《であり男でもある私は復讐をしていきます》2話 會いたかった人
殘酷描寫が多々あります。
足にまだ刺さったままの剣。
意識すると心臓の鼓に合わせて激痛が全に走る。
しくだけで気が狂いそうな痛みだった。けれど、それを我慢し剣を引き抜く。
「ーーーーーーーーっ!?」
先ほどの蹴りや激痛なんかとは比べものにならない。ひどい痛みだった。
命の危険をじたが尋常じゃないほど震えている。
痛みのせいで視界が明滅を繰り返し、遠のく意識を何とか保ち、剣を引き抜いた。
絶対に、あいつらに復讐をしてやる。
その思いを強くに抱き、よろよろと立ち上がる。
ない力を使ってまみれの剣を摑み、魔寄せの魔法を破壊した。
鈍い音と共に怪しくっていたそれはほのを失う。
あっけなく壊れたそれを見て、ばたりと倒れた。
 
もうをかす気も無くなる。
まさか自分がこんな風に死ぬとは思わなかった。
魔法さえ使えればしは抵抗できるかもしれないがそれすらもできない。
そもそもここに生息している魔は鍛錬を積んだ騎士が數人がかりでやっと倒せる程度だからどのみち死んでしまうか。
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常に優秀であろうとしていたためか親からもされず、友達などいない私にはこんな死に方がお似合いなのかもしれない。
どんなに毆られても流れなかった涙が頬を伝った。
魔寄せは壊したが、魔はそこらにいるのですぐに私は見つかってしまう。
食獣のような魔がこちらに向かってきている。
蟲のような鳥の立つ魔じゃないことにし安心した。
死を覚悟して目を瞑る。
酷く痛い足もこれで平気になる。
脳裏によぎるのは今までの思い出。
王太子の婚約者という重りを背負ってずっと生きてきて、楽しいことなどなかった。
つまらない人生だった。
そう思っていた矢先、1人の顔が脳裏に浮かぶ。
そうだ、全てがつまらないわけではなかった。
忘れていた自分に苛立ちすら覚える。
彼がいた。
唯一の私の理解者の彼が。
あと一度だけ會いたかった。
もう死ぬ自分には葉わない願いだけど。
目を瞑ってまあまあたったのにいつまでたっても魔が襲ってこない。
殺すのであれば延ばさずに一思いにやってほしい。
どうなっているのかわからずうっすら目を開けるとそこにはエルデではなく隣國のスティーア帝國のマントを著た1人の騎士が立っている。
今度は大きく目を見開いた。
夢でも見ているのかもしれない。
現実がなく、ぼーっと見ている私を辺りにいる魔を一掃した騎士がこちらを見て悲しそうに言う。
「シトラ!!」
癖のあるテノールボイスが優しく私の名前を呼ぶ。
私のことを稱で呼ぶ人は1人しかいない。まさか、會いたいと願っていた人がここに來るとは思わなかった。
涙でぐちゃぐちゃであろう顔が嬉し涙でまた濡れ始めた。
「ディルク…」
「しっかりしろ!」
そう言って彼は私を抱き寄せ傷口を抑える。
「何で…ここ…いるの…」
もうしっかりと話す気力もない。
本當な飛びつきたいほど嬉しかったのに。
「親に呼ばれスティーアに戻っていた時お前の噂を聞いてすぐに戻ってきた。しかしもう追放されたと聞いて馬でここまできてお前を探していた」
彼、ディルク・ソレイユ ・デュラハント。
私の1つ上で、隣國スティーア帝國次期魔法騎士団団長で勉學も魔法も完璧というハイスペック人間だ。
そして私の唯一の理解者。
私の怪我を見てライルは「あの馬鹿どもか…」と呟いた。
アルザック達を指しているのだろう。
自分に向けられているものでないとしてもがすくむような殺気を彼からじる。
しかし、ディルクが自分のことのように怒ってくれることが嬉しかった。
震える手でディルクの頬をるとこちらと目が合う。
ぼやけていてよく見えないが、深い海のような青とアメジストのような紫の瞳に銀にる髪。
とても安心できた。
足の痛みも、しは和らいだ気がする。
「…俺はお前に言わなければいけないことがある」
そう言うディルクの聲はし焦っているが真剣そのものだった。
「お前のことをしてる」
突然の事に、が固まる。
足の痛みなんて忘れるくらいに。
婚約者でもなく、人でもないのにしているは早すぎだろう。
彼の表がほぼわからないのが悔しい。
だけど、もう気にしてられない。
答える返事は1つしかないのだから。
「私も…してる…」
私がそういうと、彼は大きく目を見開いて、嬉しそうに笑ったように見える。
だんだんシャットアウトして來る視界。
死ぬ前に話したいことはたくさんあった。伝えたいことはたくさんあった。
彼の目を見て言った。
「生まれ変わったら…もう一回見つけて…くれる?」
ちゃんと聲に出ていたのかもわからない。
「もちろんだ」と言っているようにいた彼のを見て、安心した。
酷くいたかったはもう痛くない。
そして、視界が真っ暗になった。
ーーーーーーーーーー
「ん…?」
目を覚ますとそこは暗闇の世界だった。
がなく、先も見えない。現実とは思えなかった。
「なんでここにいるんだっけ…」
記憶が朦朧としている。
私、誰だっけ。
なんでここにいるんだっけ。
そこで思い出した。
私は死んだんだ。
ディルクのすぐそばで。
そう分かった瞬間、涙が溢れてくる。
もっと話したかった。
その聲を聞きたかった。
後悔しか出てこない。
聲を押し殺して泣いていると、目の前にハンカチを差し出される。
真っ白な布に金の繊細な刺繍が施されている。
「ありがとう…」
こんな綺麗なものを使うのは気がひけるが、せっかく差し出してくれたのだからとありがたく使わせてもらう。
涙をハンカチで拭い前を見る。
歪む視界がいくらかマシになったのでそのハンカチをくれた人の方向を見る。
そこには、自分より小さな白髪の男の子が立っていた。
年下らしいこの子にけないところは見せられない。そう思い、涙を飲み込む。
一回冷靜になるため深呼吸をした。
その時だ。
「シトラル・サランバール。伯爵令嬢で死因は刺殺。あってるね?」
男の子の口から出てくる言葉。
間違いなく私のことだった。
「「なんで名前が分かるの」って?」
私の疑問をそのまま男の子は口に出した。
「僕、神様だから」
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