《【書籍化決定】前世で両親にされなかった俺、転生先で溺されましたが実家は沒落貴族でした! ~ハズレと評されたスキル『超用貧乏』で全てを覆し大賢者と呼ばれるまで~》第百十八話 午前の競技
絶対一位を取ってくるよー!
ノーラは確かにそう言った。俺もそれは信じて疑う余地は無い。なんせドラゴンですら心を通わせた【護】だ、Aクラスの誰もが確信していた。
だが――
「ただいまー! お馬さん速かったねー!」
「……」
「あれ? みんなどうしたのー?」
満面の笑みで戻ってきたノーラに、俺達は唖然とした表のまま固まってけなかった。とりあえずこのままでは話が進まないので俺がノーラに話しかける。
「あー、確かに速かった。速かったけど……速すぎだろあれ!? あの馬いったいなんなんだよ……」
「え? ジョシュアってお名前だよー。かっこいいよねー♪」
「いや、名前じゃなくてな……」
そう、宣言通りノーラは一位だった。それもぶっちぎりで。
グラウンドを全部使って行われた乗馬競技は一周回って一番速い人が勝ちというシンプルなものだ。だが、スタートするやノーラは三馬リードどころではない離し方をし、ゴール時は半周差という恐ろしい結果だったのだ……
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[……ぶ、ぶっちぎりの一位のAクラス、ノーラちゃんでしたー……泣くなオネットお嬢様、相手が悪すぎましたよ……」
[うふふ、ノーラちゃんは大好きですからねぇ。お馬さんと心を通わせたんでしょうね。本當はおとかお魚も可哀想だと思っている子ですけど、食べるのが一番のお禮になるって言っちゃう逞しい子なんですよぅ]
<うむ、ノーラのスキルは我等のような者にも優しいのだ>
[……ド、ドラゴン!? いつの間に……!?]
<ノーラの競技が始まる時には居たぞ? ここなら近くで見えるからな>
[あらあら]
オネットとは投擲で一位を取ったEクラス金髪お嬢様だ。二位だったけど、悔しすぎて地団太を踏んでいた。あ、母さんが実況席に行ってる。
「こら、サージュダメでしょう邪魔したら」
<む、母君か。いや、ここの方が近くて見やすいし、面白いかと思ったのだ>
「ベルナはお仕事中だし、ここは先生と生徒以外はダメなの。ほら、戻るわよ。そろそろお晝だし」
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<わかった>
[またねぇサージュ]
<うむ。お晝に會おう>
母さんに抱きかかえられ、サージュがベルナ先生に手を振って観客席へ戻っていく。まあ、あので飛べるとなるとウロウロする気持ちも分かるけどね。
さて、先ほど母さんも言っていたけどそろそろお晝の時間に差し掛かっていた。午前の競技はロープ引きと計算早解き競技のふたつで終了となる。
ノーラに続けと言わんばかりにクーデリカとジャックが興気味にロープ引き競技ヘ向かう。試合が早いからか、ここは総當たりで、クーデリカのいるウチは當然総なめ……というわけにもいかなかった。
「くう……【金剛力】で……!」
「それは戦いの時に見た! 【巨人の小手】ならどうだ!」
今のところあまり目立っていいところが無かったBクラスがここで闘。クーデリカと同じく強化系スキルのようでBクラスの彼は名をキンドルという。【巨人の小手】は力と力が上がるみたいだけど、純粋に力が上がるクーデリカの方が上だった。さらに、
「クー、手伝うぜ! 【コラボレーション】で!」
「う、うお……!?」
[でたー! ジャック君の【コラボレーション】! 地味な魚屋がまたもやらかしたぁぁぁ!]
「地味は余計だっつーの!?」
[れてさえいれば十全とは行かなくても他人のスキルが使えるというのは有利ですからねぇ。でもの子のおをるのはダメですよー?]
ベルナ先生がにこやかにそう言うと、ジャックの後ろに顔を真っ赤にしたクーデリカが立つ。
「は!? なんでバレ――」
「ジャック君のエッチぃぃ!」
「ぶべらっ……!?」
ジャックは頬を叩かれた反でごろごろと転がり、テントの中へと戻ってきた。いい威力だ……ジャックのスキルは強力なのになあ。
[さあ、無にもクーデリカちゃんの平手打ちがジャック君の頬を直撃! しかし、勝負がついた後なので一位はAクラスです! それにしても強い! 今年の一年はAクラス獨壇場か!?]
「いい勝負だったよ。俺の【巨人の小手】は鍛えれば君と同じくらいにすることもできるみたいだから頑張るよ」
「うん! わたし冒険者になりたいから、もっともっと強くなるけどねー」
「これ以上かよ……やべぇな! はははは!」
キンドルと握手をしてから戻ってくる。Bクラスのもう一人の選手はクーデリカに引っ張られて転び、砂だらけだったが楽しそうに笑っていた。
「勝ったよーラース君♪」
「うんうん、凄かったね。力じゃ俺も勝てないし、頼りになるね」
「えへへー」
クーデリカが笑っていると、ルシエールが拳を握って熱弁をふるっていた。
「わ、私も頑張らないと……! 投擲じゃダメだったし」
「詰め放題と一萬ベリルは獨壇場じゃないかしら? 最後はルシエール頼みのところがあるし――」
と、マキナがルシエールを応援する。ルシエールも殘り二つの競技は相當練習して、お店の商品の値段を暗記したらしい。
上級生のロープ引き競技が終わるまで、そんな雑談や次の競技について、他のクラスの子などの話をしながら力回復に勵む俺達。
「あ、デダイト君だよー」
「計算早解き競技に出るって言ってたねそういえば」
いつの間にやらロープ引きが終わり、計算早解き競技に変わっていた。今度は三年生からみたいで、兄さんの姿があった。
この競技、答案用紙に書いて提出……という地味なものではなく、魔法がかかった木の板に先生が問題を書き、木の板の空白部分に答えの數字をはめ込むという変わった競技なのだ。
「ぐあああ!?」
[おーっと、Bクラス間違えたようだ! はめ込んだ數字が本人に襲い掛かるっ!]
そうそう、こういうギミックもあって結構痛いらしい。しかも暗算だからなおのことはずれることもあるし。
そんな中、兄さんはじっくり頭で計算し解いていく。一問あたり三分の制限時間を上手く使うのは流石だ。ノーラのこと以外では焦らないからね兄さんは。
「ふう、終わりました」
[三年Aクラスのデダイト君、危なげなく間違わずに全問正解で一位でしたぁ!]
ベルナ先生の聲も心なしか高い気がする。そんなじで次々と競技は進み、いよいよヨグスの番が回ってきた。
「……できる限り頑張ってくるよ」
「気楽にね! ポイントは全然勝ってるし、リラックスすると勝ちやすいかもよぅ♪」
「そういうスキル持ちが居るかもだし、その時は運が悪かったと思うしかないよ」
「ありがとう、それじゃ行ってくる!」
頬をパチンと両手で叩き、ヨグスが気合をれて向かう。自己紹介の時は冷めたやつだなとも思ったけど、今では俺達に発されてかアクティブになった気がする。
ヨグスたちが木の板の前に來ると、Dクラスの眼鏡っ娘が不敵に笑う。
「ふっふっふ、殘念だけどこの勝負、ボクの勝ちだね。せいぜい二位爭いをすることだ!」
全員がその言葉に返すことは無かったけど眉がぴくりといていた。相當自信があるみたいだけど、やっぱりスキルかな?
「始め!」
ティグレ先生が合図をすると一斉に考え始める。十歳の授業は三ケタの掛け算がいいところなので、落ち著いてやれば――
「終わりだよ」
「む、全問正解か、一位はDクラス!」
開始五分。問題數五問をもう終わらせたDクラスの眼鏡。それに驚き、ヨグスが聲を上げる。
「馬鹿な!? 早すぎる……」
「ヨグス、いいから問題を解け! 他の奴らもどんどん行ってるぞ!」
「あ、ああ!」
揺するヨグスに、リューゼが聲をかけると急いで問題を解き始める。だが、しの遅れが致命傷となってしまう。
[ここで終了! 圧倒的余裕を持ってDクラスが一位! 続いて、C、E、B、そしてAクラスでした! 油斷はということを思い知らされた形になったか!]
[完璧な人間は居ませんからね! Dクラスが一枚上手だったんですね]
[あれもスキルなんでしょうか? とても早かったですが]
実況のバスレー先生も不思議だと首を傾げる。
「スキルじゃないとできないでしょ」
マキナがそう言うと、眼鏡の子が口元に笑みを浮かべながら、ヨグスと共にAクラスのテントへやってくる。
「ふっふっふ……ボクのスキルは【実験】でね、計算とはあまり関係ないんだよね。実力ってやつさ!」
なんとこの子は実力であの速度だったらしい。スキルに依存しないでこういうことをやってのける子もいるからこの世界は面白いなと思う。父さんも農業のスキルだけど領主だしね。すると眼鏡っ子は変なことを言い出す。
「自己紹介がまだだったね。ボクはリースというよろしく! では、次の競技で會おう、はっはっはっは!」
高笑いをしながら眼鏡っ子……リースは去っていく。
「……なんだったのかしら?」
「さあ……でも、ラース君を見る目が怪しかったかも……」
「まさかあ」
[以上を持ちまして午前の競技は終了となります! 生徒のみんなは念願のお晝ご飯だぞぉぉぉ!]
[午後の一発目は魔法競技だから……後はわかるわよねぇ♪]
ルシエールが訝しむ中、俺達はお晝休みに突するのだった。いや、見ているだけでも張するからお腹は減るんだよね。
外れスキル『即死』が死ねば死ぬほど強くなる超SSS級スキルで、実は最強だった件。
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