《ロシアンルーレットで異世界へ行ったら頭脳派の魔法使いになっていた件【三部作】》25-199.報酬提案

「では、こうしませんか? ヒロ、貴方は大學に行きたいといっていましたね。先日、配達クエストの報酬として、後見人を紹介できないかと要求していたかと思います。それを報酬に充てるというのは?」

「推薦してくれる人が見つかったということかい?」

ヒロは思わずを乗り出していた。前回のシャロームからの配達クエストでは、推薦人は見つからなかったと、報酬の銀貨を上乗せしたのだ。推薦人を紹介しろなどと、もとより無茶な要求だと思っていたから、差程、気にも止めていなかった。それをここで出してくるとは……。

だがそれならそれで、その人に會って、推薦して貰えるよう渉しなくてはならない。シャロームの口利きがあるとはいえ、果たしてどんな人なのか。報を聞き出す必要があるなとヒロは思った。

シャロームは、テーブルのカップに手をばし、茶を飲んだ。そして、ポットから新しい茶を注いでから、ゆっくりと言った。

「えぇ、貴方の目の前に」

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シャロームがにこりと微笑む。

突然のシャロームの申し出に、ヒロは即座に返答できなかった。シャローム本人が推薦人になるというのか。ならば、互いに知った仲だ。ヒロとしては申し分ない推薦人だ。

「君が推薦人になってくれるのか?」

「これでも商売柄、大學とも付き合いがありましてね。領主殿ウォーデン卿の書籍を探すのを手伝ったり、隣國から書を運び込んでくるのも手掛けているのですよ。これまで學生の後見人をしたことはありませんが、多分何とかなるでしょう。ですが、一応これは出來高払いとさせてください」

ヒロは、ソラリスとリムに視線を送る。それでいいかと了解を取るつもりだったのだが、ヒロがそう尋ねる前に彼達は賛意を示した。

ヒロがそれでいいと答える。シャロームがそれを確認した後、エルテに向かって口を開いた。

「殘りの足りない部分は、エルテに肩代わりして貰いたいのですが……」

「あぁ、そういうことなのね。シャル」

エルテは、一瞬、言っている意味が分からないとでもいいたげな顔をしたが、直ぐにシャロームの意図を理解したのか、口元を綻ばせながら大きく頷いた。

「ヒロ、大學への願書はエルテが代筆します。そして、エルテを貴方の専屬の代理人マネージャーとして契約していただきたい。代理人マネージャー報酬は今回のクエスト報酬で相殺。契約期限は貴方が卒業するまで。それでどうです?」

フォーの迷宮での小悪鬼騎士ゴブリンロード討伐は、クエスト対象外だった。もとより報酬は期待していなかったし、當座の生活費なら、先日換金した金貨がある。ヒロが大學に行くための障害は、推薦人と代理人マネージャーをどう見つけるかということだったのだ。それが一気に解決する。ただ……。

「俺としては、申し分ない條件だが……。エルテ、君はそれでいいのか? 黃金水晶の問題もあるし、俺が大學を卒業する迄なんていっても、いつ卒業できるか分からない。俺は助かるが、君は契約に拘束される。不本意ではないのか?」

ウオバルの魔法騎士大學は後見人がいなければ學できないが、卒業はもっと難しい。毎年の卒業生は一人か二人。學生達の中でも圧倒的に実力がなければならない。高き壁だ。ヒロはロンボクからけていた説明を思い出していた。卒業するまで専屬代理人マネージャーになるということは、それまで自由にけなくなるということだ。エルテにとっては非常に不利な契約ではないかとヒロは思った。

しかし、エルテは靜かに首を振ってくすりと笑った。

「いいえ。黃金水晶の問題も殘り二つのレーベの寶の探索もまずは報収集が必要ですわ。私は、もう黒の不可ブラック・アンタッチャブルとして、アンダーグラウンドで活できないですし、その積もりもありません。変に裏でくよりも、代理人マネージャーとして活した方が報は集めやすいと思いますわ」

エルテの答えは明快だった。今後、レーベの寶の謎を追うにしても報が必要になることは間違いない。

「ただし、條件がありますわ」

「なんだい?」

エルテはヒロの問いに直ぐには答えず、カップを手に取り、ゆっくりとお茶を口に含んだ。

「私をヒロさんのパーティアラニス・エマのメンバーとして加えて下さい。パーティのメンバーであれば、私も一緒に活できますから。これからヒロさんには、小悪鬼騎士ゴブリンロードを討伐したパーティのリーダーということで、沢山のクエストがくる筈ですわ。私達であれば、大抵のクエストは問題なくこなせます。その大量のクエストの中から、黃金水晶や殘りのレーベの寶探索に繋がりそうなクエストを私が選別してヒロさんに提示する。私をヒロさんのパーティに加えることと、クエストを査する権利。條件はこの二つですわ」

エルテが自分のパーティに加わる。ヒロにとって予想外の條件だった。もちろん良い方の。黒の不可ブラック・アンタッチャブルがパーティにるということは、ウオバルの冒険者の中でも隨一の実力者を迎えるということだ。それに冒険者仲間では別格とされるソラリスもいる。パーティの構も、魔法使いの自分に、盜賊兼剣士のソラリス、神のエルテとバランスが取れている。フォーの迷宮での戦闘でパーティとして十分に機能することも分かった。ヒロにとって、これ以上むべくもない條件といえた。

「それに……」

エルテがしだけ悪戯っぽく笑った。

「ヒロさんには、リムさんもいます。古代語、それも宮廷古代語まで読めるリムさんがいれば、古文書の解読も難しくない。ヒロさんのパーティにらない理由はありませんわ」

エルテもヒロのパーティにることに十分のメリットをじているようだ。強いて言えば、ヒロの代理人マネージャーになるということで行に多の制約が出るくらいだ。だがそれも、ウオバルを拠點にする限りは大した問題じゃない。シャロームの提案はウィンーウィンの提案だとヒロは思った。

「そうか。エルテがそういってくれるなら、俺としては大歓迎だ」

「エルテさん。ようこそ」

「あんたの実力はフォーの迷宮で見せて貰った。あんたがってくれるなら、大學のパーティにも負けやしないさ。よろしくな、エルテ」

ヒロが確認するまでもなく、リムとソラリスはエルテを仲間として迎えれると答えた。

シャロームが口元を綻ばせる。

「では、決まりですね。私がヒロの元引人になります。學式は五日後、審査は學式前々日まで付していますから、明日願書を出せばギリギリ間に合います。エルテ、願書をお願いできますか?」

「ええ、問題ありませんわ」

「審査は難しいのかい? 學出來る見込みはどれくらいあるんだ?」

ヒロは思わず尋ねていた。願書による審査だけとは聞いているが、それでも気になった。

「ヒロさんでしたら問題ありませんわ。小悪鬼騎士ゴブリンロードを討伐した人を學させないことってあり得ませんもの」

エルテは笑ってけた。

「あいにくヒロ達がフォーの迷宮にいっている間に、卒業式は終わってしまいました。ですが、學式が終わる迄、街はお祭りですよ。ヒロ、ウオバルは初めてと言ってましたね。楽しんでいって下さい」

シャロームの言葉はどこか弾んでいた。

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