《ロシアンルーレットで異世界へ行ったら頭脳派の魔法使いになっていた件【三部作】》21-182.まだ手はある

「エルテ、まだ手はある」

「え?」

「俺のマナオドを使えばいい。青の珠ドゥームを使えばマナを集められるのだろう。それで神魔法を発するんだ」

エルテは、そんな事あり得ないと首を振る。

「浄化魔法を発させる程のマナをマナオドで賄うなんて、そんな事をしたら命に危険が……」

「死なない程度に使ってくれればいい。それで発できなければ尾を巻いて逃げるさ。でも、逃げるにしても、ソラリス達を置いていく訳にはいかない。最低でも足止めをしないとな」

ヒロにはこの世界の基準を遙かに超えるマナオドを持っている。それはエルテも認めている。迷宮でも魔法発できるマナオドを持つ人として探し當てたのがヒロなのだ。事実、ヒロはフォーの迷宮にってから、自分のマナオドを使って魔法発していた。ヒロは、炎魔法とバリアを張る以外の魔法が使えないだけなのだ。

ならば、自マナオドの一部をエルテに譲渡して、彼に神魔法を発して貰えばいい。ヒロは合理的な選択だと考えていた。

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「でも……」

ヒロの言葉にエルテは目を伏せた。

「マナが足りなくて、浄化魔法の発が難しいようなら、さっきみたいに別の魔法に切り替えるのでも構わない。浄化できなくても、時間稼ぎの魔法くらいはあるんだろう?」

「……えぇ、不可視インビジブルの魔法を使えば……」

しかし、エルテはそう答えたままかなった。何かを考えているようだ。

「迷っている暇はない。エルテ!」

決然としたヒロの聲に、エルテは一瞬びくりとしたが、顔を上げブルーの瞳でヒロを見つめた。

「分かりました。だけどヒロさん、條件があります。マナオドを抜き取る量も、発する魔法も私が判斷します。それを約束してください」

「十分だ。それで頼む」

ヒロの承諾を得たエルテは懐からアクアマリンの水晶玉を取り出した。マナオドを測ることの出來るアイテムだ。

「こちらに手を……」

ヒロは、エルテの指示に従って水晶玉に手を乗せた。途端に水晶玉が真紅のを放つ。

「天々駆ける、天の使い、リーとセレスの名において命ず……」

エルテが詠唱を始める。エルテの目の前に空気が渦を巻き、やがて小さな青いが生まれた。

「青い珠ドゥーム!」

ヒロの元に青い球が浮かんでいた。その珠はヒロのマナオドを吸い込みどんどん大きくなる。それに反比例して、ヒロがれている水晶玉が放つルビーのは小さくなっていく。

水晶玉の輝きが殆ど失せた頃、青い珠は人ひとりを優に包み込むくらいの大きさになった。エルテは水晶玉のが無くなったのを見屆けると、パチンと指を鳴らして、青い珠ドゥームを解除する。

「大地母神リーファの慈悲と天空神エルフィルのよ、此処に臨まん。大いなる神の力を地に示し、迷える魂に救いを與えたまえ。全てを清め、天に導く白き路を示した給へ……」

エルテが目を閉じ、浄化魔法の詠唱を始める。彼が白く輝き出す。

「あらゆる命の源。源の。全ての全て……」

エルテが両手を死霊アンデッドに向けると、神魔法を発する。

「聖なるセイクリッド・リュース!」

エルテの手の平から、白いが流れだした。は螺旋を描きながら拡散し、祭壇のあるホール全を包み込む。あらゆる邪悪を押し流すの洪水は、死霊アンデッドを飲み込んだ。眩いはやがて柱となって立ち登っていく。あたかも間欠泉が湯を吹き上げるように死霊アンデッド達の魂を天に送り屆けた。

「ヒロさん、うまくいきましたわ」

エルテが橫を見やると、ヒロが片膝をついていた。肩で息をしている。

「ヒロさん!」

エルテがしゃがみ込んで介抱しようとした手をヒロはそっと払った。

「やったか、エルテ。大丈夫、生きてるよ。ちょっと力が抜けただけだ。し休めばける。それよりソラリス達を……」

「ヒロ。あたいは平気さ」

いつの間にかソラリスが傍に立っていた。カラスマルを杖のように床に突き立ててはいたが、さっきまでの苦しそうな表は消えていた。

「大丈夫なのか。ソラリス」

「何とかね。でも、ミスリルチェインメイルが無かったらヤバかったよ」

ソラリスは服の脇腹をたくしあげて見せる。白銀のリングは、所々千切れ、いくつかが欠損していた。

「また、カダッタを儲けさせちまうな」

ソラリスは軽口を叩きながらも、その視線はロンボクとミカキーノに向けられていた。彼ソラリスなりに心配なのだろう。

ヒロがリムに二人の様子を尋ねる前に、リムから返事があった。

「ヒロ様。お二人とも大丈夫です。気絶しているだけです」

ヒロとソラリス、エルテが二人の所に行った時には、ロンボクは意識を回復していた。

「モンスターは?」

「全て撃退した。もう心配ない」

「そうですか。救援隊が救援されていては世話ないですね。けない話です」

「いや、ロンボク、君の幻影魔法でガーゴイルパッサーシュバイを牽制してくれたからだよ。それにしても、マナがない迷宮なのによく発できたな」

「それは、杖の……」

そう言って、ロンボクが何かを探すように辺りに視線をやったが、リムが床に落ちていた杖を拾って差し出した。

「これですか?」

「ありがとう。これはロッケンロキから借りた魔法の杖でしてね。極量のマナでも魔法発ができる魔法マジックアイテムです。といっても、幻影や不可視インビジブルといったあまりマナを使わない魔法にしか使いませんけどね」

ロンボクは、ヒロに支えられながらゆっくりと上半を起こした。立ち上がろうとするが、エルテにまだ無理しないでと止められる。ミカキーノを心配したロンボクだが、ヒロに大丈夫だと告げられ目線を向ける。

ミカキーノは起きあがって胡座を掻き、頭を振っていた。ソラリスがその顔を覗き込むと、ばつが悪そうに目を逸らしたが、ソラリスが差し出した手を取って立ち上がる。頑丈な男だ。ミカキーノは自分の剣を探して拾い上げたが、ポキリと折れた刀をしげしげと眺める。ミカキーノは、安はこれだからなと一言吐き捨てると、腰の鞘に納めた。

ヒロはその場でし休憩を取ろうといった。特に外傷はないとはいえ、マナオドを抜かれたのだ。正直ぐったりとしていた。その場で車座になって座る。

リムはパーティメンバ一人一人に回復魔法を掛け始めた。エルテは他の方に、と斷ったのだが、リムは首を振ってエルテにも回復魔法を掛ける。それにしても、此処はマナを集め難い迷宮の中だ。それも大魔法を発した後で殆ど空になったこのホールで、リムはどうして魔法発できるのだろう。それとも霊魔法は、マナを必要としないのだろうか。

ヒロはそんな事をぼんやりと考えていたが、それ以上考えるのを止めた。今は回復を第一に考えるべきだ。まだこの迷宮を出た訳ではないのだ。

ヒロ達は、水筒に殘った清冽水マルマを分け合った。一口ずつではあったが、冷たい水がを通り、皆の活力をし蘇らせた。

――よし、これならける。

そう思ったヒロに手が差しべられた。見上げるとソラリスが片目を瞑ってニヤリとしていた。

「ヒロ、そろそろお寶を拝みに行こうぜ」

「そうだな」

ヒロ達は立ち上がり、寶箱のある奧の部屋に向かった。

 

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