《ロリっ娘子高生の癖は直せるのか》2-4 「気付いてしいのじゃ」

「あたしが呼び出した理由。わかるでしょ?」

「はえー。なんの事じゃ?」

強気な態度を見せる堂庭に対し、修善寺さんは至って冷靜にけ答えていた。

「とぼけても無駄よ! あの封筒送りつけたの、あんたでしょ?」

「瑛殿。人に質問するときは、まず質問する目的と容の正當を説明してからするものじゃぞ」

「あーもう。いちいちうるさいわね。……封筒の中にあたしの事を小児者って書いた紙と寫真が何枚かってたのよ。それで紙に書かれた文字があんたの字にそっくりだから、こうして聞いてるのよ」

「ほほう。……最初からそう言えばいいのじゃ」

修善寺さんは大きく頷き、余裕の表を浮かべる。

なんというか……堂庭が彼を嫌う理由が分かった気がする。

「確かにその文書をそなたの學校に送ったのはで間違いないのじゃ。じゃが、一何故そなたはそこまで腹を立ててるのかえ?」

「あんたね……。理由なんて分かってるでしょうが。嫌がらせにしてもちょっとやり過ぎだと思うんですけど!」

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は事実を伝えたいと思って、善意で送ったつもりなんじゃが……」

「そんな善意いらんわ!」

第三者の俺から見ても分かる、修善寺さんの明らかな演技と煽り。

堂庭は思うように攻撃できず、イライラしているようだった。

「そなたも理解しているはずじゃろう。――ロリコンは差別されるということを」

「ぐっ……」

痛い部分を突かれ、堂庭は歯を食いしばる。

一方、修善寺さんは勝ち誇ったような堂々とした態度で話を続ける。

「わしはそなたに気付いてしい。・をする罪は重いのじゃぞ」

「そ、それがいけない事くらい、あたしは分かってるわよ! でもあんたには関係ないじゃない!」

「関係ない? そんな事はないぞ。そなたが好きロリコンだとわしが困るのじゃ」

「困る?」

「左様。まあこんなところでは詳細を公言できないがの。ただ一つ言うなれば、そなたが目障りなのじゃ」

侮蔑の目で堂庭を睨む修善寺さん。この人、言いたい事をオブラートに包まず平気で口にするんだな……。

「やっぱり修善寺先輩、口が達者ですねぇ」

「堂庭じゃ、まるで太刀打ちできないな」

ギャフンと言わせると高らかに言っていたのに、蓋を開けてみれば完全に修善寺さんの獨擅場である。

俺の出番が必須……。彼はそう言っていた。

確かに堂庭一人では復讐どころか、言い返されて終わりそうだ。でも俺が修善寺さんにどう立ち向かう?

堂庭が言っていた通り、話に合わせるだけで本當にいいのだろうか?

「ふふ、ところであんた。あたしが今日このまま帰ると思ってる?」

「……というと?」

「あたしだってそこまで馬鹿じゃないわ。……晴流、こっちに來なさい!」

堂庭の聲がこちらに向けられる。いよいよ出番か。

すると橫に立つ桜ちゃんが「いってらっしゃい」と囁いて、ポンッと俺の背中を押し出した。

隠れていた看板からはみ出た俺は、とりあえず場の流れを考えて堂庭の隣に移する。

「はて。そちらの殿方は一何者じゃ?」

首を傾げる修善寺さんに堂庭が答える。

「この男は宮ヶ谷晴流。あたしの馴染みよ」

「なるほど。瑛殿の舊友でいらしたか。じゃがお主、貧相な顔をしているのう。生気が無いというか、気だるそうというか……」

「まあ見た目はそうよねー。だるそうな目してるしー」

「おい! 骨に俺ディスるのやめてくれよ!」

何で呼ばれて草々ダメージ食らってんだよ。

俺の出番って本當にあるの?

二人は一頻り俺の悪口を言うと、修善寺さんが當然じるだろう疑問をやっと投げかけてきた。

「ところで宮ヶ谷殿はに何の用で來たのじゃ?」

「えっとそれは……」

言葉に詰まる俺に堂庭が待ってましたと言わんばかりに答える。

「ふふふ、それはもちろんあなたに地獄を見せてあげるためよ」

「地獄? わしがこんな庶民に?」

こんな庶民で悪かったな!

「ええそうよ。晴流はこんな見た目だけど実は地元では有名な不・良・なんだから」

「ふ、ふりょ!?」

修善寺さんは堂庭の言葉を聞くなり、をぶるぶる震わして一歩後ずさってしまった。

その様子に堂庭は計畫通りと言わんばかりのドヤ顔を見せる。……これは一

「こいつはね。バイクで校舎を暴れまわったり、煙草とか普通に吸うのよ?」

「はぁ!? 俺はそんな犯罪はし……ぐはぁ!?」

言いかけたところで堂庭から無言の腹パンを喰らう。痛ぇ。

悶える俺だが、堂庭は特に気にすることなく耳元でこう囁いた。

「修善寺は極度の不良嫌いなの。だからあんた今からヤンキーの設定ね」

俺がヤンキーの設定? というか修善寺さんが不良嫌い?

……いやまあ誰しも不良と聞いて良いイメージは持たないだろうがどういう事だ?

だが、堂庭は素直に従えと目で訴えてるし、ここは話に合わせておくか。

「あ、あぁ。バイクとか、ブンブン走っちゃってるぞ」

「ひ、ひぃぃぃ!」

修善寺さんは悲鳴を上げて、とうとう目に涙を浮かべてしまった。さっきまでは言いたい放題だったくせに、急に態度変わったな。

「こ、怖いのじゃ。怖いのじゃああ!」

「はは、ざまあないわねー!」

俺の一言で二人の立場がすっかり逆転してしまった。

しかしたったこれだけで急に怯えるなんて、修善寺さんはどんだけ不良が怖いのだろうか。

「こんな危険な者を連れて來るなんてそ、そなたは馬鹿か! アホか! 間抜けか!」

それでも必死に対抗する修善寺さんに対し、堂庭は余裕の笑みを浮かべる。

「あんたが調子に乗るからいけないのよ? 不・良・恐・怖・癥・さん?」

「く、くそ! の弱みを握った卑怯な手段。わ、わしは許さないぞ!」

「それは結構。好きなだけ文句を言うがいいわ。……だけど、この不良が黙ってるとは限らないけどね?」

そう言って堂庭は俺の肩を叩く。

「あ、あぁ。……俺は何かと許さない奴だからな!」

何言ってんだ俺。

ヤンキーの設定って的にどうすればいいんだよ。とりあえず目を細くしておけばいいのか?

「怖いよぉ! 怖いよぅ……」

ぎこちない俺の演技にも関わらず、修善寺さんはしっかり怯えていた。

半べそをかきながら、まるで子供のように喚いている。

「宮ヶ谷殿! いや宮ヶ谷様! 先程の侮言を申した事、大変失禮だった。か、覚悟はできているが、どうか、命だけは助けてくだせぇ……えっぐ」

そして修善寺さんはガクッと跪ひざまずき、ぼろぼろと涙を流し始めてしまった。

その姿を見ていると、俺はつい謝りたくなるような心に囚われた。

「おい堂庭。流石にやり過ぎなんじゃねぇのか?」

俺は堂庭だけに聞こえるような小さい聲で尋ねると、彼は心配無用と言わんばかりに笑顔で答える。

「やり過ぎじゃないわ。このお馬鹿さんにはこれくらいの報いが必要なのよ」

いやそれはお前基準の話だろうが……。いくらお仕置きとはいえ、の子を泣かすのは流石に申し訳ない。

う俺だったが堂庭は腕を組み、更に容赦ない事を言い出した。

「そんな可らしく泣いても私の怒りは収まらないわよ! あんたにはお仕置きをけてもらうわ!」

「まだするのかよ!?」

今の時點で十分お仕置きだと思ったのだが……。

堂庭、マジパネェっす。

「ぐすん、え、瑛殿。どうかの犯した罪を許しておくれ! 修善寺家の名を持って、わしのを捧げて何でも言う事を聞こう! だから……」

「駄目よ。學園で浮かれてるあんたには、し罰を與えないといけないわ」

數分前の狀況が噓のように、満足そうな表を浮かべる堂庭。

は修善寺さんの魅力的な和解案もスルーして、悪魔のような笑顔でこう言った。

「明日、晴流と二人で一日デートしなさい!」

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