《ロリっ娘子高生の癖は直せるのか》1-10 「お兄さんと呼ばせて下さい!」

「大人になった……ってじ?」

「…………?」

俺の発言に対し、桜ちゃんはポカンと口を開け、訳が分からないような顔をしている。

ああもう俺の人生終わったか?

絶対変な風に思われたよねきっと。

だが桜ちゃんはその顔をカーッと真っ赤にさせてこう言った。

「そ、そそそそんな私まだ大人になってないです!」

「……え?」

「私男の子と遊んだの晴流にいしかいないし、その……そういう事もまだしたこと……無いですし」

「ちょっと待て! 俺はそんな意味で言った訳では」

何やらとんでもない勘違いをされてしまったようだ。

ついでに桜ちゃんから思いもよらぬ自白が聞こえた気がするが……。

「わ、わわ私は晴流にいの為にとっておきますからっ!」

「えっと……。桜ちゃん?」

「何ですか!」

「とっておくって……」

「……っ! やだ、私ってば何て事を」

目を見開いて両手で口を覆う桜ちゃん。

今さら口を塞いでも手遅れだと思うんだけどね。

というか今、とんでもない事口走ってたよな?

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そういう経験は無い。俺の為にとっておく……?

それってまさか!?

急にが熱くなる。いや待てこれは俺の思い違いだろう。

桜ちゃんは堂庭と同じ馴染みだ。そんな事考えてるなんて有り得ない。いくらなんでも展開が急すぎるではないか。

「と、とりあえず、落ち著こうか」

「は、はい……」

桜ちゃんも堂庭の妹というだけあって、暴走気味になる事もあるんだなと思った。

そう、これは堂庭姉妹では恒例の暴走事案である。

ただ話の流れが止まらなかっただけでね、本音は別のはずだもんね。

俺は出されたお茶を一口飲んで、の熱を冷ますことにした。

「今更ですが、晴流にいって呼ぶのはなんだか恥ずかしいですね」

お茶を飲んで、すっかり落ち著いた桜ちゃんが俯き加減に視線をそらして言った。

桜ちゃんは俺のことを晴流にいと呼んでいる。でもそれは稚園の頃の話で高校生になった今ではその呼び名は不釣合いということだろう。

「これからはお兄さんって呼ばせていただきます!」

「いや適當に呼び捨てとかで大丈夫だよ」

「いえいえ。それはその……順序というものがありますから」

「順序?」

「はっ!」

またしても両手で口を塞ぐ桜ちゃん。何だか失言が多いですねえ。

「そ、その……。お兄さんって、寧ろ呼ばせてください!」

「はあ。まあ構わないけど」

「はい! じゃあよろしくお願いします、お兄さん!」

そう言って桜ちゃんは屈託のない笑みを浮かべる。

呼び名から考えると俺との距離が離れたような気がするが、どうなのだろうか?

まあ別にいいか。嫌われてはいないようだし。

「それで、お姉ちゃんの事なんですけど」

「ああ……」

真剣な表に変わった桜ちゃんはやや聲を潛めて、話題を切り出した。

「本當に私の事、お姉ちゃんから聞いてなかったんですか?」

「うん、さっぱりだね」

「そうですか……」

寂しそうに俯く桜ちゃん。やはり堂庭から一言も桜ちゃんの話題が出てこなかったのは不自然だよな……。

「お兄さんはお姉ちゃんのクラスどこだか知ってます?」

「堂庭は俺と同じクラスだからB組だけど……。もしかして知らなかったの?」

「そうなんです。お姉ちゃんに聞いても教えてくれなかったんですよ」

桜ちゃんの晴れない顔を見ていると、やはり堂庭との間で何かあったに違いないと思う。

「ケンカでもしているの?」

「うーん。そうじゃないんですけどね。理由は二つありまして……」

「理由?」

「ええ。一つは……あまり言いたくないんですけど」

顔を赤らめて細い聲で話す桜ちゃん。恥ずかしい容なのだろうか。

「別に無理して言わなくていいよ」

「はい、ありがとうございます。ではもう一つの理由なんですが」

ここで一呼吸置いた桜ちゃんは、口調をやや強めて言葉を繋げた。

「お姉ちゃんのロリコンについてです」

「あ、あぁなるほど……」

桜ちゃんもやはり気にかけていたのか。

同じ高校に通っているということはもう寮暮らしではないということ。

當然、堂庭と同じ屋の下で過ごすことになるのだから、俺以上に堂庭と接する機會が多いということだ。

「お姉ちゃんが小さいの子が好きなのは昔から知っていました。ですが私が寮を出て、家に帰ったら気付いたんです」

一旦口を止め、し考えたような仕草をした後、こう続けた。

「お姉ちゃんの小さいの子へのは次元の壁を越えていたんです!」

「次元!? まさか……」

「ええ。お姉ちゃんは二次元にも手を出していました」

「マジですか……」

堂庭の熱烈なは三次元に留まらなかったのか。

初耳の報ということで俺は驚いていた。

「要するにアニメやゲームにも夢中であると?」

「そうです。しかも小さいの子に限ります」

「あいつは重度のオタクだったんだな……」

堂庭が子であったことが唯一の救いか。

……いや、逆に最大の懸念材料な気もするけど。

「隣がお姉ちゃんの部屋なんですけど、夜中になるとび聲がしてちょっと怖いんです」

「お、おう。それはご愁傷様……」

今だと堂庭から一番被害をけてるのは俺ではなく桜ちゃんだな。

深夜に「最高!」とか聞こえたらそりゃ恐怖もじるだろう。

「それでお兄さんにお願いがあるんです!」

桜ちゃんは目力を強くして宣言するようにこう言った。

「お姉ちゃんのロリコンを直して下さい!」

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