《脇役転生の筈だった》番外編 in悠人

さて……じゃあ僕は僕の仕事をするとしようか。

僕の天使さくやに手を出そうとする奴等を片付けておかないとね。

「燈彌、 放課後に手伝ってしい事があるんだけど……」

初等部からの友人は僕の発言に驚いたらしく信じられないものを見るような表をしていた。

「へぇ…咲夜ちゃんの事?」

などと試すような視線を投げかけてくる。

「當たり前でしょ?あの可い可い僕の妹にまとわりつく害ちゅ……輩を排除……潰さなきゃいけないからね。

僕だけでやってもいいんだけどさすがに時間がかかりそうだから。

咲夜が待っているのにそんな事出來ないでしょ?」

「いや……。

言い直しても意味は同じでしょ……。

確かに咲夜ちゃん可いし気持ちは分かるけ……」

燈彌も敵かな?

僕から咲夜を取り上げようとする敵って事かな?

咲夜が可いすぎるからこういう奴が出てくるんだ。

だが、いくら親友の燈彌であろうと許せない事もある。

「さすがの燈彌でも…咲夜は渡さないよ?

せめてあと30年後にならないとね」

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「いや、それ行き遅れ……」

「うん?

何か言った?」

「…ナンデモナイ」

燈彌への牽制は大丈夫そうだね。

…でも、咲夜の嫁ぎ先か。

僕と咲夜が兄妹じゃなければいいものを。

いや、それだとあの天使の様な咲夜の笑顔が……。

……悠人は今日も安定のシスコンであった。

「…燈彌は婚約者っていなかったよね?」

それは深く考えての発言だった。

咲夜は令嬢である以上、何処かの家に嫁がなければならない。

それが海野グループの令嬢であるなら尚更だ。

だが、僕としてはあの可い咲夜に天野や神崎の家に嫁がせるのだけは反対だった。

それが咲夜のみだと言うのなら仕方ないがそうではないのならもっと他の家に嫁がせたかったのだ。

何故か。

それはただ天野や神崎の家だと會えなくなる事の方が多くなってしまうと判斷したからだ。

その點、燈彌であれば友人という事で咲夜に會いに行ける口実も増えるし家としてもそこそこ繋がりがある。

まぁ年上ではあるが人格については僕が良く知っている。

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そう考えると燈彌であれば許容範囲である。

「いないけど……それがどうかした?」

ならば…いいだろうか?

だが……あの可い咲夜に婚約者……やっぱり嫌だ。

辭めにしよう。

「…何でもないよ」

「……もしかしてあれ?

咲夜ちゃんの婚約者が僕なら友人として會う口実も増える…けど咲夜ちゃんに婚約者が出來るのは嫌だってじ?」

自分の考えを言い當てられなんとも言えないがこみ上げてくる。

…それだけ燈彌との仲が良いという事なのだろうが。

「……悪い?」

「いいや、悠人らしくていいと思うよ?

あ、でもあの天也君、だっけ?

彼、咲夜ちゃんに対して抱いてるよね~?」

燈彌の最後の一言で僕は苦蟲を噛み締めたような表になる。

……あの可い可い僕の妹であり天使の化であるかのような咲夜をあんな奴に取られてたまるか……。

というのが本音ではあるが燈彌の手前、それは言わないでおく。

これで分かったとは思うが悠人が天也と奏橙に敵意を見せているのは咲夜に対する獨占からである。

燈彌が

「うわぁ……言わない方が良かったかも……」

などと後悔していたのを悠人は知る由もなかった。

燈彌は、シスコンにも限度というものがあるだろう…などとも思っていたが口に出すことはしなかった。

……そんな命知らずな人では無かったのだ。

閑話休題

「さて……燈彌、リストを渡しておくよ」

そう言って僕が鞄から出したのは何10枚もの厚いプリントだった。

そこには何人もの名前が書いてありその橫にはファンクラブに所屬している…や、天使さくやに目を使ったなどといった報までのっている。

これは僕が寢る間を惜しんで作り上げた『敵』の表である。

そして放課後、ようやく僕達はき出した。

まずはファンクラブからいこうじゃないか。

集まる場所は高等部の西棟の教室だったよね。

という事で、僕は教室に向かうともう既に何人かの害ちゅ……敵がいた。

「やぁ、僕の可い天使である妹の咲夜にまとわりつかないでくれるかな?」

「なっ!?

誰だ!!」

「お、俺、知ってる!

咲夜さんのお兄さんだ!」

「あ、あのシスコンの!?」

そこでようやく気付いたが男だけではなくもいた。

……咲夜の可さは男だけではなくも虜にしてしまったらしい。

「咲夜は僕の天使だよ?

勝手に僕の持ってない咲夜の寫真や、咲夜のグッズなんて……!!」

僕だってそんなの持ってないんだ。

ズルいじゃないか。

僕の天使の寫真やグッズなら僕だってしい。

「え……あ、あの…會員になれば寫真やグッズを買い放題ですよ?」

「分かった、なら會員になろう。

って事で寫真を……」

潰すつもりだったがまぁ僕にも得があるしいいとしよう……。

教室を出ていく時、僕の手には20枚以上もの天使の寫真があった。

……そうして今日の隆會の仕事を放棄したまま僕は上機嫌で咲夜を迎えに行った。

それから毎日、咲夜のファンクラブへと行き、寫真かグッズを買って帰るのだった。

それが咲夜にバレるのも時間の問題とは知らぬまま……。

そして、その日の夜。

父さんの部屋から出てきた咲夜に僕が聲をかけてもそのまま通りすぎてしまう。

それが気になり咲夜を追いかけ、咲夜の部屋に行くと咲夜の泣き聲が微かに扉の向こうから聞こえてきた。

……初めてだった。

咲夜が泣いているところなんて見たことがなく、困した。

それと同時に泣かせた奴に対して怒りが湧いてきた。

咲夜がこうなった原因であろう父さんの部屋に向かおうとするが…咲夜の事が気がかりだった。

だから、母さんに相談し、咲夜を見てて貰えないか頼もうとしたのだが途中で怒ったように父さんの部屋へ行ってしまった。

こうなった母さんは止められないという事はよく知っている。

これはしばらくかかるだろうと、僕は咲夜のもとへいき、聲をかける。

「咲夜、出てきてくれないかい?」

僕にはこんな事しか出來ないのが辛かった。

こうしてただ聲をかける事しか出來ない非力さが辛い。

咲夜のそばでめてやりたかった。

咲夜を泣かせたく無かった。

咲夜に笑っていてしかった。

こうなる前に咲夜の敵を全て排除するべきだった。

くて、優しい僕の天使。

その天使が泣いている……。

「咲夜…何があったのかは知らないけど…僕は咲夜の味方だから。

何があっても咲夜の味方だから……」

だから、出てきてくれ。

そして、僕を頼ってしい…。

僕は、咲夜の味方だから。

何があろうと何をしようと…それは変わらない。

だから、お願いだ。

泣き止んでくれ……。

僕は咲夜に語りかけるが、以前として泣きやむ様子は無かった。

そのため、清水さんに咲夜の部屋のそばで待機してもらうと僕は父さんの部屋へと向かう。

軽くノックをして中へはいるとやはり母さんがいた。

僕は父さんを真っ直ぐに見據えると質問をした。

「…父さん、咲夜に何をしたんですか?

咲夜が泣いているところなんて今まで見たことも無かったのですが」

その聲は自然と低くなっていた。

そんな僕に対し、父さんはあった事をそのまま伝えてくれた。

直訳するとこうだ。

松江梨が僕の天使にめられたという噓を吐いた。

それを向こうの親が父さんに文句をいい、父さんはそれを信じ咲夜を呼び出した。

咲夜はやっていないといい、自覚が無いのかと父さんが怒った。

そして咲夜はそのまま自室に戻り泣いてしまったと。

咲夜としては何もやっていないのにも関わらず信用してもらえなかったという事か。

父さんのやった事は咲夜の今までの行を全て否定したのと道理だ。

それよりも…松江梨…か。

ふふ……よくも咲夜を泣かせる理由を作ってくれたな?

「…僕の大切な妹であり、父さんの娘である咲夜よりも松江梨を信じたんですか?

それに、咲夜がめた?

咲夜はそんな事はしません。

咲夜ならばめられている者を助けはしてもめる事はありません」

それに、松江梨と言えば大學まで悪評が來るほどの人だ。

その人を咲夜がめる?

注意の間違いに決まっている。

「あぁ、分かっている。

悠人、それを証明出來るか?」

それは松江梨を徹底的に潰すという事だろうか?

ならば、やる理由はあってもやらない理由は無いな。

そう思うと自然と笑みが零れた。

咲夜に対してやった事の恨み、思い切り晴らしてやろう。

そんな思いで父さんに答える。

「勿論です。

咲夜を傷付けた原因の1つですから……やるなら徹底的にやります」

すると、父さんも笑みを浮かべた。

「頼む」

「はい。

失禮しました」

やることは多い。

まずは松江梨と松江家について調べ無ければならない。

そう思い、行を起こした。

全ては咲夜のために。

あぁ、それと…父さんも咲夜を泣かせたんだからそれ相応の報いはけて貰わないとね。

それを含めて燈彌にも協力をしてもらうとしようか。

ふふっ……咲夜の敵を僕が見逃さないって事をちゃんと思い知らせてやらないとね。

そうして僕はこれからやる事に思いを馳せていた。

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