《【書籍化決定】前世で両親にされなかった俺、転生先で溺されましたが実家は沒落貴族でした! ~ハズレと評されたスキル『超用貧乏』で全てを覆し大賢者と呼ばれるまで~》第四十八話 もどかしい毎日

コンコン……

「誰かな? って構わないよ」

「失禮します。學院長」

「おや、ティグレ先生。ここへ來るとは珍しいな。聖騎士部の方はどうかね?」

オブリヴィオン學院の學院長、リブレが部屋へってきたティグレを歓迎する。一方、渋い顔をしたティグレが頭を下げ、口を開く。

「學院長、俺のクラスの生徒からこんな相談がありました――」

「ふむ……?」

ティグレはリューゼに聞いた話を學院長へ告げると、リブレもまた渋い顔で眉を顰める。領主がいる町ということでブラオのことは知っているが、詳細な人像は橫柄であるくらいしか認識が薄い。

そんな領主が前領主の息子を殺しかけ、さらに財産をかっさらっていたという事実は衝撃が大きかった。

「……リューゼ君は辛いだろうな」

「ええ。このままでは生活どころか神的に壊れてしまうのではないかと」

「そうだな……しかしこの學院に於いて、貴族や平民の垣は無いが、家庭や犯罪に関わる問題だときにくいか」

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「そうですね。學院長なら何かお知恵が出ないかと思いましてここへ。前領主の息子であるラースも何かしでかさないか心配です」

ティグレは真面目な顔でリブレにそう言うと、リブレは難しい顔で思案する。子供はくことがあるため、慎重にことを運ばねばならない。目下の問題點は、事を知っているラースの監視とリューゼのケアだろう。

「リューゼ君は父親についてはなんと?」

「ブラオさんが不正をしているのは許せないと。今の生活が無くなることには困していましたが、それよりも友達であるラースの兄を殺そうとしたことで傷ついているようです」

「そうか」

そう言ってリブレは顎に手をあて考え始めると、手元にあったカレンダーが目にった。

「來月は収穫祭か。今年はこの町に國王様と王子が激勵にいらっしゃるんだったな」

「そういえばそうでしたね。一年ごとに各領主が居る町に視察に來られる國王様には頭が下がります。……そうなることさら、この問題は重いですね……」

ティグレが腕を組むと、リブレがカレンダーを見て目を細める。

「……そうか……晩餐がある……。……そこで……協力者と目撃者……できれば証拠を……」

「學院長?」

「ティグレ先生、この件、私が預かろう。君はラース君とリューゼ君から目を離さないでくれるかな?」

「そりゃもちろんですけど、なにか思いつかれたのですか?」

「上手くいくかは運次第だけど、來月の収穫祭に決著がつけられるかもしれない。家庭と政治の問題だから學院としては本來けない。慎重に進める必要があるが――」

そう言って和な顔を険しくし、顔の前で両手を組んでリブレはティグレへ自の考えを口にした。

◆ ◇ ◆

――病院での一件から數日。

平常通り生活をしながら、どこから手を付けるべきをずっと考えていた。

兄さんやノーラに隠れて病院を張るのは難しい上にギルドの仕事も忙しい。それと、目標は絞られてきたけど、何をするべきなのかが定まらないからだ。他にもブラオの協力者がいるかもしれないというのもある。

「あの醫者が怪しいけどインビジブルで隠れ侵しても、俺の魔力だと一時間程度しか持たないからなあ……」

古代魔法でも特にインビジブルは魔力負擔が大きい。姿を消すとんでもない魔法でやりたい放題できる反というわけだろうか?

それはともかくあの家は調べたい。レッツェルには裏の顔が必ずあるはずだと俺の勘が告げている。そこでひとつ思い當たる言葉を思い出した。

「そういえばブラオが病院に行っていたってルシエラとリューゼが言っていたっけ? その時を狙ってブラオに付いていけば何かわかるかも?」

……うん、これはいいかもしれない。

共謀しているなら、本當の診察だとしても何かボロを出してくれる期待もある。

だけど、目下の問題はというと。

「明日はなんて言って一人になろうか……」

クラスメイトとティグレ先生から逃れることだった。マキナは部活があるので問題ないけど、クーデリカがギルドへってきて、兄さんとノーラも一緒に遊びたいと言ってくるので無下にできない俺はなかなか一人になれなかった。

先生は帰り際に良く引き止められたり、世間話をしながらギルドに用があると付いてくる。なので、ひとりになる時間は結構ない。

だけど、指針が決まった今、俺はそれらから逃れないといけない。

というわけで放課後になり、俺はさっそくカバンを手にして魔法を使う。

「<インビジブル>」

「あ、あれ!? ラース君が居ないよ!?」

「本當だー。カバンもないやー」

限界時間があるもののやはりこれしかないと、インビジブルを使って壁伝いにクラスから出ようとする。

「あたっ!? ウルカ、気をつけろよー?」

「え、なにが? 僕、ここにいるけど」

「あれ? 今誰かとぶつかったんだけど……」

……ノーラ達を見ながら歩いていたらジャックとぶつかってしまった。ちょうどクラスから出るとき、兄さんとルシエラがってきてすれ違う。ごめんよ、兄さん。

「あれ? ラースは? リューゼもいないわね」

「んー。気が付いたらいなかったー。ギルドかな? デダイト君、いってみよー」

「そうだね、僕もギルドに興味出て來たし」

よしよし、これでギルドとは別方向にある領主の屋敷に向えると走って學院を出たところで魔法を解除し、ブラオの監視に向かう。

「……!?」

すると途中で、ブラオとリューゼ親子を乗せた馬車が俺の橫を通り過ぎていくのを見かけた。リューゼと目が合ったから間違いない。

「もしかして俺って運がいいかも……!」

恐らく方角からして行先は病院だ。俺は馬車を追うため走り出す。ここから病院まではそれほど遠くないので、すぐに到著すると、馬車が病院の前に止まっており、ふたりが降りてくるのが見えた。

「……初日からこれはありがたいね。さて、魔力量からするとあまり長くもたないから――」

曲がり角で様子を見ていた俺は驚愕することになる。まさかの人がここに現れたからだ。

「おや、奇遇ですねブラオさん」

「き、貴様……擔任の……!?」

そう、ティグレ先生が病院へる直前、ブラオに聲をかけていたのだ。

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