《ロリっ娘子高生の癖は直せるのか》2-11 「結論はそう言う事じゃな」

小刻みに揺れる観覧車の中、俺と修善寺さんの間にはしばらく沈黙が訪れていた。

疑いの目で見る俺に対し、修善寺さんは平然と佇んでいる。

やがて痺れを切らした俺はを乗り出して彼に抗議することにした。

「修善寺さん。あれは本當に善意で送った封筒なの?」

「あぁもちろんじゃ。は噓をつかんぞえ」

「でもあの手紙を見た時の堂庭、マジでビビってたぞ」

「…………」

「あいつは普段うるさいほど元気だけどさ、ショックにじないくらい能天気な奴じゃないんだよ」

俺にロリコンがバレたあの日も堂庭は泣いて縋っていた。何でもするからバラすな、と。

いけない事だと重々分かっているからこそ堂庭は自癖を隠しているのだ。その上で堂庭あいつは必死になって周囲に溶け込もうとしている。それは馴染みである俺・が・斷言できる。

とはいえ修善寺さんの言葉が噓だとは思っていない。小學生時代に除け者にされた経験を再度味合わせたくないという気持ちは本だと思う。でも修善寺さんは手段が間違ってると思うんだ。

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「……例え善意であっても堂庭を悲しませるような事があれば、それはやめてくれないか」

・馴・染・み・として俺は堂庭を守る義務がある。そう思ったのだ。

「…………」

しかし熱くなりすぎたか?

自分には直接関係ないのに、堂庭の事だと思うと我慢出來なくなっていたのだ。何故か分からないが。

そしてまたも訪れる沈黙。時折鳴る風切り音がやけに気になった。

やがて景が空を飛ぶ鳥の高さまで下がった頃、修善寺さんが口を開いた。

「ほっほっほ。……間違いない、お主は良い奴なのじゃ」

「何でこの流れでそうなるんだよ!」

何を言い出すかと思えばこれである。

「だってお主は瑛殿が心配で心配で仕方がないんじゃろう? そしてが行なった一連の行為に納得できない、違うかえ?」

「……修善寺さんのとった行はおかしいと思うけどさ、べ、別に堂庭が心配で言った訳じゃないよ」

「宮ヶ谷殿。殿方のツンデレは世間ではウケないぞ」

「ちがっ! 俺は本當に心配なんか……」

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と言いつつも修善寺さんは俺の思考をしっかり見抜いていた。堂庭を心配したのも単に馴染みという長い付き合いがあったからである。

「まあそれはどうでもいいのじゃ。宮ヶ谷殿、が今回の手を打った理由はお主が先ほど熱く語った言葉そのものなのじゃぞ」

「え……どういう意味?」

「ほっほ。察しの悪い奴じゃな。――実はひと月程前に桜からとある自慢話を聞かされていてのう」

修善寺さんは遠い目をして話を切り出す。関係の無い話題に思えるが、修善寺さんの手段に抜かりはなかったと言うのだろうか。

「困ったら助けてくれたり、優しく気遣ってくれたり、桜と瑛殿には大切な馴染みがいると。まあその時は名前を聞かなかったからそいつが宮ヶ谷殿だとは分からなかったんじゃがな」

桜ちゃんが俺の事を修善寺さんに……? 一どんな訳だ?

「それを聞いてはこの書送付作戦を思い付いたのじゃ。一見リスクがありそうじゃが、どんな狀況だろうと瑛殿を守ってくれる奴がいる。桜はそう言ってくれたからのう」

「要するに俺がいるから安心して危ない綱を渡れと?」

「……結論はそう言う事じゃな」

「それ信頼と責任を俺に押し付けすぎだろ!」

「文句があるなら桜に言うのじゃ。あまりにもベタ褒めしておったから、わしも事実なのか試してみたくてのう」

ああもう何だこれ。結局誰も悪気はありませんでしたって事か? しかも事の発端は俺みたいになってるし。

「じゃがまあ瑛殿を一瞬だけでも悲しませてしまったのなら詫びよう。今後はもうし地味な作戦にするから今回は勘弁してくれないか」

「ま、まあ謝るなら堂庭本人に言ってくれ」

「ほっほっほ。それもそうじゃな。……じゃが彼奴が素直に聞いてくれるとは思えないがのう」

修善寺さんは外の景を眺めながらポツリと呟いた。そして視線を俺に向けると彼は何か思い出したような聲を上げて話し始めた。

「宮ヶ谷殿。一つお主に質問があるのじゃが……」

「ん、何?」

「桜ってお主の事が」

「はーい! お疲れ様でしたー!」

修善寺さんの聲を掻き消すようにガタンという大きな音が鳴り響く。そして室だったカゴの扉が大きく開かれ、従業員が笑顔で出迎えてきた。あっという間だったが観覧車は既に一周したようだ。

「宮ヶ谷殿、早よ降りるぞ」

「あ、あぁ……」

修善寺さんが言いかけた言葉の先は結局分からず終いだった。

桜ちゃんが俺の事を……?

しばらく俺はその言葉の真意を詮索していたのだが、そのどうでもよくなった。まあ大して重要な話では無いだろうし問題ないだろ。

それよりも俺は気になる點があった。

修善寺さんと堂庭はどんな関係なのか。

堂庭は修善寺さんに対して敵対心剝き出しだったし、修善寺さんは堂庭を煽りつつも影では心配しているらしい。

犬猿の仲のようにも見えるが本心はどうなのだろうか。そしてそんな二人の間柄をよく知ってそうなのは恐らく桜ちゃんだ。今度會った時に聞いてみようと思う。

観覧車の後は修善寺さんの希でいくつかのアトラクションに乗った。彼は気持ちの切り替えが上手なようで、どのアトラクションも最大のテンションで楽しんでいた。

そして日が暮れた頃、俺の人生初デートは幕を閉じた。

もう一日が終わってしまったという悲壯が俺の心を漂わす帰り際。修善寺さんから別れの挨拶と共に連絡先の換を頼まれたので喜んで引きけたのだが、これは所謂社辭令という奴なのだろうか。

例えそれでも俺は嬉しいけど。だって俺のアドレス帳に貴重なの子の名前がる訳だし。

何にせよ今日は実に充実した一日だった。可らしいお嬢様と知り合う事ができ、堂庭の癖が広まる恐れも一先ず無くなったとみて良いだろう。

あとは堂庭やつを清純化できれば萬々歳なのだが、これは長い道のりになりそうである。

「まあこれで良いんだよな」

修善寺さんが言っていたようにとりあえず今を楽しもう。もし壁に當たる事があればその時考えよう。

そして今日は……早く寢よう。張していたせいで想像以上に疲れたからな。

帰り道の間、俺はそんな事を考えていた。

「お兄ちゃん! こんな遅くまでどこに行っていたの!」

玄関の扉を開けると舞奈海が仁王立ちで待ち構えていた。

何やら隨分とお怒りのようだ。……こっちは早く休みたいのに。

「だから今日は用事があるって言っただろ。友達と遊びに行ってたんだよ」

「むぅー。こっちはもう大変だったんだよ! お兄ちゃん助けに來ないし」

助け……? 舞奈海は今日運會だったはずだが、近頃は人命救助イベントなんかが並行して執り行われているのだろうか。

「最近の小學生って皆レスキューできるハイスペック小學生なの?」

「お兄ちゃん何言ってるの? ……瑛りんが今日來てたんだよ」

「…………はぁ!?」

堂庭が舞奈海の小學校に來てただと!?

あいつに小學生の兄弟なんていないし、完全にロリ目的じゃねーか。

「そんで私を見つけるなり「育著姿萌えぇ」とか言って抱きついてくるしさ。本當にどうにかしてほしいよね」

「行だけは完璧に不審者だよな」

堂庭のロリコンはやはり早急に直しておきたい。どうにかならんのかねぇ。

大きな溜息を零す。

「しかし俺が出掛けている隙に……隙に?」

何かが引っかかる。

今日のデートは行程もそうだが日程も全て堂庭が勝手に決めていた。

予定ぐらい當人に決めさせろと思っていたが、もしかして堂庭は小學校の運會の開催日を知っていて……。

「お兄ちゃんどうしたの? 急に怖い顔して」

「いや、ちょっと片方の馴染みに釘を差さなくてはいけないと思ってな」

堂庭の奴、よく俺に「どうしようもない」と言うがあいつだってどうしようもないじゃないか。

まったく世話の焼ける馴染みだぜ。

首を傾げる舞奈海を橫目に、俺はリビングに向かって歩き出した。

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