《右目を無くした年ののお話》校舎裏のやり取り
『良いぞ!咲宮!』
バトンを持ってカーブを一位で曲がりきり
前に立っているクラスメイトを見る
一位と二位の差はほとんど無い
差し出された手へと向けて
バトンを振り下ろす─
「ここにいたか」
誰かの聲で目が覚める
どうやら寢てしまっていたらしい
「何だ、京極かどうした」
見上げると逆で顔が眩む
「どうしたじゃねぇよ、リレー終わって
戻ってみたらお前いなくて早坂も名代に聞いたら
どっか行ったっていうから探しに來たんだよ」
「そうだったのか、で、どうだった?」
と、聞くと
ピースサインをして
「余裕!」
と、笑顔で言った
「そうか、良かったじゃないか」
と、立ち上がりながら言う
「応援って言うのは凄いよな
応援してくれる人が多かったから勝ったも同然だ」
と、京極が思い出すかのように話す
「じゃあ、負けた人はどんなに聲が大きくても
応援が足りなかったのかよ」
「そんな事は…」
「ま、一位おめでとう」
「…」
そして、春斗は手を振りながら
またどこかへと歩いていった
小説家の作詞
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