《【書籍化決定】前世で両親にされなかった俺、転生先で溺されましたが実家は沒落貴族でした! ~ハズレと評されたスキル『超用貧乏』で全てを覆し大賢者と呼ばれるまで~》第百五十六話 寂れた鍛冶屋
「ふあ……もうし寢ていたいね……」
「明日には帰るんだから、早めに行した方がいいよ。先生も居るんだし」
「そうだね……」
――翌朝、夜遅かったものの朝は早めにということで兄さんに起こされ俺はあくびをしながらベッドから出て、顔を洗いすでに食堂へ向かったティグレ先生を追う。
「おはようございます、ティグレ先生」
「おう、起きたか。デダイトにラース。まだノーラとルシエラは起きて來てねぇから先に飯を食っちまえ」
ティグレ先生が手を上げると、昨日の付にいたが微笑んでから奧へ引っ込んでいき、程なくしてトーストとスクランブルエッグにソーセージ、それとレタスが盛り付けられたプレートが運ばれてくる。
「飲みは……オレンジジュースでいいかしら?」
「僕は先生と一緒でコーヒーを」
「あ、俺はあれば紅茶がいいです。それとこっちにもリンゴをあげたいんですけど、ありますか?」
<ぎゃ、ぎゃーぎゃー>
「はい、かしこまりました」
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はあら、と言ってサージュを見て目を細めると飲みを取りに戻っていく。俺と兄さんはその背を見ながら早速食事に手をばし、こんがり焼けたトーストにかぶりつく。
<むう、トカゲの真似は難しいな>
「いや、無理に鳴かなくていいからさ。後、俺がそうしてとは言ったけど、ドラゴンなんだからもうちょっと怒っていいと思うよ? そういうサージュは好きだけどさ」
<そうか? 我もラース達が好きだぞ。我がわがままを言って困るようなことはしたくないぞ。プライドが無いのはダメだが、それを鼻にかけたり勘違いしてはならんのだ。我の本當の力は必要な時にだけ使えばいい>
「はあ、よくできた友達だよ」
<レイナがよくそんなことを言っていたからな。お前達を見る限り、やはり賢き者だったのだな>
「お前は真面目な話、人間より人間らしいよ」
俺はカバンからサージュを引っ張りだしてなんとなくぎゅっと抱きしめてやる。ティグレ先生が苦笑しながら褒めていると、ノーラとルシエラも目をこすりながら食堂へやってきた。
「ふあ……おはよう」
「おはよー」
「おはよう二人とも。その様子だとあまり寢てないみたいだね」
兄さんが聞くと、ノーラが兄さんのところへ來て口を尖らせる。
「ルシエラちゃん、ずっとオラに話しかけてくるんだよー。魔法は何が使えるかとか、父ちゃんがどうだったかとかー。もしデダイト君と會ってなかったらなんてわからないよねー?」
「まあ、そうだね。ルシエラ、あんまりノーラを困らせちゃダメだよ?」
「そ、そうね、お父さんのことは正直ごめんと思ったわ……ごめんねノーラ」
「ううん、謝ってくれたし、いいよー! じゃあご飯食べよう♪」
ノーラはルシエラの手を引いて席に著き朝食を食べる。いつもと違う風景にノーラは々興気味に朝食を食べていた。
「んじゃ、行くか。すまねぇ、鍛治屋がどこにあるか教えてもらえるか?」
「あ、はい。宿を出たら右に進んでください。すぐに十字路に差し掛かるんですけど、そこを真っすぐ行くと近くなのですぐ分かると思います」
「サンキュー」
ティグレ先生が手を上げてお禮を言い俺達に目配せをして宿を出た。言われた通りに進んでいくと、風景がだんだんと家屋がなく人もいない閑散とした場所に変わっていく。
「寂しい場所だねー……」
「職人ってのは偏屈が多いからな、」
しばらくして町の隅だと思われる行き止まりへ到著。そこには鍛冶場と思われる大きな建と、居住する家が建っていた。
だけど――
「……? 靜かすぎるな」
「うん。鍛治屋なら煙突から煙が出ていてもおかしくないと俺も思うよ。もしまだ作業にっていないにしても、もうちょっと人の気配がしても良さそうなもんだけど……」
「よ、よくそんなことが分かるわね……」
ルシエラが俺の肩に手を置いて恐る恐る言う。この辺りは墓場のような雰囲気なため、し委してしまっているようだ。一方ノーラはルツィアール國でアンデッドを相手にしていたからそれほど気にした様子はない。
立ち盡くしていても仕方がないと、ティグレ先生が鍛冶場と思われる煙突付きの家屋へ向かいノックをする。
「すまねぇ! 依頼があってここまで來た、主は居るか!」
錠前は外れていたので中に居るのだろうと踏んだのだが、ドンドンと大きな音を立てて大聲を出すものの返事もなければ音すらしない。
「レオールさんの報は最近みたいだし、居ないはずはないと思うんだけど……すみません! いませんか!」
俺もドアを叩き聲をあげるがやはり返事は無かった。兄さんが腕を組んでポツリと呟く。
「宿のお姉さんの口ぶりから人は居るんじゃないかな? 遠出しているかもしれないよ」
「あー、その可能もあるね。明日もう一回出直してダメだったら大きな連休にまた來ようか。今日は町を見て回って夜に帰ろうか」
「それしかねぇな。人が居ないんじゃ意味が――」
「おい、そこで何をしている!」
「うひゃああん!?」
「……!」
背後から怒聲が聞こえ、ルシエラが飛び上がって驚き、ティグレ先生がサッとノーラ達と聲の主の間に割ってる。
「ここの主か? うるさくしてすまねぇ、アルジャンってのはあんたか?」
「なんだ、俺を知っているのか? もしかして……客か!?」
茶髪をこれでもかとボサボサにした頭に、無ひげが凄い眠そうな顔をした男がティグレ先生に食いるように話しかけてくる。
「お、おう、そうだ」
「そうか! いやあ、その格、冒険者か? いいぜ、どんな剣でも鎧でも打ってやるよ! へへ、久しぶりの依頼だぜ」
「いや、用があるのは俺じゃなくてこいつらなんだ」
そう言ってティグレ先生が一歩橫にずれ、俺と兄さんが前に出る。
「初めまして、ラースと言います。商人のレオールさんという人から、あなたがドラゴンの素材を加工できると聞いてここまで來ました」
「なに、ドラゴンの素材……? 確かにできんことはねえが、お前みたいな子供が素材を持っているって言うのかい?」
「ではこれを」
兄さんが自分のカバンからサージュの牙を出し、アルジャンさんの目の前へ差し出す。すると、目を大きく見開いてから頭を掻き、その辺をウロウロし始める。
「マジかよ……久々の依頼がドラゴン素材とかまだ神様ってやつは俺を見捨てていなかったんだな! ……よし、いいぜ、工房にってくれ」
そう言ってアルジャンさんは工房と呼んだ扉を開け、中へって行く。
気になるのは久々の依頼、ってことかな?
寂れ合からもしかしてしばらく仕事が無かったんだろうか。
とりあえず話をしてみようと、俺達は顔を見合わせた後、アルジャンさんの後を追った。
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