《天才の天災》後悔

結界の外に出たことで復活したミネアが寮に戻った時には、レンの姿はなかった。

おそらく決勝戦に行ったのだろう。

ミネア達には適わないが、桜花という男も

中々の実力者というのが分かる。

靜かな部屋の中でミネアは1人、涙を零しそうになるのを堪える。

ふと、後ろに気配をじ、剣を構えて振り向く。

「誰だい?」

「わ、私です!

...その、ミネアさん、落ち込んでるんじゃないかと思いまして...」

「なんだ、ココかい...

別に落ち込んでやしないさ...

ボスに勝つなんて考えたこともなかったしね...」

「...でも、泣いてましたよね...?」

「見てたのかい?ほんと、なんでもないんだよ...」

「そう、ですか...」

「...」

そのまま會話が無くなり、數分が経過した。

「披戦決勝戦、桜花元帥VSディーオ!まもなく開戦だぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

ワァァァァァ

開戦を伝える司會と観客の歓聲が聞こえてきた。

「勝てないのは、わかってたさ...

服を切れたことも、嬉しかった...

あたしはボスの所有になっても、

竜人族であることに変わりはないのさ...」

「どういうことですか?」

「竜人族ってのは本來、プライドの高さや傲慢さってのが必ずあるんだよ。

服を切った攻撃なんか、思ってた以上にボスに通用したからねぇ...

心の中でいけるかもなんて考えちまった。その油斷でボスに後ろを取られて、

為すなくあっさり敗北...

命を捨てる覚悟はあったのに、

ボスが指を外してから1分と引きばすことも出來なかった...

ボスが、初めてあたしらに期待してくれたのに...」

話しながら、自然と涙がこぼれ落ちる。

ミネア達所有にとってレンに期待されている狀況なんてのはそうそうない。

せっかくのチャンスをものに出來なかった自分の無力さに腹が立つ。

「...ココ。」

「はい?」

「...ありがとね。」

「え!わ、私何も...ただ、お話を聞いていただけですが...」

「そうだけどさ。おかげでし気が楽になったよ。」

「......ミネアさん...」

「...なんだい?」

「私は戦いは全然なので、さっきの試合がどうだったのかは分かりません。

ですが、もしミネアさんが自分の負けが

無様だったと思うのでしたら、

ご主人様に直接聞いてみてはいかがですか?」

「そ、そんなの無理に決まってるじゃないか!?」

「悩んでいても何もわかりませんし、

ご主人様は思っていることを偽ったりせず、話してくれると思いますが...?」

(それに、ミネアさんと戦ってる時のご主人様は何だか今までより嬉しそうでしたし...)

「そりゃあ...そうだけど...」

「もしご主人様がミネアさんの言う油斷について気にされていれば、

きちんと謝ればいいじゃないですか!

きっと許してくれますよ!ね!」

「でも...」

「さ!そうと決まれば、ご主人様の試合を見に行きましょう!ほら!」

「ちょっ!ココ!」

ココはミネアの手を引いて観客席に走り出す。

「......あら?ミネアさん、試合ってもう始まっていますよね?」

「あぁ、そのはずだよ。」

決勝戦が始まる前に部屋まで屆いた歓聲は噓のように靜まり返り、

フィールドには桜花とディーオが向かい合っていた。

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