今回はディルク目線です！

「…今なんて言った？」

俺の馴染であり側近のエッテリオの知らせを聞いて、驚愕した。

昨夜に1年のみ參加できる學園祭が行われている。それは知っていた。

しかしそこでシトラルが斷罪され、婚約破棄とともに今日死の森追放となる。と聞いて。

ディルク・ソレイユ・デュラハント

スティーア帝國が在り続けられるのは彼のおかげというほど戦爭で數々の戦歴を殘し、英雄と稱えられている現魔法騎士団団長のウォールド。それと、スティーア帝國の元第三王のカナレア。

その間に生まれた一人息子。

それが俺、ディルクだ。

その家柄のせいか、心ついた頃から寄ってくるは後を立たなかった。

騒がしいしうるさいし、金と顔しか頭にないそいつらはとにかく嫌いだった。

父は母と結婚をし、大層幸せそうだったが自分にはそんな出會いは起きないだろうと思っていた。

しかしエルデの國立魔學園に留學をした時、出會ったのだ。シトラに。

王太子妃でありながらそのことを鼻にかけず、平民の生徒とも公平に接し、勉學や魔に勵む姿は誰よりもしかった。

実際、優しく明るく自分に厳しく。

その姿にどんどん惹かれていった。

しかし、彼は王太子妃。あんなバカとは不安だが仮にも王族の許嫁を略奪するわけにもいかなかった。

手を引こうと決めていた。

ただ、もし婚約破棄なんてことがあれば攫ってしまおうともかに思っていた。

しかし、何故今なんだ。

「どうなさいますか、ディルク様」

「フィーを準備してくれ、今すぐ出る」

父さん達に呼び出された日になぜ決まってしまうんだ。心から思った。

急いで騎士服を著て、馬のフィーの元へ向かう。

著くと、フィーはこちらに頭を寄せてきたので軽くでて乗り込む。

それから、フィーを飛ばし、死の森へ一直線に向かった。

してやまない彼の元へ。

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必死に魔の森へ向かう。

り口まで行き、フィーを付近にあった宿へ預ける。

そこからは走りでシトラを探した。

數十分経った頃だろうか。

元々乗馬で減った力が限界寸前になった時、馬車が通っているを見かけた。

しかもその馬車はエルデの騎士団のもので、り口に向かっている。

それを見て、すぐに馬車と反対方向に進む。

生きているかもわからないしもういないかもしれない。

もういないなんて考えただけで今まで味わったことのない恐怖を覚えた。

でも、可能がある限り、諦められなかった。

なんとしてでも、見つけ出す。

「ーーーーーーーっ！？」

自分のものではない聲を押し殺した悲痛なびが聞こえてくる。

本當だそれを聞いた瞬間、がぞっと震えた。

彼の聲だ。

その聲が聞こえた方向へ疲れていたことも忘れて走り出す。

そしてあと數メートルの所で、その足は止まった。

淡いオレンジの髪も白の質素なワンピース赤く染まっている。

の海の中心にいる彼の周りには今にも飛びかかりそうな十數の魔達。

その時ほど、殺意がを支配したことはなかっただろう。

気がついたら彼を襲いかかっていた魔を剣を魔法で威力を増させてから切り裂き、本當に気づいたらもう周りには彼以外殘っていなかった。

剣を鞘に収め、後ろを振り返る。

その瞬間、眼中に広がった景に目を見張った。

そのだらけ、傷だらけの彼は想像以上に酷い狀態だった。

涙でぐちゃぐちゃな顔は見ていてが切り裂けそうなほどだった。

「シトラ！！」

悲しみと怒りが溢れたを振り絞って聲を出した。

「ディルク…」

そう答えた彼の元にすぐに駆け寄って、酷い傷口を抑える。

「しっかりしろ！」

「なんで…ここに…いるの…」

か弱い聲で彼はそういった。

「親に呼ばれスティーアに戻っていた時お前の噂を聞いてすぐに戻ってきた。しかしもう追放されたと聞いて馬でここまできてお前を探していた」

焦りでし早口になる。

シトラのを見ると、無數のアザや切り傷がある。

そして、一番ひどいのは足の刺し傷だ。

「あの馬鹿どもか…」

魔だったら真っ先に急所を狙う。

ごく稀に痛ぶってくる魔もいるが、今討伐したなかでは見なかった。

あいつらがやったのか。

その瞬間、あいつらと自分への怒りが激しい波の様に全に広がった。

殺意に飲み込まれ、あたりを凍りつかせそうになっている時、彼の手が俺の頬をれた。

力なく震えていて、無に泣きたくなった。

その手をたどって下を見るとシトラと目が合う。

涙まみれな淡いアイオライトの瞳は、しかった。

「…俺はお前に言わなければいけないことがある」

怒りはまだあるが、まだ伝えたいことを伝えたい人に伝えていない。 

もう、誰のものでもないのだから。

シトラから流れ出たはあたりを赤く染めあげている。

これは助からない。

シトラの目からはだんだんは無くなってきていた。

もう、會えなくなるのなら。

お前を俺のものにしたかった。

「お前のことをしてる」

せめて、これだけは言わせてほしい。

両思いでなくてもいいから、想わせてほしい。

これからも。

「私も…しているわ…」

返ってきた言葉に目を見開いた。

顔は無理をして笑っていて、今にも失ってしまいそうだった。

なんで、最後にしか伝えられなかったのだろう。

「生まれ変わったら…もう1回見つけて…くれる？」

生まれ変わりや神なんて信じてない。

だけど、今は心から願った。助けてくれ、と。

「當たり前だ……だから…行かないでくれ…」

そう、言い終わる前にシトラは安心した様に目を閉じた。

深い夜空の様なスミレの瞳はもう見ることができないのか。

「シトラ…」

どれだけそう呼んでも、彼は目を開けなかった。

穏やかな笑みを浮かべて、眠っている様な彼のはどんどん冷えていく。

靜かに頬に雫が伝った。