《ロリっ娘子高生の癖は直せるのか》3-3 「バレちゃいました?」

「すみません、お待たせしました」

「いや全然大丈夫だから……」

桜ちゃんは長らく席を外していた。それはの子だからという理由を踏まえても長い時間だったが、恐らく気を落ち著かせていたのだろう。かく言う俺もこの間に平常心を取り戻そうと自分に言い聞かせていた。

「そういえば今度の期末テストって初日は午前授業でしたっけ?」

「うん、そうそう。だから結構有り難いんだよね」

カーペットの上に腰を下ろしながら桜ちゃんが話し掛ける。當たり障りのない會話だったが俺は安心した。

何故なら桜ちゃんの表は既に晴れていて、すっかり本調子に戻ったと思われるからである。

「私、次の期末はあまり自信ないんですよね……」

「え、そうなの? でも桜ちゃん頭良いし全然平気でしょ?」

「いえいえそんな事ないですよ~」

首を橫に振って否定するが、そういう人ほど何の問題もなくテストを乗り切ったりするものだ。

実際に桜ちゃんの學業は優秀な方である。堂庭も姉の威厳を保つために俺に勉強を教わりに來たくらいだしな。

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「まあ今から勉強頑張れば大丈夫でしょ。……それで今日來てくれた理由って何だっけ?」

「あ、そうでしたね。忘れてました」

えへへと照れながら答える桜ちゃん。

確か俺に話があると言って來てくれたはずなのだが、その前に々有り過ぎて本題を見失いかけていた。

「……ゴホン。えっと、今日はお姉ちゃんについての話があって來たんです」

一つ咳払いをして、姿勢を正した桜ちゃんが話を切り出す。

「それで、お姉ちゃんのアレについてなんですが……」

「あぁ……」

俺はすぐに察することができた。堂庭の『アレ』と聞いて真っ先に思い浮かぶのは一つしかない。

ロリコンについてだろう。

「お姉ちゃんを正そうと努力はしているのですが、中々言葉じゃ伝わらないみたいで……」

「まあ単刀直に言っても聞いてくれないだろうしな」

堂庭のは半端ないのである。口だけじゃあいつの心はかないはずだ。

「それで、私良い方法を思いついたんですよ!」

「良い方法……?」

桜ちゃんは手を元で組み、自信に満ち溢れた表で話す。

「ロリコンが直らないなら、逆に夢中になれるものを新たに作ってあげればいいんですよ!」

「うーん、なるほど……」

堂庭のロリ好きを上書きするということか……。

確かにそれなら奴の暴走は今よりも収まるかもしれない。

でもあいつにアレより夢中になるものなんてあるのか……?

策はもちろんあります! これを見て下さい!」

そう言って桜ちゃんはテーブルに一枚のチラシを出した。

「化粧坂けわいざか36……? これってあの……」

「はい! アイドルグループです!」

チラシには學生服のようなコスチュームを著たの子達が並んだ畫像と共に『初の野外ライブ開催!』という文字が大きく載っていた。

「お姉ちゃんにアイドルの魅力を伝えての子の事なんか忘れてもらおうと思うのです!」

「はぁ……」

桜ちゃんは目を輝かせながら話していた。なんか何時にも増して乗り気だな。

「でもそう簡単に上手くいくかな。ジャ○ーズとかならまだしも……」

「男は駄目ですっ!」

「え!?」

機をドンと叩いて強く反論した桜ちゃんに俺は驚きの聲を上げる。

の子のアイドルを好きになってもらわないと私が困るんです!」

「……何で?」

「だって……そうじゃないと……。一緒にライブとか、行けないじゃないですか!」

えっと、うーん。……なるほど。

さっきチラシを出した時、桜ちゃんが凄い嬉しそうだった理由が分かった気がする。

「桜ちゃん……アイドル、好きなの?」

「え、あ、はい。……まあし」

そう言って照れた顔を見せる桜ちゃん。

の子のアイドルが好きだったのか……。意外、というか新たな発見だな。

「でも堂庭がそう簡単に夢中になってくれると思えないんだが。あいつは同年代のの子にはこれっぽっちも興味がないんだぞ」

「ふふふ、心配ご無用ですよお兄さん。これを見てください」

桜ちゃんは待ってましたと言わんばかりに答えると、チラシをくるっとひっくり返した。

「GHL28……? これもアイドルか?」

「はい、そうです! お姉ちゃんにはまずこっちに夢中になってもらおうと思います!」

チラシの裏面には『人気急上昇のGHL28!』と書かれた文字と共に先程と同じく制服のような裝を著たの子達がずらりと並んでいた。

だが異なる點もあった。

「これって所謂ジュニアアイドルって奴?」

らしく決めポーズをしているの子達は小學生くらいな年齢にみえた。

まあこれだったら堂庭も多は興味を持ってくれるかもしれないが、ロリコンを直すという意味ではあまり効果が無いような気がするが……。

「あ、いえ! この子達も歳は私達とほとんど変わりませんよ?」

「…………はぁ!?」

當たり前のように答える桜ちゃんに、俺は思わずチラシを二度見してしまう。

いやこれ絶対小學生でしょ。普段ランドセルとか背負ってる子達ですよね?

「お兄さん、この子達のグループ名は何と書いてありますか?」

「え……? GHL28……だけど?」

いながらチラシの文字を読むと、桜ちゃんはまたも待ってましたと言わんばかりの表を浮かべて答える。

「GHLの略は合・法・ロ・リ・。つまり背が低く、見た目もい子を集めたグループなんですよ!」

「うわ何それ犯罪臭くないか……?」

なんか特定のターゲットを狙いすぎているような気がして悪寒が走るぜ……。

いくらでは無いものの、堂庭がこの子達に夢中になったらそれはそれでヤバイだろ。

「それでまずはお姉ちゃんにGHLを見せて、興味を持ったら化粧坂に移行してもらおうと……」

チラシを再度裏返しにしながら何かを目論む桜ちゃん。

うん、間違いない。彼はただ堂庭の為を思ってこの考えを打ち出した訳じゃない。

「……その化粧坂36ってグループが好きなんでしょ? 桜ちゃん」

「えへへ、バレちゃいました?」

やはりか……。

照れながら答えるも、その顔は満更でもなさそうだった。

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