《【書籍化決定】前世で両親にされなかった俺、転生先で溺されましたが実家は沒落貴族でした! ~ハズレと評されたスキル『超用貧乏』で全てを覆し大賢者と呼ばれるまで~》第百九話 ヘレナのダンス

「それじゃ、行きますか」

「あは、よろしく~♪ サージュちゃんはアタシが抱えていくわね」

晝食後、ティグレ先生とベルナ先生のホームルームをし挾んでからそれぞれの練習の為にクラスを出ていき、俺とヘレナ、そして魔法の練習をしたいと言うヨグスが最後になった。

ノーラはルシエールと詰め放題競技の練習のためルシエールの家へと向かい、ジャックとクーデリカはロープ引きの競技の練習で巨木があるベルナ先生と一緒に家へ。

リューゼはウルカ、マキナを引き連れて昨日と同じく戦闘競技の練習……かと思いきや、パン食い競爭のため走り込みをするのだとか。ウルカも妨害徒競走に出るから走り込みは無駄にならない。

そんなじでクラスメイトが頑張っている中、俺は右手でファイアを停滯させて魔力を消費しながら、ヨグスとともにサージュをでるヘレナについていく。

この難しいと言われる使い方は俺と兄さん、ノーラとリューゼ、それとヨグスができたりするんだけど、ヘレナももうしでできそうなのだとか。

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「相変わらず用だよねラースは。ヘレナ、どこで練習をやるんだい?」

「ホールよ♪ あそこなら汚れないし、戦闘訓練をやっている人もないから」

ヨグスが尋ねるとそんな返事が返ってきた。學式以來、久しぶりにるなと思い、やってきたホール。開かれたり口を通ると中は熱気に包まれていた。

<ほう、これは凄いな。やる気に満ちている>

「うん、上級生もみんな勝つために頑張って練習しているんだよ」

學校の行事というものは年を経るとなかなか參加し無くなるもので、中學生くらいになると気恥ずかしくなって、特に男子生徒は斜に構えることが多いもの。だけど、この學院はそんなこともなく、みんな一生懸命だ。

「それじゃ、アタシの踴りを見てもらっていい? あっちに上級生の人も踴っているから參考にね♪」

「なるほど、それも考慮しているんだ」

「そうそう。アタシ一人で踴っていても、これがいいのかどうか判斷がつかないでしょう? だから誰かに見てもらいたかったのよ」

「それならお安い用さ。いつでもいいよ」

<うむ。大人しくしているぞ>

サージュが小さい腕を組み、あぐらをかいている俺の足の間に挾まりうんうんと頷く。小さいので目立たないのはいいことだ。隣にヨグスが座ると、ヘレナが向かい合って立つ。

「それじゃ、よろしくぅ♪」

ぺこりとお辭儀をしてから踴り始める。蓄音機なんてものが無い世界なので演奏もない狀況でヘレナは踴る。表はそれこそ必死で、天のような布を振りながら踴るというより舞うと言った方がしっくりくる。

そして褐に浮かぶ汗が彼の努力の証を語る。俺も努力をする人間なので、踴りにかけている必死さはよく分かるつもりだ。

だけど何か一つ足りない気がするのは気のせいか……? それでも俺とヨグスが見惚れていると、演目の流れが終わったのか最後にスッと手をのところに持っていきお辭儀をした。

<良かったぞ!>

ぱちぱちとサージュが手を叩き、俺とヨグスも続けて拍手をする。ヘレナが腰かけながらにこりと微笑む。

「ありがと♪ んぐ……ぷは、踴った後はが渇くわあ」

「あれだけ激しいきをすればね。で、傍から見てどうだったかだけど――」

「あ、待って待って!」

俺が想を言おうとするとヘレナに止められ、俺とヨグスは顔を見合わせて首を傾げる。するとヘレナは上級生の方を見て言う。

「……あっちの踴り、それとあの子の踴りを見てから聞かせてくれるかしら」

上級生は長が高いのですぐわかる。あの子というのはどうも同級生のようで、聖騎士部の顧問であるサムウェル先生がついていて、他にもいる。

「あ、うん。それはいいけど」

「? 何かあるのかな?」

<まあ見てみようではないか>

「そうねえ、見ればわかるわよ♪」

サージュがもっともな意見を言い、俺達は見える位置まで移する。まずは上級生、そしてCクラスの子の演技を見る。

見ればわかるわとヘレナが言った意味が近くまで行くとハッキリわかる。

<むう……これは……>

「……」

「なるほどね……」

「ね♪」

俺達の驚愕ぶりにヘレナが苦笑し、元の場所に戻ってからヘレナが口を開く。その顔は困ったような、諦めているかのような顔だ。

「どうだった?」

「……正直、上級生の演技はかなり良かった。キレもあったし」

「僕もそう思う。上級生なら仕方がない……とは言え、Cクラスのあの子は言い訳ができないかも……」

「ヨグス君の言う通りね。アタシの踴りよりも凄く輝いて見えるのよ。踴りの質は負けていないと思うんだけど」

そこで俺は気になったことを口にする。ヘレナの【ダンシングマスター】が何も持っていない人より劣るだろうか?

「彼のスキルも踴りに関することなのかな?」

「えっと、そこまでは知らないのよねえ。でも、多分近いんじゃないかしら?」

そう言ってCクラスの子を再び見ると、また踴り始めていた。そこで俺はふと、あることに気づく。

「……ヘレナ、踴っていて楽しい?」

「え?」

瞬間、びくっとを揺らすヘレナ。ビンゴだろうか? 上級生とCクラスの子との違い……それは表だ。

確かにヘレナは真剣そのもので踴りも上手いんだけど楽しそうではないのだ。必死だと俺は言ったけど、それは踴りに対してでなく、別の何かなのではないかと、二人を見た後に思った。

「ラース、どういうこと?」

「そのままの意味さヨグス。ヘレナは真面目に取り組んでいるけど、んでやっているじはしないのかなって」

俺がヨグスにそう返すと、ヘレナはため息を吐いてから笑顔で口を開く。

「やっぱりそう見える? ふう……聞いて良かったわ……。あ、でも勘違いしないでよ? んでやってないってわけじゃないんだから! でも、お母さんがね――」

ヘレナは珍しく……いや、初めて自分のことを話し始める。

そう言えばギルド部が始まるまではほとんど話したこと無かったことを思い出す。そんな彼が口にしたことは、子供なら通るであろう親とのすれ違いだった。

「――アタシはスキルのおかげもあるけど、踴りは好きなのよ。アタシの自己紹介覚えてる? 歌って踴れるようになりたいって。でも、お母さんは舞臺の方をさせたいらしいの。……お母さんも南の國からこっちに來て、それなりに踴りで稼いでいたけど、華やかな場所にはいけなかったからアンタは、ってね」

「なるほど。お母さんの夢をヘレナに託したというわけか」

「そういうこと。でも、なーんか違うのよね……別にお母さんの言うことが嫌ってわけじゃないんだけど【ダンシングマスター】と合ってないって言うか、ねえ?」

と、肩を竦めてそう言われる。

うーん、向こうの世界でもあったけど、アイドルを目指していたお母さんみたいなじなのかな? 幸いヘレナはお母さんを嫌っているわけじゃないけど、どうもしっくりこないのだとか。

「【ダンシングマスター】か……ダンス……いけるかな……?」

「なになに?」

一つ、アイデアが浮かんだ。

さきほど頭に浮かんだ「アイドル」という部分だけど、もしかしたら使えるかもしれない?

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