《本日は転ナリ。》63.気持ちを乗せて

あれから結局何も変わらないままに春休みり、私はぽっかりと空いたの隙間を埋めるように夏休みの課題に逃げていた。それでも時折頭に浮かんでくる莉結の事。その度に止まったシャープペンシルを無理矢理かしてはノートに書かれた的外れな文字を消す、そんな事を繰り返した。

終業式の帰り道。莉結との會話を思い出す度に私のがぎゅうと締め付けられるのだ。

"もう春休みだね。そういえば天堂さんに返事はした? "

突然の事に私は聲を詰まらせ首を橫に振ると、並んで歩く莉結の足が止まった。

"そっか。でもあんまり待たせるのも可そうだよ? 期待して待ち続けるってほんとうに辛いと思うから……"

莉結はそう言って哀しそうな目をして笑った。

私はその一言に曖昧なままにしていた自分に罪悪を覚えた。考えている"フリ"をして逃げていた自分に。そしてまた、頭の中で何度も繰り返された天堂さんのあの言葉が私の脳裏に過ぎる。

"それが分かるまでは私の側に居てくれるかしら"

"私の気持ちもきちんと伝えてあげなきゃな"そう思った。

"ねぇ莉結"

私は小さな聲を掛けると、今の自分の気持ちを伝えた。自分の気持ちが未だよく分からない事、そしてその気持ちを確かめる為に天堂さんと付き合ってみようと思うって事を。

すると莉結の視線が足元へと落ちていき、明暗のり混じったような小さな聲で莉結は言った。

"そっか……、そうだね。うん、それが瑠らしいよ。それならさ、新學期はもう別々に通ったほうがいいよね? "

その言葉に私は何て答えたらいいのか分からなくって、莉結を見つめたまま黙ってしまった。でもそんな私へとぎこちない微笑みを投げ掛けた莉結は、"いや、別に気を遣ってる訳じゃ無いんだけどさ。ケジメ……かなっ、なあんて。じゃぁ私寄るとこあるから。またねっ! " そう言い殘し、春風のようにだまりの向こうへと走り去ってしまったのだった。

……そして気が付けばもう課題も殘すところ一ページとなっている。私は溜息を吐いてからノートを文字で埋めていった。

そしてそれが終わると機の上に並んだ課題の山を見つめた。

まだ春休みにって三日も経っていない。だけど課題を終わらせた達などは微塵も無くって、誤魔化せるモノが無くなってしまった寂寥のようなものが私にのし掛かる。

"ピロン"

そんな時、私の攜帯が鳴った。それと同時に私のが小さな鼓を早めだし、脳裏に莉結の顔が浮かんだ。自然と口元が緩みそうになるのを抑え、私は機の隅に置かれた攜帯を手に取る。

すると攜帯の畫面には天堂さんの名前が映し出されていた。

"何を期待してたんだろ"

小さな吐息と共に開いたメッセージには"明日、予定空いてますか? "の文字。

私はその畫面を暫く見つめた。そして私は深く息を吸って靜かに吐き出すと、天堂さんにメッセージを送った。

"空いてるよ。それとこの前の話だけど、こんな曖昧なままの私でいいならよろしくお願いします"

天堂さんから返信が屆いたのはそれから數分と経たないうちだった。

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