《ロリっ娘子高生の癖は直せるのか》3-1 「桜お姉ちゃん!」

修善寺さんと人生初のデートを果たした日からしばらく経った週末。

俺は自室で妹、舞奈海の説得に追われていた。

「瑛りんの妹が家に來るとか本當に無理なんだけど!」

「だから桜ちゃんは堂庭と違ってまともな子なんだよ!」

先程から問題ないと言って聞かせているのだが、どうにも納得してくれない。

そういえばこんなやり取りは以前にもしていたよな。あの時は堂庭だったから厄介だったけど、今回は単純に事実を教えてあげれば良い話だ。

「桜さんだってどうせロリコンなんでしょ? 姉妹なんだから」

「あのな……。いくら姉妹でも似ても似つかない所だってあるんだよ」

見た目、格、所作……。似ているどころか正反対だしな、あの二人は。

「うーん……。確かにそうかもしれないね。私はお兄ちゃんみたいに間抜けじゃないし」

「だろだろー? っておい!」

分かりやすい例が俺達にありましたか。

でもそんな風に納得されるとお兄ちゃんへこんじゃうぞ……。

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「とにかく、桜ちゃんは舞奈海に手を出すような子じゃないから安心してくれって!」

「ふん、どうだか。実際會ったら暴走するかもしれないじゃん」

「だから堂庭と一緒にするなよ!」

中々ガードがいな……。堂庭との絡みが相當トラウマになっているのは間違いないようだ。

「例え桜さんが良い人だとしても、家には絶対れないで! 怖いから!」

「大丈夫だって。もし何かあったら俺が阻止するからさ」

「むぅ……。でも駄目! 私は會わない!」

「じゃあもう外へ遊びに行ったら? そうすれば會わなくて済むだろ?」

「それもやだ! 私が外に出たら負けだと思うもん」

「お前は引き篭もりかよ!」

相変わらず我が儘な妹である。俺はそんな舞奈海に呆れた視線を投げる。

「なら好きにしてくれ。俺の言葉を信じるかどうかは舞奈海に任せるから」

「ふんだっ! 今日はもう私の部屋から出ないんだから!」

高らかと引き篭もり宣言をした舞奈海は足を大きく踏み鳴らしながら俺の部屋を出ていった。

舞奈海には是非とも桜ちゃんと會ってもらいたかったのだが今回は難しそうだな。誤解はまたの機會に解くとしよう。

ピンポーン。

晝食のカップ麺を食べてし落ち著いた頃。

チャイムの音と同時に俺は玄関へ向かう。

「ごめんなさい。し遅れてしまいました」

扉を開けた先に眉を八の字にして上目遣いでこちらを見てくる桜ちゃんがいた。

俺は「大丈夫だから」と手を橫に振ると彼は安心したようにはにかんだ。

いつも思うのだが、桜ちゃんは本當に堂庭の妹なのか疑ってしまう。

まずは見た目である。

長は妹である桜ちゃんの方が遙かに高いし、ファッションセンスも二人は対をしている。

今日の桜ちゃんの服裝はライトブルーのシャツに薄手のカーディガンを重ねており、白いミニスカートを履いていた。

初夏らしく清潔もある桜ちゃんらしい格好だが、堂庭だったらきっと季節なんか考えず小學生が好きそうなキャラクターがプリントされたシャツやモノトーン柄のスカートでも履いてくるだろう。

口調についても桜ちゃんの方が丁寧だし、大人びた対応ができる。

――もう桜ちゃんが姉でいいんじゃないの?

「……お兄さん、どうしました?」

「あ、いや何でもない」

つい考え込んでしまったな。

俺は慌てて手を振り、桜ちゃんを家の中にるよう導する。

「今日は話があるって言ってたよね」

「はい、そうです。あとは……お兄さんの家の偵察ですね」

「て、偵察!?」

「あ、冗談ですよ冗談。久々の訪問なので々見て回ろうと思いまして」

「そっか……」

桜ちゃんも冗談を言ったりするんだな。それにいつもより上機嫌な気がする。

「じゃあ俺の部屋はこっちだから……ってどうしたの?」

桜ちゃんはその場に立ち盡くしたまま、廊下の奧の方を珍しそうな目で見ていた。

「あの子はもしかして……」

「え……?」

同じ方角に視線を変えると、柱を盾にしてこちらを覗く舞奈海の姿があった。……あいつ、何してるんだよ。部屋に引き篭もるんじゃなかったのか?

「おい舞奈海。そこにいるなら出てこい」

「……ばれたか」

悔しそうに呟いた舞奈海は柱から手を離し、のこのこと歩いてくる。

「あなたが舞奈海ちゃんね! 赤ちゃんだった頃に見たけど隨分変わったのね!」

「……當たり前でしょう。もう私小三ですし」

うわ舞奈海の奴じ悪!

怒鳴りつけて注意してやろうと思ったが、今は桜ちゃんがいるためあまり暴力的な手は使えない。

ここは平和的な解決をするとしよう。

「ごめんね桜ちゃん。舞奈海は初対面の相手だと張しちゃうんだよ」

まあ本當は警戒しているだけなんだけど。

桜ちゃんは俺の言葉を聞くと「そっか」と頷いて、手に提げていた鞄から小さな紙袋を取り出した。手土産だろうか。馴染みなんだしそんな余所余所しい禮儀はいらないのに。

「舞奈海ちゃん。良かったらこれ食べて。お口に合うか分からないけれど」

「……ありがとうございます」

仏頂面をしながらも紙袋をけ取る舞奈海。

「……あれ、もしかしてこれって」

袋にプリントされたロゴに見る舞奈海。

そして唸り聲と共に今までの顔が噓のようにらかな表を浮かべた。

「これっていつも行列ができてる駅前の味しいマカロンじゃないですか!」

「そうそう。喜んでもらえると思って買ってみたんだけど、どうかな?」

「嬉しいです! 私ここのマカロン大好きでよくお兄ちゃんに買ってきてもらっているんです!」

まさか舞奈海の好を持ってくるとは……。桜ちゃん、ナイスだぜ!

「ふふ、なら良かったな」

しかし最初の警戒心マックスファイヤー狀態はどこへ行ったんだ、我が妹よ。

結果的に桜ちゃんの良心が伝わったようで良かったが、相変わらず食べに弱い奴だよな。

「さっきは失禮な態度をとってごめんなさい。これからよろしくです、桜お姉ちゃん!」

「そんな! 気にしなくていいんだよ。初めては張しちゃうもんね」

桜ちゃんは小さい子の扱い方に慣れているんだな。どこかで鍛えられているかのようだ。……きっと姉どうにわの影響だろうけど。

というか舞奈海は桜ちゃんと打ち解け過ぎだろ。なんだよこいつ、あげれば何でも良いのかよ。

「あと、良かったら私と遊びませんか? 面白いゲームがあるんです!」

「おお、いいね! でも先にお兄さんとお話しなくちゃいけないから、その後一緒に遊ぼっか!」

「はい! じゃあ私は部屋で待ってますから!」

二人ともとても嬉しそうだ。もう心配はご無用といったところだな。

「じゃあ桜ちゃん。まず本題とやらを済ませておこうか」

「はい、そうしましょう!」

ご機嫌な舞奈海をその場へ殘し、俺は階段に向かって足を踏み出した。

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