あれから1年。

俺の魔力を制する訓練は壯絶さを極めていた。

朝起きて夜寢るまで、魔法の事以外考えることが許されない生活。

座學で魔法の基礎知識を學んだり、教とのマンツーマンの実技を行なったりと休憩する時間すら與えられていない。

ちなみに教というのはアリシアの事ではない。

彼の魔力量では俺を教える事が出來ないという訳で特別にその人から魔法を教わる事になったのだ。

その教の名は『イリス』

俺のを作った張本人であり、アリシアの主人。そしてこの天界に住まう神の一柱。

俺の人生で神に何かを教わるなんて思ってもみなかった。しかし今、現実に俺と組手を行なっている。

組手と言ってもメインは支援魔法で強化を行うことにあり、の會得が目的な訳ではない。

「どうした！お前の力はそんなものか！？それでは世界など救えぬぞ！」

「くっ、まだまだー！！」

しかしこの神、恐ろしく強い。

見た目は小柄でく見えるのだが、いざ練習が始まると中々に容赦が無い。

イリス様曰く、強化は魔力作を覚える上で最も効率が良いのだそうだ。

例えばパンチを放つ時、腕と拳に魔力を集中して注ぎ込むと強いパンチが打てるのかと言うとそうではなく、パンチを打つ時に使用する筋全てにその筋を使う分だけそれぞれ魔力を注がないとパンチの強化にはならないという訳だ。

つまり強化を行う為にはの心得と微妙な魔力作が必要になるという訳だ。

の心得については覚えるとなると1年やそこらでは話にならない。

武道を志す人が何十年もかけてに刻み込んで行くものだからだ。

流石にそんな時間はない為、今回は特別サービスという事でイリス様からその知識を貰う事が出來た。

そしてこの1年、ほぼ全ての時間をこの魔力作の特訓をする時間にあてているという訳だ。

実はイリス様と俺との間には魔力量の差はあまり無いらしい。気持ちイリス様の方が多いくらいの違いだ。

しかし組手では大人が子供を遇らうかの様に簡単に負かされてしまう。

つまり魔力作の上手い下手でここまで差が出來てしまうという訳だ。

そんな訳で今日も、この神の容赦無い一撃が俺の顔面にクリーヒットするのであった。