《【書籍化決定】前世で両親にされなかった俺、転生先で溺されましたが実家は沒落貴族でした! ~ハズレと評されたスキル『超用貧乏』で全てを覆し大賢者と呼ばれるまで~》第四十話 ラースとリューゼ

「各自時間を五分使って戦うんだ。どこのペアから行ってもいいぞ!」

「それじゃアタシからやるわ。ウルカ、いいでしょ?」

「う、うん!」

ヘレナとウルカの男ペアからスタートする模擬戦。俺はリューゼの近くで棒を握り、戦いを見守りつつ、リューゼをチラリと見る。

『ルール』宣言からこいつは俺に突っかからなくなった。というより、まったく話しかけてこなくなったのだ。俺としては願ったりだけど、時折俺を見ていることがあるので、何か考えているのかもしれない。

「……」

とまあこんなじである。別に睨みつけてくるとかそう言う嫌なじではないんだけど、じっと見られるとやはり気になる。

「あ、當たらない……!?」

「ふふふー、踴り子のきはこういうところにも活かされるのよ? 隙あり!」

「うわああ!」

おお、ヘレナはふわふわしたきでウルカを翻弄し、べちゃべちゃにしていく。全真っ赤になったウルカを見てティグレ先生が手を差しながら割ってる。

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「もうウルカは満創痍だ。ヘレナの勝ちだな」

「へへへー!」

「くっそお……」

「ウルカ君どんまいー! あとちょっとだったよー」

「そ、そう?」

ノーラに勵まされでれっとするウルカと、上機嫌のヘレナが退場して次はノーラとマキナだ。これはなかなかの好カードではないだろうか? 俺達とトレーニングをしていたノーラに脳筋マキナ。【カイザーナックル】のスキルは使わないだろうけど、聖騎士部にるくらいだ、近接戦闘にはきっと自信があるに違いない。

「よろしくおねがいしますー」

「フフフ、私と當たるなんてついてないわね。ウルカ君のようになることを先に謝っておくわ!」

そして――

「そこまで!」

「やったー、ラース君やったよ! ちゃんと普通に戦ったよー」

「あ、ああ……見てたよ」

「マジか……」

ジャックが無殘に真っ青にされたマキナを見てごくりとを鳴らす。確かに普通に戦っていたよノーラ……だけど全部の攻撃を回避した後、反撃でフルボッコは一方的すぎる。

「うわあああああん……」

「泣くなマキナ、相手が悪かったんだ……」

「なんで【護】のスキルしかなくてあんなにぽわぽわしているのに當たらないのよ!」

「えー、ラース君褒めてよー」

俺がマキナを助けて起こしていると、ノーラが口を尖らせていた。それは可哀想だろう……マキナも決して悪くないきで、フェイントもかけていたし踏み込みも鋭い。しかし、五年前からトレーニングを続けている俺達には及ばないといったところだ。

というより、この學院にるまでああいったトレーニングをしている子は誰もいなかったようで勉學もしだけ俺達が理解が早かったりする。

「それじゃ次は?」

「……俺達だ」

「……」

そう言ってリューゼが立ち上がり前に立つ。まあこういうのは早い方がいいかと、俺は青い棒を手に持ちリューゼの前に立つ。

「本気で行くからな……!」

「いいよ」

「ふたりとも頑張って!」

「始め!」

ルシエールの言葉と同時に先生が合図を出し、俺とリューゼが棒を構える。ここは俺から攻撃することはしないで様子見――

「たあああああ!」

しようと思う前にリューゼが仕掛けてきた。まあこいつの格からいってそうなる気はしていたけどさ!

べちゃん!

「うわ!?」

「ふん!」

べちゃん!

思ったよりスライムが飛び散り気持ち悪い!? リューゼの攻撃自はまるで素人と変わらないのでけきるのは容易だ。五分守り切る方向で行こうか考えたその時だ。

「なんで攻撃してこねぇ! ふざけてるのか!」

「……」

防戦一方の俺に激昂するが答える必要はないなと俺は棒をける。何故か泣きそうな顔でリューゼはんだ。

「くそ……! 反撃もできないのかよ貧乏人ーー!」

「……!」

べちゃり……

「あ……」

「先生、俺の負けです。終わりでいいです」

そう言ってリューゼに背を向けてみんなのところへ戻ろうと歩き出す。みんなの表はそれぞれ違うけど、気まずい空気が流れていた。俺は『ルール』に則るだけなので何のも無い。

「リューゼ、お前……!」

と、ティグレ先生が口を開いたところで、リューゼが慌てて俺の肩を摑んで自分の方へ向かせてきた。

「なんだい? もう終わったし次に変わらないと」

「お……」

「お?」

リューゼが苦し気に何かを言おうとしたので俺は訝しむ。すると、リューゼは予想外の言葉を口にする。

「お前はやっぱり『貧乏人』って俺が言うから無視してたんだな……」

「気づいたんだ」

なるほど、視線の意味は俺がどうして無視しているのか考えていたのか。だけどそれに気づいたからってどうなるものでもない。肩を摑んでいた手を振りほどこうと手をばすと、スッと肩から手が消え文字通り肩かしを食らう。

そして――

「ごめん!」

「え?」

リューゼが頭を下げて謝ってきた! 俺は突然のことに間抜けた聲を出し、リューゼの後頭部を呆然と見つめる。困していると、リューゼが顔を上げて俺に言う。

「俺、先生が家庭訪問に來た時言われたんだ。俺の魔法は落ちこぼれだって……それと貧乏人ってお前に言うのは同じだってよ……」

「……」

そんなことがあったのか……先生は貧乏人発言に怒りを覚えていたからあり得る話だ。でも家庭訪問ならブラオが一緒に居たはずだからこいつが謝る考えに至るとは思えないんだけど……

だけど、リューゼは続けて言う。

「先生に自分で考えろって言われて考えたんだ。俺はレアスキルを持っていても魔法は言われた通り落ちこぼれ。もしお前がこれを知って、俺のことを落ちこぼれって言って來たら……多分、無視すると思った……。それに放課後、お前を追いかけていたけど本當にギルドに出りしているんだな。自分でお金を稼いで、家のために頑張ってるんだろ? だからごめん!」

……正直、驚いた。

前世の弟が俺を蔑むことになったのは8割がた両親のせいだ。それくらい親の影響は強い。だから先生に何か言われたとしてもブラオが押し込めると思っていた。

だけどこいつは十歳ながらも自分で考えて、それが悪いことだと判斷したのだ。

「うむ、よく言ったリューゼ」

橫で腕組みをする先生がにやりと笑う。この人は本當に子供のことを考えているんだな。何か過去にあったのだろうか? それはともかく、ポカーンとしているクラスメイトを放置するわけにはいかないので俺はリューゼを連れてし離れたところへ移する。

「先生! 授業をやっててください! 俺はリューゼと話をします」

「わかった。何かあったら呼べよ!」

そう言って離れると先生はサムズアップをして見送ってくれた。慌てるリューゼと向き合い、俺は口を開いた。

「よく気が付いたね。先生も落ちこぼれは酷いと思うけど、リューゼ、君がじた嫌な気分を俺は『貧乏人』と言われる度にそうなっていたんだ」

「……マジでごめん」

「気づいたならいいよ、そうやって何が良くて何が悪いかをきちんと探っていけばみんなに嫌われたりしないからね。謝ってくれてありがとう、それじゃ戻ろうか」

俺はそれだけ言って戻ろうとすると、リューゼが俺に言う。

「な、なら、今日から俺と友達になってくれるか? もう絶対ラースを傷つけることは言わねぇ! それに俺、屋敷暮らしで友達と遊んだことなかったから……クラスみんなと友達になりたい。偉そうな態度もダメだろ? 父上になんか言われてもやめるよ。お前と一緒にギルドとか行ってみたいんだ」

最後は鼻の頭を掻きながら、落ちこぼれは嫌だしな、とぽつりと呟き、子共ながらの熱い想いできっと噓は言っていないと思う。

だけど俺は、リューゼへ言わなければならない、

「今のリューゼならみんな仲良くしてくれるはずだよ。俺はそう思うし、応援する」

「へへ、そうか! 良かったぜ……」

殘酷な言葉を、こいつに。

「だけど、俺はお前の友達にはなれない。ごめんな」

「え……」

俺はこいつの父親に復讐するのだ。友達になるわけには、いかない。

振り向きざまに見えたリューゼの唖然とした顔が目に焼き付いていた。

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