《本日は転ナリ。》After Story…My Dearest.53

「びっくりしたっ?    ごめんねっ」

私はそう言ってから莉結の頬を指で拭う。

格悪いよっ、ほんとに』

莉結はそう言いつつも、頬を拭った私の手を取って、その両手で優しく包み込んだ。

窓から差し込むらかな日差しがそんな莉結の橫顔を照らし出している。

「ねぇ、莉結……」

そんな莉結を見て、突然私は今の幸せが続くのかちょっとだけ不安になってそう言った。

『なぁに?』

「ううん、何でもないっ」

『なにそれっ』

それでもやっぱり莉結のこの笑顔を見ればそんな気持ちも和らいでしまう。

きっと莉結は笑ってくれるって思った。

そんな事を見越して聲を掛けた私は、やっぱり莉結の言う通り格が悪いのかもしれない。

「莉結も橫になればっ?」

私が何となくそう言うと、莉結は屈託の無い笑顔でこう言った。

『なにっ?    ってる?』

その言葉に揺してしまいそうになったけど、私は負けじと目を細めてめい一杯艶やかに微笑んで「うん。ってる」と答える。

すると、莉結が無邪気に笑ったかと思うと勢いよく私の橫へと倒れ込んできた。

われちゃったぁ』

「何それっ」

それから暫く二人で天井を見つめた。

きっとそれは莉結も同じ気持ちだったんだと思う。

一緒に居て疲れない、空気のような存在。

けれどそれは無くてはならないモノで……當たり前だと思っている"その存在"が無くては自分は生きられないと分かっている。

私がふと莉結へと顔を向けると、噛み合わさった歯車の様に莉結の顔が私を捉えて目が合った。

そして暫くの沈黙の後、私がそっと口を開くと、それと同時に莉結のく。

「『ねぇ、キスしよっか』」

……重なり合った二人の聲が靜寂の部屋に響いた。

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