《【書籍化決定】前世で両親にされなかった俺、転生先で溺されましたが実家は沒落貴族でした! ~ハズレと評されたスキル『超用貧乏』で全てを覆し大賢者と呼ばれるまで~》第百三十八話 帰ってきたアイツ
「何にもしていないのに勝っちゃったよ」
ウルカがスケルトンと幽霊を帰らせた後、困した表で戻ってくる。ディースはクラスメイトに運ばれルクスの橫に寢かせられた。
「完全勝利だったね」
「ありがとうウルカ君!」
「で、どうしてマキナも寢ているの?」
「それは――」
と、俺が話し出そうとしたところで――
「はあああああ!」
「くっ……!? ぐあ!?」
[Eクラス、三人目のザッツ君がBクラスのアミちゃんに敗れ試合終了です]
[四クラスが戦う中、Dクラスは休憩となっておりましたので全力が出せますねぇ]
[運も味方につけなければというところでしょうか]
BとEクラスの試合が終了する実況が聞こえてきた。どうやら全力で戦っているBクラスの勢いが良いようで、Eクラスはストレートに三人抜きをされてしまったようだ。
最下位でEのやる気が無いのか、Bクラスの気合が凄いのか? この後の戦いでそれは判明する。
リューゼとマキナを起こそうとしていると、ベルナ先生達が話を続ける。
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[さて五分間のインターバルを挾んで、次の試合になりますねぇ。それにしても四クラス分の戦いを実況していますから、なかなか喋れないことも多かったですねぇ]
[仕方ありません、そうですね、ここは二人手分けして――]
片方ずつ実況をするべきかと相談し始めたところで、まさかの聲が聞こえてきた。
[そんなお悩みにはわたし、バスレーなど如何ですか!]
[あれ!? また逃げ出してきたんですかぁ?]
[はい! 最終戦にわたしがいないなど、塩がっていないコーヒーのようなもの。そして、折角なのでもう一人連れてきました]
[あーどうも……]
ずいっと出してきた人影はサムウェル先生で、申し訳なさそうにロザリア先生の橫に座る。々とツッコミどころが多く、ベルナ先生がチラリと學院長が座っている方を見ると、學院長は首を振り『そこに置いた方が監視がしやすい』みたいなじのことを呟いていた。
[あ、あー、そうですかぁ! では、バスレー先生はわたしと実況を続けてもらいましょうかぁ]
[合點承知! 減給なんかクソくらえ! 祭りの最後は派手に散りますよ!]
ああ、もう決定事項なんだな……さらにこれ以上の罰を考えていないのか派手に散るらしい。Eクラスが不甲斐ないなどとりあえず今までのうっ憤を晴らすかのようなトークを放っていた。
[さて、時間も押していますしそろそろ次の試合に移りましょう!]
[あ、そうですねぇ。ティグレ先生、ティグレ先生、そろそろいいでしょうかぁ?]
立ったままウトウトしているティグレ先生に聲をかけると、ティグレ先生がうっすら目を開けて大あくびをして、観客席に手を振って頭を下げる。
「うし! し眠ったけど目が覚めたぜ、じゃあお前等続き行くぞ!」
おおー! と、俺達は聲を上げてティグレ先生が組み合わせを引くのを待つ。マキナはともかく、リューゼは寢っているのでできればここで休憩を取りたいところだけど――
「これとこれ、それと、これとこれだぁぁぁ!」
妙にテンションが高いティグレ先生の手にあった玉に書かれていたクラスの文字は、AクラスVSDクラス、CクラスVSEクラスという組み合わせだった。Bクラスが休憩か……殘念だ。
総當たりは勝った數の総數で順位が決まる。リューゼがこの狀態で連戦は避けたいと思っていたけど、仕方がないか。
そんなことを考えていると俺に近づいてくる人影があり、俺はそちらへ顔を向ける。
「はっはっは! ついに雌雄を決する時が來たな文字通り!」
「……リース、だっけ?」
俺はちびっ子眼鏡に言うと、にやりと口の端を曲げ、ビッと俺に指を突きつけて続ける。
「そうだ! さて、直接対決は初めてだな。ボクは最初に出る。ラース君も最初に出てボクと戦ってくれないかな?」
「どうして俺なんだ?」
「興味があるからさ。古代魔法も使ってもらって構わない」
「……」
こいつ、俺のことをどこまで知っているんだ……? それにどの魔法のことを言っているのか気になるな。使ったのは……サージュの時と、ギルドの訓練場でドラゴニックブレイズを使ったくらいだと思うけど?
「で、その戦いにボクが勝ったら、嫁候補にしてもらいたい!」
「はあ!? なんでそうなるんだ? 斷るにきまってるだろ。だいたい俺にメリットが無い」
「ふむ、では君が勝ったらボクを好きにするといい。どうだ?」
「……それもお前が喜びそうだから嫌だ」
「いいじゃないか、君が勝てばいいだけだろう? それとも心に決めた人でもいるのかな?」
そう言われて俺はふとクラスのの子の顔が――
「……あんたの相手は私よ」
「うひ!?」
「マキナちゃん、わたしがやりたいから寢てていいよ……?」
「おふ!?」
――浮かんだような気がしたけど、いつの間にか復活していたマキナとクーデリカがリースの肩に手を置き、本気のサージュでも逃げ出すのではないかという顔をしていたので霧散した。
「なるほど、君たちもラース君を……。いいだろう! ティグレ先生、一回の戦闘でこのふたりを相手にしたいのだがいいだろうか?」
「いや、お前ルールを変えるのは無しだろうが」
まあティグレ先生はこういうところは真面目だからそういうだろうなと思っていた。慘劇しか結果が出ない狀況にホッとする。
[ラース君、大人気ですねー。ラース君をめぐっての子達をバトルロワイヤルさせたらお金採れるん……ぶべ!?]
[うふふ、そこは黙っていましょうねぇ? さあ、一番手はどっちがいくのでしょうかぁ?]
ベルナ先生がそう言うと、マキナとクーデリカのじゃんけんが終わっていた。
「……マキナちゃん、頼むね……!」
「大丈夫、クーとルシエールの為にもこの子は私が倒す……!」
「くくく……ラース君はボクがいただくよ? そうだね、そこで寢ている彼を起こす薬をあげてもいいよ? 勝てればね?」
「上等よ……!」
[きましたよー! は奪うもの! 男は貢がせるもの! 面白くなってきました!]
[ほどほどにしないと嫌われちゃいますよぅ?」
三人は俺を無視して勝手に話を進め、Dクラスの子達が想笑いをしながらフィールドの外へ行き、俺達も自分たちの場所へ戻った。
「マキナちゃーん! 確実に【カイザーナックル】でね!」
「クーデリカちゃん、過激なことは……」
……クーデリカが騒なことを言いだす中、試合が始まる。とりあえず大人しいウルカではツッコミが追いつかない。
「……リューゼ起きてくれ、頼む」
「んがー」
俺の言葉は屆かなかった。
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