《【書籍化決定】前世で両親にされなかった俺、転生先で溺されましたが実家は沒落貴族でした! ~ハズレと評されたスキル『超用貧乏』で全てを覆し大賢者と呼ばれるまで~》第五十四話 運命の収穫祭⑤

「シャッ!」

「國王様を守れ!」

「ハッ!」

キィン! ガキン!

「きゃあああ!?」

レッツェルがテーブルを蹴飛ばして足場を確保すると、メスを國王様達に投げ始める。すぐに場は騒然となり、國王とフリューゲルさんにオルデン王子は二人の騎士を盾として出口へと向かう。

俺もニーナと先生、リューゼにんだ。

「先生はニーナとリューゼを連れて外へ!」

「わかったわ、すぐ戻るからねえ!」

「お、俺も殘るって!?」

だが――

「ああ……!?」

「こっちは通行止めですね! 先生、皆殺しですか?」

メイドがドアを開けると、そこには白を著たがたたずんでいた。あいつは病院の付に居た……!

「もちろんだよイルミ。僕に彼らの恐怖の顔をみせてくれないかな?」

「お安い用ですよ……ほい!」

「させない……! <アクアバレット>!」

「おっと……! 魔法使いがいるのは聞いていませんよ?」

「くっく、ちょっと計畫がね。そこは任せたよ」

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間一髪、扉に手をかけていたメイドさんにびた兇刃はベルナ先生の魔法で弾かれ死を逃れた。あっちも気になるけど、騎士と先生が居れば大丈夫のはずだ!

「のらりくらりと……!」

「影を斬っているみたいだ!?」

「くっく、騎士の質も落ちましたかね……? ヒュッ!」

「うぐ……鎧の隙間を!?」

あいつ騎士ふたり相手にして涼しい顔をしているのか!? おかしなやつだと思っていたけど、まさか戦闘までできるなんてね。だけど、それで怯むほどやわなトレーニングはしていない。俺はダガーをカバンから抜き、魔法を撃つ構えのまま突撃する!

「レッツェル、すぐにケリをつけてやる! ごめんなさい騎士さん、離れてください! <ハイドロストリーム>!」

「げぇ!? ラースのやつあんなのまで使えるのかよ……!?」

「うおお……!?」

先生の得意とする水系魔法で、先生が扱える最強の魔法をレッツエルへ叩き込む。渦を巻いて水流がレッツェルを包み込んだ。

「くっくっく! 凄い魔法だねラース君! 【用貧乏】と聞いていたけど、さっきの【鑑定】といい、じつは違うのかな?」

「あってるよ! 努力しただけだ! 騎士さん<フレイムランス>」

水流に飲み込まれ高く舞い上がるレッツェル。水圧はの自由を奪い締め上げる。そこへ炎系の中でも上位に位置するらしい子供のぐらいある炎の槍を投げつける。

「くっく……!」

ゴォン!

「うわ!?」

「先生!? このクソ、どきなさいよ!」

「行かせないって言っているでしょう? <ファイア>!」

三人がかりでもまだ終わっていないのか、あの看護師もタダモノじゃないな……! チラリと目を背けた瞬間、

「ラース! どおりゃああ!」

キィン!

「邪魔をしないでいただきたいですね……!」

「行かせるか!」

俺に迫っていたレッツェルに、リューゼがフォークを投げつけ意識を逸らしてくれた。矛先を変えたので俺は立ちはだかりレッツェルが腰から抜いたナイフと切り結ぶ。

ギィン! ギギギ……!

「真っ向勝負で僕に勝とうなんて甘いですね?」

「くっ……うあ!?」

フッと、つばぜり合いをしていたダガーが緩み、たたらを踏んだところで痛みが走る。い、今、何回斬られた!? 足を止めるな俺! 殺されるぞ……!

「ああああ!」

「助太刀するぞ!」

ガッ! キン! ブォン!

がむしゃらにダガーを振るうも、最初の數度けきられただけで後は空振りを繰り返す。反撃をしてこないのは騎士さんがけん制と攻撃を絡めてくれているのが大きい。

「剣はまあまあ……やはり魔法が得意ですかね?」

「まあね……! <ファイア>!」

「む!」

カン! ボン!

ダガーをわざとしょぼい攻撃にしてけさせてから至近距離でファイアを発させる。さすがにこの距離ならいくらかダメージはけているだろうと睨む。

「ふう……面白い。実に面白いですよラース君! 君をここで殺すのは惜しい……君以外を殺して、絶する顔をみたくなりましたよ!」

「その前にお前を倒せばいいだけだ……! <フレイムランス>!」

「では、本気で行きましょうか」

「え!?」

レッツェルから笑みが消え、次の瞬間――

「あ? え?」

「リューゼ!?」

オルデン王子のび聲が聞こえ、振り返ると、無防備に立っていたリューゼの首からが噴き出していた。

「まずは一人ですねえ」

「貴様!」

「おっと。ほら、貧乏人と蔑んでいた悪友が死にますよ、良かったですね!」

レッツェルが騎士を相手に笑いながら何かを言っているが俺には聞こえなかった。一気にリューゼのところまで駆け、抱き起す。

「リューゼ!」

「わ、わりぃ……やられちまったぜ……ぜ、全然見えなかった……」

「俺もだよ! くそ、頸脈を一撃で……腐っても醫者か! <ヒーリング>!」

ができる前に塞げば何とかなるはずだ! 俺はガチガチと震える口を必死に開けてヒーリングを唱える。

「こ、これは助からねぇ……無駄な、魔力は使うな……あいつを……」

「喋んなぁぁ! <ヒーリング><ヒーリング><ヒーリング><ヒーリング>!!!」

まだか!? 魔力が底をついてもいい! 【超用貧乏】なら使い続けていれば強力になるんだろ!

「お、おお! リューゼ……!」

「ち、父上……ラースのお父さんと……な、何があったのは知らねぇが……罪もない子供の人殺しは……ダメだ……ガキの俺でもわかることを……」

「お、おい、ローエンの息子! わ、私が悪かった! 頼む! リューゼだけは……あいつに顔向けが出來ん……」

「勝手なことを……! 兄さんを殺されかけた父さんたちが知ったらそう言うだろうね! ……だけど助ける、こいつは……俺の友達だ!」

「ラース……」

「す、すごい……ラース、何者なんだ……」

青くなる顔に笑みを浮かべて目を瞑るリューゼ。オルデン王子が何かつぶやいていたけど構っていられない。まだだ……!

「いい顔ですよ、ラース君」

「な!?」

「うぐ……」

俺の耳元でレッツエルの聲が聞こえた瞬間、隣で見ていたブラオのぐらりと崩れ、倒れる。

「親子一緒じゃないとねえ? さて、そろそろメインディッシュと行きますか」

「ヒッ!?」

「おのれ、狂人が國王の私を狙うというのか……!」

「いえいえ、王子だけですよ。子を守り切れなかった國王様……一生苦しむ姿を見せてくださいね?」

「く、狂っている……!?」

まずい、俺の告白どころの騒ぎじゃなくなった! 國王様とオルデン王子は守らないと!

でもどうやって……ベルナ先生は手一杯、ニーナは戦えない。騎士ふたりではこいつに勝てない……。俺がリューゼを見捨てれば……

「そんなことできるか! くそおお! どうすりゃいいんだぁぁ!」

「くっく、いい聲だ! 王子、さようなら……!」

「うあああ!?」

ダメか!? この騒ぎを知っている人はいない。相談しなかったことが裏目に出た……俺や國王様は助かっても、他の人間は……ニーナとベルナ先生、リューゼは助からない……

俺が諦めかけたその時だった――

「なによあんた!? うあ!?」

「イルミ? ……ぬう!」

あと一足でオルデン王子に迫るところ、一振りの大剣がそれを遮った。後退するレッツェルと王子の前にスーツ姿の男が割ってった。

「よう、ヤブ醫者。ウチの生徒が世話になっているみてぇだな?」

「お前は……」

怒りが混じった靜かな聲。その人は――

「ティグレ先生!?」

「おう!」

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