支度を終え家の外に出ると、ひゅうと吹いた冷たい風に混じった懐かしい乾いた草木の匂いに冬の訪れをじさせてくれる。

いつもなら登校する學生の多いこの道も、なんだか別の道みたいに靜かで人気も疎だ。

バス停へと歩いている途中も、しだけ目眩のような覚に襲われて、何度か立ち止まる。今までは弱い方では無かったけど、やっぱり"この"になってしか弱くなっちゃったんだろうか。

そんな事を考えながらもバス停へと到著し、予定よりもし遅れて到著したバスに乗って窓際の席に座ると、窓にを預けて車窓から外の景を見つめた。赤ちゃんを連れたの人や、足早に歩道を歩くスーツ姿の男の人、昔ながらの床屋さんの前で談笑するおばあちゃん達。この世界には々な人生を歩んでいる人がいるんだなぁって改めて思った。

そこでふと窓に映った私の顔に焦點が合った。

    私もそんな"々な人生を歩んでいる人"の一人になれているのかな。

    今更だけど、私はみんなと同じ生きなのかな、なんて思ってしまう事がある。生學的には違うんじゃないかとか、はでも伝子的にはどうなんだろう、とか。どこにも分類されない生きだったらどうしよう……そんな答えの無い妄想がふとした時に頭に浮かんでしまう。

だけどそんな時にはいつも莉結が側に居て、その顔を見れば"まぁいいや"って思わせてくれるんだけど、今日はタイミングが悪かったみたい。

私は窓に映った自分を見ても何だか自分とは思えなかった。

その時だった。私はぼうっと見つめていた窓に映った私の後ろ、隣の席へと目を見開いた。

「嶺……ちゃん」

すぐに振り向いたけどやっぱりそこには誰も居る筈も無い。だけど確かに私には見えた気がした。なんでだろう、涙を浮かべて私を見つめる嶺ちゃんの姿が。

"次は聖英病院前、聖英病院前です"

突然耳に飛び込んできたそのアナウンスに私はハッと電掲示板へと視線を移した。するとそこには"聖英病院前"の文字が映し出されており、私は気を取り直すとすぐに降車ボタンに指をばした。