (いや、完全に悪口でしょ…。)
「僕は……夜のうちに役目を果たしてます……だから、とやかく言われる筋合いはないです…。」
「何言ってるんだ。日中引きこもっているなんてに悪いだろう。それに、顔を出さないと皆心配する。」
「心配……?あなたこそ変なことを言いますね。心配なんてするはずありません。僕らはいずれ……敵同士になるのに。」
「敵同士…?どういう意味よ!」
「知らない人の聲がしました。もしかして、また新しい人?」
「そうだぞ。…日梨だ。」
「湊、というのかしら?よろしくお願い……」
 湊がパタン、と扉を閉めた。
 (ちょっと!?なんなのよアイツ!
 それに、敵同士、ってどういう意味なの??)
「コラ、湊!失禮だろう!開けなさい!」
「…そうだよ湊ちゃん、日梨ちゃんはとっても可いんだから、見ないと損だよ。」
(…損はしないと思うけど……)
 そんなとき、事件は起こった。
 小さな発音が聞こえた後、突然、船が揺れたのだ。
「きゃあぁぁ!!…なによ、これ!」
 (急に地面が揺れるなんて、聞いてないわ!)
 
「!!…くっ……またか!」
「……………っ。…また、ってどういうこと、かな?かーくん。」
「それは………。…みんなが集まってから話す。今は、逃げることを最優先しないと。……!海斗、お前、どうしてここに!?」
「はぁはぁ……!俺はまだ食堂へ來ていない奴らを向かわせているんだ。早く食堂へ行け!今はそこが一番安全だ!」
 (…食堂は、一階にあったはず。
 急いで向かわないと……!)
「待ってくれ、湊がまだ部屋の中にいるんだ!」
「ちっ…!!おい!!出てこい!!」
 海斗という男が何度呼んでも、湊は部屋から出てこない。
「クソッ!!」
「お、おい、海斗…?」
 海斗はついに、ドアを壊し始めた。
 ……何度も何度もドアを引っ張るうちに、蝶番ちょうつがいが壊れ、ドアが開いた。
「あ…ああ……!」
 湊らしい人が顔を出した。
 …今にも泣きそうな顔になっている。
そのとき、また発音が聞こえた。
(…なによ、この船!『世界』の船じゃなかったわけ?
 それに、どこかは分からないけど、さっきよりも発音がずっと近い。)
「まさか……屋上以外も破されたか!?」
「……ひぃ……。」
 湊の目には、涙が溢れんばかりに溜まっている。
って、湊が出てきたんだから、早く食堂へ行かないと!
「とにかく、急いで食堂へ向かいましょう!」
 私たちは無事に食堂へ著いた。
「はぁはぁ……。いったい、何が起こっているのかしら……?」
 …さっき和樹が『破』なんて言ってたわ。
 もしかして、この船、襲われているの?
 それに、この船、『世界』じゃなかったりして…?
 いや、ありえないか。こんな空飛ぶ船、『世界』以外に作れるはずないし。
 だとしたら……。
 (『世界』に楯突く人間がいるなんて………。
 まさか、ね。)
「…これで、全員そろったか?…!」
「俺に和樹、紬。それに、太一もいるな。日梨と菜々香もいる。いないのは……海斗と湊とロンと……雪月、か…」
「海斗と湊と晴翔はさっき見かけたわ。すぐに來ると思う。」
「桐ヶ谷さんは、すぐに行くって言ってた。」
 菜々香が言う。
(じゃあ……雪月は……?)
「雪月さんはさっきまで一緒にいた。なのに、いない、なんて…。もしかして、屋上にまだいるのかも。」
「!!屋上、だって?あそこは一番危険なところじゃないか!…どうして…?」
「とにかく、俺は屋上を見に行ってくる!」
「おい、待て!隼!!」
 隼は和樹の聲には応えず、屋上へ向かった。
 
【書籍化】傲慢王女でしたが心を入れ替えたのでもう悪い事はしません、たぶん
「貴方との婚約は白紙に戻させて頂く」凍りつくような冷たい美貌のリューク・バルテリンク辺境伯は決斷を下した。顔だけは評判通りに美しいが高慢で殘酷な性格で、贅沢がなにより大好きという婚約者、ユスティネ王女……つまり私の振舞いに限界になったからだ。私はこれで王都に帰れると喜んだけれど、その後に悲慘な結末を迎えて死亡してしまう。気がつくと再び婚約破棄の場面に時間が巻き戻った私は、今度こそ身に覚えのない濡れ衣を晴らし前回の結末を回避するために婚約破棄を撤回させようと決意した。 ※ビーンズ文庫様より書籍版発売中です。応援ありがとうございました! ※誤字報告ありがとうございます!とても助かります。ひらがな多いのは作風ですのでご容赦下さい。※日間総合ランキング1位、月間総合ランキング2位、月間ジャンル別ランキング1位ありがとうございました!※タイトル変更しました。舊題「傲慢王女な私でしたが心を入れ替えたのでもう悪い事はしません、たぶん」
8 111右目を無くした少年の戀のお話
事故で右目を失った少年『春斗』は 高校三年間でどう生きるのか─ 卑屈な少年ととにかく明るい少女の戀の物語
8 59男尊女卑の改革者
高校生である如月悠人は、義妹と幼馴染と少し苦しくはあるが、幸せな日々を送っていた。そんなとき、事故に巻き込まれそうになった妹と幼馴染を庇い、あっけなく死んでしまった…………………かに思われたが、何故か転生してしまった!そして、その世界は元の世界とは『何か』が決定的に違っていて!? ⚠主人公最強&ハーレム要素の強い作品となっています。苦手な方も好きな方も、どうか一瞥でもして頂けたら幸いです。
8 114人間嫌いな俺とビッチな少女
「好きです!付き合ってください」 罰ゲームに負け、話したことすらない冴えない鍋島睦月に告白をすることになった胡桃萌、 告白のOKを貰ってみんなでネタバラシするつもりが答えはNO? 「なんで噓の告白で振られなきゃいけないのよ!いいわ、絶対に惚れさせて振ってやるわ!」 意気込む萌、しかし告白を受けなかった睦月にも何か理由があり……? 萌は果たして睦月を惚れさせることはできるのか、そして睦月は惚れてしまうのか? そんな2人の青春ラブコメディー。 *人間嫌いな俺とビッチな君→人間嫌いな俺と ビッチな少女 にタイトル変更しました。 *11/15付ジャンル別日間ランキングで2位ランクインできました。ありがとうございます。今後も頑張りますのでよろしくお願いします!
8 190乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?
「イザベラ、お前との婚約を破棄する!」「はい?」悪役令嬢のイザベラは、婚約者のエドワード王子から婚約の破棄を言い渡されてしまった。男爵家令嬢のアリシアとの真実の愛に目覚めたという理由でだ。さらには義弟のフレッド、騎士見習いのカイン、氷魔法士のオスカーまでもがエドワード王子に同調し、イザベラを責める。そして正義感が暴走した彼らにより、イザベラは殺害されてしまった。「……はっ! ここは……」イザベラが次に目覚めたとき、彼女は七歳に若返っていた。そして、この世界が乙女ゲームだということに気づく。予知夢で見た十年後のバッドエンドを回避するため、七歳の彼女は動き出すのであった。
8 91過労死した王妃、2度目の人生は『破天荒』に歩む!
ポワナータ國の王妃エリスは執務中に倒れそのまま亡くなってしまう。その直後に神に出會い夫である國王が裏切っていた事を知る。エリスは神から人生をやり直してみないか?と言われ承諾、現世に舞い戻る。『王妃も貴族もまっぴらごめん!今度は思うがままに生きてやる!』公爵令嬢の仮面を脫ぎ捨てたエリスはいつしか『破天荒令嬢』と呼ばれ歴史に名を殘していく事になる。
8 95