《【書籍化決定】前世で両親にされなかった俺、転生先で溺されましたが実家は沒落貴族でした! ~ハズレと評されたスキル『超用貧乏』で全てを覆し大賢者と呼ばれるまで~》第百十三話 対抗戦

「頑張ってねー!」

「任せたよ。このメンバーなら……ジャック以外は余裕かな?」

ノーラが笑顔で見送ってくれ、ヨグスがにやりと笑いながら言う。ジャックは鼻の下をこすりながらヨグスの肩を叩いて返す。

「言うじゃねぇかヨグス、まあ見てろって!」

「他のクラスも強そうだね。でもラース達なら勝てるよ!」

ウルカがぐっとこぶしを握って俺達にウインクしてきたので頷いてからテントを出る。ここはパン食い競爭と違い一年生から順番に行っていく。俺達がグラウンドに出ると、バスレー先生の聲が聞こえてくる。

[さあ、二種目目はお待ちかねの戦闘競技! 出てきましたよ一年坊主、荒ぶるお子様、ザ・ビースト! 勝利の栄冠は誰の手に!]

[トーナメント方式ですが、力を溫存しておくのも重要ですねぇ。今年のルールはどんなじなんですか?]

[はい、お答えしましょう! 今年は勝ち抜きではなく一対一。先に三人勝った方が勝利となります。なので、強い子一人で勝ち進む方法は使えませんね]

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[では、個人の強さに期待したいですねぇ♪ みんな頑張ってねぇ!]

ベルナ先生の満面の笑顔で俺達の頬が緩む。Aクラスだけに言っているわけではないんだけどね。ベルナ先生は人だから観客席からも生徒からも嘆の聲が上がっていた。バスレー先生は嫉妬の表だ。

「くじ引きをするぞー!」

「あ、ティグレ先生が審判?」

「おう。まあ、ゆっくりやるつもりもないから、分けてやるけどな」

そう言って笑うティグレ先生がルールの説明をしてくれる。トーナメント形式なら確かにすぐ終わるけど、々な人と戦いたかったなというのは正直な想だ。

「まず分かっているだろうが魔法はダメだからな? しかしスキルは使っていい。間違えるなよ。で、このくじ引きも結構重要でな、運が悪けりゃ三回カチ當たる。だけど、運が良けりゃ一クラスは一回、全力で戦うことができるってわけだな。運も味方につければ勝ちやすくなるってこった」

「分かりました! では早速やりましょう!」

「おう、いい気合いだぞBクラス! ラースは不満そうだな?」

「うーん、折角だし総當たりで全クラスと戦いたかったなって」

「「「え!?」」」

え?

俺の言葉に他クラスはおろか、リューゼすらも驚いている。おかしなこと言ったっけ? そう思っていると、他クラスの子が冷や汗をかきながら俺の肩に手を置いて言う。

「……えっと、Aクラスのラース君だっけ? マジで言ってんの……?」

「え、うん。どんなスキルで來るとか楽しみじゃない?」

すると、別のの子から呆れた聲が聞こえてくる。

「戦闘狂……ティグレ先生のクラスだけのことはあるわね。そういえばお兄さんが三年生よね? めちゃくちゃ強いって噂だけど、あなたもそうなのね?」

「どうかな? それは戦ってみて確かめてみてよ」

「……」

俺の言葉に顔を引きつらせていたが、噓偽りない俺の気持ちだ。リューゼやマキナも引いていたけど、すぐに笑いだす。

「……はは、まああのクソ醫者を倒せるラースだから言えることだな! うし、クジ引こうぜ!」

「そうね! ラース君は大將で決まりよ」

「ええ、今でこそ戦いたいって言ったのに……」

「あはは、ラース君は多分戦うとみんな降參するんじゃないかなあ……」

クーデリカが困り笑いをする。そして俺のオーダーは通らなかった。さらに言うとジャックの運により、一回戦は抜けである。そこへティグレ先生が俺の頭に手を乗せて苦笑しながら言う。

「……ま、これはデモンストレーションみたいなもんだ。最後の無差別戦闘競技があるだろ? あれは総當たりで固定だ。ここは腕試しみたいなもんだ」

聞けば最後の無差別の指標にする、いわゆる対策を立てるための戦いなんだそうだ。観察眼を鍛えるためだとかなんとか。納得しにくいところではあるけど、最後もエントリーしているのでここは我慢しようか。

Bクラス VS Eクラス

Cクラス VS Dクラス

そして、BかEのどっちか勝った方と俺達Aクラスが戦う。Aクラスはグラウンドの端へ移し、他の四クラスは先生達が引いた白線のと外へ。戦う子だけが殘ったじだ。ちなみに白線の外に出ると負け扱いになる。

さて、もちろん見るのはBとEの戦闘で、次に戦う相手の観察は基本中の基本である。

「Bクラスのやつ、ハンマーか? 珍しい武だな」

リューゼが腕組みをしながら眉を潛める。確かにハンマーを武とする人はギルドにも居ない。やはり取り回しがいい剣が使いやすいからだ。

「それでもアレを選ぶってことはスキルと関係するのかな」

「対してDクラスは槍ね。私だったら嫌がるところだけど、お手並み拝見ってとこかしら?」

「わたしの【金剛力】ならハンマーとか戦鎚はかなり有利だけど、どうかなあ?」

マキナとクーデリカの意見が出たところで戦闘が開始される。先制は――

[さあ、始まりました一年の戦い! 先制は先生! なんちゃって! ……それはともかく、我がEクラス頑張れー! いつもの調子でー!]

恥ずかしかったらしい。バスレー先生は顔を赤くして取り繕うように自クラスの応援を始める。そこへBクラスの援護にベルナ先生が解説をする。

[Bクラスのイワノフ君、槍の間合いに一気にったわね。ハンマーも柄が長いけど、槍に比べれば全然だものねぇ。あ、でもEクラスのガース君も対応を始めたわね]

ベルナ先生の言う通り、ガース君がハンマーを捌きながら後ろに下がり白線ギリギリで右に避ける。お互い木で出來ている武だから軽いと言うのはあるけど、イワノフ君は即座に反応し……ハンマーを地面に叩きつけた。

「なんだ? なんで地面を?」

俺も思ったことをリューゼがぼそりと言った時、その理由が分かる。地面にハンマーが叩きつけられた時、ガース君のがぐらりと揺れた。バランスを崩したのだ。

「な!?」

「僕のスキルは【振波】って言うんだ、まだ自分の近くを揺らすだけだけどね! もらったよ!」

「うぐ……!? くそ!」

フルスイングでハンマーを振りぬくイワノフ君。左腕にヒットし顔をゆがめた。しかし、ガース君も負けてはいない。

「【跳躍】する……!」

[さあ、イワノフ君の重い一撃! しかしここでガース君もスキルを使う! パン食い競爭でも似たスキルをもった上級生がいましたね!]

[わたしの【魔力増幅】に似たスキルをもつ人も居ますから、珍しくはないんですよねぇ]

[そうですね、あたしの【致命的痛みクリティカル】と似た人はまだ會ったことありませんが!]

あ、そうか、どっかで見たと思ったらパン食い競爭か。バスレー先生の【致命的痛みクリティカル】はお笑い方向に使えるんじゃないかとか思ってしまう。

それよりも戦いの行方だ。

ジャンプ力はものすごいのであれなら振波は食らわないけど、空中で制できないなら著地を狙われるんじゃないか?

[著地を見てますねぇ。ガース君、ここからどうするかなぁ?]

ベルナ先生がにこりと笑い首を傾げる。同じ見解のようだ。

見るとガース君は落下しながら槍をイワノフ君へ向けて落ちてくる。相打ち狙いとみるべきか……!

「貰うよ!」

「いいや、簡単にはやらせない! はっ!」

[おおっと、ガース君、落下しながら槍を投げた! 勢いがついた槍がイワノフ君を襲うぅぅ!]

一見無謀に見えるけど、相手をかすには十分すぎる速度だ、防は付けているけど當たったら相當痛いと思う。瞬間、イワノフ君は槍を食らわないようにその場を離れた。

「くそ、もう一回……!」

「やああああ!」

勢を立て直して追撃をかけようとしたが、一瞬早くガース君が著地し槍を『拾わず』肩からタックルを仕掛けた。イワノフ君が突っ込もうとしたところで出鼻をくじかれた形になり、あっさりバランスを崩して転がっていく。

「うわ!?」

「ふう……俺の勝ちだな」

「まだ戦えるよ!」

起き上がって構えるが、ティグレ先生がイワノフ君に近づいて肩に手を置いた。

「いや、イワノフ君の負けだ。白線から出ているぜ?」

「……あ!?」

ガース君の狙いは場外勝ちだったようだ。あれは油斷するなあ、まさか武を拾わないとは思わないし……

「マキナならどうする?」

「うーん、やっぱりガース君相手は厳しいかなあ。リーチはあるし、あの高さは追えないし……イワノフ君なら【カイザーナックル】で押し切れそうだけど。そういえば魔法剣は魔法扱いになるのかしら? そうじゃないならリューゼ君の方がいいかもね」

「魔法剣はいいらしいぜ? だから俺はし有利かもな」

へへ、と笑いながらそんなことを言うリューゼも頼もしい限り。さて、続きを見ていくとしますか!

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