《學校一のオタクは死神でした。》第78話 閑楽付喪

*第78話 閑楽付喪*

翌日。

修學旅行中の學生の起床は早い。學業が無い代わりの代償と考えれば簡単に耐えることの出來ることである。

しかしながら、やはり眠い。よく眠れていないからだ。

獣神対策として、眠りを淺くしていたのもその理由の一つであるが、昨日はんな意味で々あり過ぎたことが主な原因である。

半分寢ながら、味のよくわからない朝食を食べ、バスの中では完全に睡狀態。

無論冷房対策として上著と膝掛けを著用していた。

教員達もうつらうつらしているのが見て取れる。

まぁ、彼らの場合は、昨晩の心霊験で恐怖のあまり寢れなかったのだろうが…

因みに、非科學的現象を目撃していない華菜は別の理由で眠れなかったのか、すやすや眠っている。

バスに揺られること約30分。

場所は今夜寢泊まりするホテルである。

著く直前に隣に座っていた桜姬に揺り起こされ起床。

30分間寢るだけでも大分力は回復した。足りない力は魔力を注ぎ込み補充して準備萬端。

何やら片腕が妙に生暖かく、服にシワが寄ったり、唾がついていたりするが、その辺は桜姬の腕にしっぺし続ければ自首するだろう。

はてさて、これからの予定だが。我ら一星學園は3日間のあいだ自由行が設けられている。

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3日間の自由行とは言っても、修學旅行前にどんなコースで行くか、何を目的として行くのか、そのプランを先生に発表し、合格を得。さらに1日ごとのレポートをホテルに帰ってから各擔任に提出しなければならない。

條件としては、各自ホテルから出発し、夕方6時までには帰還すること。

1日2箇所以上の重要文化財を見て回ること。

そのレポートを出すこと。

グループで活しても良し。

県外に出向くことも許可する。

以上が主な條件である。

その他は羽をばし過ぎて悪行を行わないとか、マナーを忘れるなというものだった。

それを考えても、やはり自由なプランである。

県外に出向いても良いとか、凄くルーズだと思う。

しかしながら、新にとっては好都合である。

予定通りプランを提出してから直ぐにレポートを書くために京都で一足先に書き終えることは容易いことだった。

つまり、新は今日から3日間、どこに居ようが何してようが、悪行マナーを遵守するならば自由という事になる。うへ。

と、し喜んでみるものの獣神が現れるかもしれない今、油斷はなわけで余り喜べない。結局気張ることには変わらないということである。トホホ…。

そんなことを考えている間、時間は過ぎ、自由行が開始された。

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* * *

「………………それで…ここは何処なの?」

「“山”。」

山道を歩き始めて約5分。會長さんから発せられた問に見たままの事を簡潔に答えた。

その前に、學校での宣言通り會長さんは、本當に新に付いてきたのである。

「…それは見たらわかるわよ。」

と會長さんはし疲れ気味に言った。

「“付喪の庭”。」

「……へー、これが噂の閑楽付喪さんのお庭………は?」

暫く納得したような口ぶりだったが、すぐさま疑問に切り替えられた。

「え?ここどう見ても山なんだけど…」

「うん。この山は“付喪の敷地”。山にる前に柵があっただろ?この山丸々一個が付喪の私有地。

この山道を登った先が付喪の住む屋敷がある。」

「………………………………。」

無言になった會長さんの顔をちらりと見ると複雑な表をしていた。

どうせ、有名な焼き師だからこれくらい當たり前なのかな?でも、流石に広すぎるよね?神様にとっては普通なのかな?とか考えているのだろう。

(※當たりです。)

しかしながら、この山道。

山道という割には道はしっかりしておらず、結構急である。

山林に道となる場所だけ草を刈り取ったような雑な道で、階段などは無く、ひたすら坂が続くのみ。

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周りは鳥が囀り、木の葉が囁く。近くに水でも流れているのか、川のせせらぎも聞こえる。

山道を歩き始めて約10分。

付喪の屋敷が見えた。

「……………………………………………………。」

それを目にした會長さんは呆然としていた。

何故ならば、家の前にひかれた小川には真っ赤な橋がかけられ、丁寧に手れされた松が植えられ、橋の先には古風かつ豪華な屋敷が目にる。

そして、その奧にその全てをぶち壊すかのように建つ“現代的直方型建造”が目にったからだ。

會長さんが呆然とするなか、新は無言で歩み、橋を渡る。それに気づいた會長さんがし慌てて追いかける。

橋を渡り終えた瞬間。

屋敷の前に一人の男が現れた。

會長さんがいつの間に!?と驚いている。しかし、その驚きは、彼が幽霊の如く現れたことに対してなのか、彼の“全包帯を巻き付けた姿”のせいなのかは分からない。

顔は全面を隠すように包帯が巻かれ、前髪がダラりと垂らし、後ろは髪を一つ結びにしてある。

顔に巻き付けられた包帯は首にまで巻かれ、、腕、足。文字通り全に巻かれている。

服は薄汚い甚平に、袖が垂れぬよう、帯、と言うより包帯で縛ってある。

腰には鈴付きの瓢簞がぶら下がっている。

改めて思うが、なんとも奇怪な恰好である。

「よお。久しぶりだな。元気してた?」

「…ん。」

「そうか、それは何より。」

「……。」

「あー、隣にいるのは會長さん。々やらかして俺達の存在は知ってる。だからそう警戒するな。」

「…ん。」

「ほんでもって、こいつが閑楽付喪。ご存知の通り、焼き師で付喪神だ。」

「は、はぁ。」

「ん?どうした?」

「………………………さっきから、この人“ん”しか言ってないわよね?」

「基本的に話さないからな。」

「へ、へぇ〜…」

「ん!」

付喪は、私が閑楽付喪であるとでも言いたげにを張った。

それを見た新と會長さんは苦笑する。

「あー、そうそう。はい。これ土産。東バナナ。お茶とはそんなに合わないかもしれないが…まぁ、結構味い。」

そう言って、持ってきていた包を渡す。

東バナナとはふわふわのバナナ型のスポンジの中にバナナのジャムがっているというシンプルなお菓子だ。東京からの土産としては有名である。

「ん。」

それをけ取ると、その包を掲げ、くるくると回り出した。

喜んでいるらしい。

それから、ついて來いとでも言いたげに大で屋敷へと歩き出した。

その後を新と會長さんはついて行き、屋敷へと案される。

屋敷の外見は、昔でいう寢殿造に近く、ロの字型で和風。艶のある赤い屋が特徴的だ。

屋敷の中は基本的に外見通りの造りだ。

しかし、廊下の棚に焼きが飾ってあったり、昔懐かしの黒電話が設置されているにも関わらず、最新の固定電話が設置されていたり、西洋の絵畫と水墨畫が並んで壁に掛けてあったりする。

他にも般若の面や、ガラス細工。トーテムポールのミニチュアに、ハニワ。レイピアに日本刀。鎧に甲冑なんかもあったりする。

文化が混在しているのにも関わらず、違和を覚えないのが不思議だ。ツッコもうと思えばツッコめるのだが、それも付喪らしいと思えてツッコミがれられない。

それにしても、隨分とものが多い。

所狹しと置いてあるという訳では無いのだが、兎に角、が多い。

そんな廊下をしばらく進み、座敷に著いた。

座敷は樹木を切りにしたような年の見える機に、座布団が2つ置かれており、壁には能面がかけられ、廊下の様子とは違い、和で統一されていた。

それと、座敷は屋敷の中央に位置する庭と襖1枚で繋がっている。庭には錦鯉が泳ぎ、鹿威しの設置してある池や松が生えている。

完全に和風と思いきや、何故か鹿威しに水を與えているのがミニチュアマーライオンの口で転けそうになる。

付喪が座布団の上に座り、新は會長さんに座布団を譲って地べたに座る。會長さんはし照れながら座敷に座る。

付喪がそれに気づいたのか、近くにあった襖を指差し、クイッと指を曲げた。

すると、襖が勝手に開き、中から1枚の座布団が尺取蟲のようなきをしながら歩いてきた。その座布団が襖から出終わると、また勝手に襖が閉じる。

出てきた座布団はそのまま前進し、新の隣までやってくる。

「ありがとう。」

「ん。」

新はやってきた座布団の上に座る。

すると、今度は先程ってきた扉がノックされ『失禮します。』という聲とともに扉が開く。

その先には黃い著を著た、おカッパ娘が湯のみと急須の乗ったお盆を持って立っていた。

「お飲みをお持ちしました。」

「ん。」

「ご無沙汰しております。死神様。」

「おう。久しぶりだな“座敷子”。し背がびたか?」

「あまり変わってないと思います。」

「そうか?」

と挨拶をわす。

その間にも、彼は丁寧に湯のみにお茶を注ぐ。

きっちり3人分注ぎ終わった後、ふと、彼が首を傾げる。

「……死神様のお隣に座ってらっしゃるのは。もしかして、“toモガァッ!?」

「あー、うん。家の學校の會長さん。神だってことも知ってるから余計な事言わないでね〜」

新は満面の笑みをしながら座敷子の口を塞ぎ、無言の圧力をかける。

座敷子がし震えながらコクリと頷くと新は口から手を離した。

やっと開放された座敷子が大きく息を吸い、呼吸を整える。

「ほら、“メリー”もお茶菓子を出し…あれ?」

「ん?どうした?」

「いえ、先程までお茶菓子を持ってついてきたのですが、メリーが居なくなってしまいまして…」

「メリー?」

會長さんがキョトンとした顔をしたその時…

『ウウゥ〜〜〜〜〜〜〜(パトカーのサイレン)‼︎

キキッ(ブレーキの音)‼︎

バカッ(ドアの開く音)‼︎

ガッガッガッガッ(砂利を踏む音)…

「もしもし?」

「著メロかい‼︎⁉︎」』

ピッ

「もしもし?」

「何その著メロ!?」

會長さんのツッコミをスルーして電話に出る。

『もしもし。わたしメリーさん。今橋の前にいるの。』プツッ

電話が切れた。

すると再び。

『ウウゥ〜〜〜〜〜〜〜(パトカーのサイレン)‼︎

キキッ(ブレーキの音)‼︎

バカッ(ドアの開く音)‼︎

ガッガッガッガッ(砂利を踏む音)…

「もしもし?」

「著メロかい‼︎⁉︎」』

ピッ

「もしもし?」

「だから何その著メロ!?!?」

『もしもし。わたしメリーさん。今玄関の前にいるの。』プツッ

また切れた。

すると再び。

『ウウゥ〜〜〜〜〜〜〜(パトカーのサイレン)‼︎

キキッ(ブレーキの音)‼︎

バカッ(ドアの開く音)‼︎

ガッガッガッガッ(砂利を踏む音)…

「もしもし?」

「著メロかい‼︎⁉︎」』

ピッ

「もしもし?」

「もういいってば!!その著メロ!!!!」

『もしもし。わたしメリーさん。今廊下を歩いてるの。』プツッ

また切られた。

すると再び…

『ウウゥ〜〜〜〜〜〜〜(パトカーのサイレン)‼︎

キキッ(ブレーキの音)‼︎

バカッ(ドアの開く音)‼︎

ガッガッガッガッ(砂利を踏む音)…

「もしもし?」

「著メロかい‼︎⁉︎」』

ピッ

「もしもし?」

「新○劇どんだけ好きなのよ!?!?!?!?」

『もしもし。わたしメリーさん。今貴方のいる部屋の扉の前niガチャ』

「あ、本當だ。」

音もなく移し扉を開けた新の前に、淡いピンクと白のドレスにを包んだ甘ロリ娘が立っていた。

「さ、最後までやらせるの!!」

ぷんぷんと甘ロリ娘が起こってみせる。

「いや、最後までいったら殺されるじゃん。まぁ、どう頑張っても殺せないだろうけど。」

「うぅ〜っ!!」と唸りながら地団駄を踏む。

「こら!!メリー!!遊んでないで早くお茶菓子を出しなさい。」

「うぅ〜。分かってるの〜…ってあれ?無いの。」

あれあれ?と自分の周りをくるくる回りながら探すメリー。目が回ったのかしだけふらつくが、支えてやる。

「何処かに置いてきたのか?何処まで覚えてる?」

新がそう問いかけると、メリーは小さな両手で顳かみを抑えながら考えてますポーズをとる。

「う〜ん…玄関まで持ってたのは覚えているの。」

「そうか。じゃあ、そこに置いてきたんじゃないか?」

「う〜ん…あっ!玄関を開ける時に地面に置いたの!!取ってくるの!!」

くるりと回り玄関に駆け出そうとするメリーの襟を摘み上げ、それを止める。

「そうか。だけどその必要は無いぞ。」

「ふにゅ?」とクテンっと首を傾げる。

「“もう取ってきた”。」

新の片手に、いつの間にメリーが取ってくるはずだったお茶菓子のった籠が乗っていた。

メリーは目をゴシゴシとってみるが、やはり、そこにあるのは取ってこようとしたお茶菓子である。

「ほい。」と新から籠が渡され、それをけ取ると、ゆっくりと地面に降ろされた。

「…ありがとうなの?」

「どういたしまして。」

お禮を言うと、メリーはトコトコ小走りに部屋にったメリーは機の上に籠を置いた。

それとほぼ同時に新は座布団の上に座った。というか、“座っていた”。

瞬間移をした新に會長さん、付喪、座敷子にメリーはギョッとする。

「い、今どうやったの?」

恐る恐る會長さんは新に尋ねる。

「ん?あー、前に1回話したことあると思うんだけどさ、俺の最高時速。」

「最高時速…?あー、めちゃくちゃ早いっていう…」

「うん。“力を抑えていてもマッハ36km”ってやつ。」

新がそう言うと、會長さんは頭を抱えながら思い出したと言った。

「あったわねそんな話…。それで、それと何の関係が?」

「関係も何も、その“10倍”近くをコントロールできるようになっただけだ。」

「は、はぁ?10倍ねぇ〜………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………え?10倍?」

「うん。10倍。」

「じゅじゅじゅじゅじゅじゅじゅっ、10倍!?!?!?」

「うん。“マッハ360km”。」

「そんな速度出したらソニックブームが起こるわよ!!」

「あー、うん。なんかね?起こんないのそれが。」

「は、はぁ?」

「それくらい速度出すと勝手にが粒子レベルで“炎化”するんだよ。完全無形で流に影響を及ぼさないから、衝撃波も出なければ、ソニックブームなんか起こらない。以上。」

「そんな無茶苦茶な理論をそんな簡潔に…」

「あー、それと。これはまだ付喪にも言ってなかったんだけど。」

「ん?」

付喪がキョトンと首を傾げる。

「俺の魔力。“悪魔デビル型じゃない”らしい。“新型”だってよ。」

「……ん。…………………………んん!?!?!?!?!?!?!?」

の見えない顔で付喪がビックリ仰天する。

「まぁ、その話を含めて今年の4月からの出來事を話すからさ、途中で口挾まずに最後まで聞いてくれや。」

そう言って、新は今日まで起こった事、現在の狀況を全て話した。

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