《脇役転生の筈だった》番外編 in天也
咲夜が泣いていると聞き、いてもたっても居られなくなり、家を飛び出した。
咲夜の大好であるマカロンをいくつか買い、タクシーを捕まえて咲夜の家まで走らせる。
タクシーの中、俺は奏橙から詳しい話を聞いた。
泣いている原因は松江梨らしい。
松江梨により父親と仲違いしたらしい。
他にも々あったようだが頭の中にって來なかった。
俺が咲夜の家に著くと既に音や結城がいた。
悠人先輩も當然いたが、怒りのオーラを全開としたように笑みを浮かべていた。
普段ならば恐怖をじるのだろうが幸いこの時の俺は咲夜の事で夢中だった。
部屋にいるだろう咲夜に向かって聲をかけるが返ってきたのは拒否の言葉だった。
「……來ないで…ください。
すいませんが、今日は…帰ってください…。
また、今度に……今は…1人にして…ください…」
それだけで咲夜が相當參っている事が分かる。
そして、泣いていたというのは本當なのか聲が上っていた。
僕が何も言葉を発せない間も音や結城、奏橙がそれぞれ言葉をかけていく。
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當然、僕も聲をかけるが反応は返って來なかった。
黙って見ていた悠人先輩だったが突然、壁をドンッと蹴る。
「クソっ……。
松江梨……。
やっぱり前に潰しておけばよかった。
咲夜を泣かせる原因は全て潰さなければいけなかったんだ」
などと騒な事を言っていた。
それに思わず顔を引き攣らせる。
俺は咲夜を好きだと言った時、悠人先輩に殺されるんじゃないだろうか?
そんな時、微かにカタカタと軽い音がした気がした。
それは咲夜の部屋から聞こえてきた気がしたのだが……泣いていたと聞いたのにも関わらず、だ。
きっと気の所為だろう。
「咲夜、倒れてはいないよね?
咲夜……僕の可い天使、世界一可い僕の妹……。
松江……潰す……。
父さんも後悔させてやる……」
最後にボソッと呟いた悠人先輩の言葉はよく聞こえなかったが……『後悔』という言葉だけは聞こえた。
……悠人先輩のシスコンは重度の病気の様だ。
すると、しして咲夜が扉を開けた。
咲夜の目は赤く腫れていて泣いていた事が分かる。
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だが、それでも咲夜は気丈に振る舞うように微笑んだ。
「ご心配お掛けしました。
お兄様、音、紫月、天也、奏橙、おりください」
それぞれ咲夜に言葉をかけると俺達は咲夜の部屋にる。
咲夜の部屋にったのは初めてだが、咲夜の趣味では無さそうな可らしいピンクの部屋だった。
だが、その奧にあるウサギの人形を見て咲夜の趣味ではない事が分かる。
絶対に悠人先輩が咲夜に買っただろう。
「ご心配をお掛けしてしまい申し訳ありませんわ。
…ということで、協力してくださりませんか?」
「あぁ、何でもするよ」
何の協力かも聞かずに悠人先輩は引きける。
……まぁ、悠人先輩なら咲夜の頼みは何でも引きけるからな。
それに対し、咲夜はし顔を引き攣らせたものの笑顔で対応した。
これが慣れなのだろうか?
まぁ咲夜なら無理は言わないだろうと頷く事にした。
「先程、梨さんに連絡を取りましたの。
謝罪をする様でしたら何も致しません、と。
ですがあの方は謝罪はしないでしょうから……穏便にことを運びたかったですがあの方はしやりすぎましたわ。
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私の大切な友人を傷つけるだけでなく私の家族との仲も悪くしようとするだなんて……」
……どうやら先程カタカタ聞こえたのはパソコンの文字を打つ音だったらしい。
気の所為ではなかった様だ。
咲夜は靜かに怒っていた。
その証拠に悠人先輩に似た笑みを浮かべている。
その辺は兄妹のようだとじる。
いつもは悠人先輩の溺ぶりが激しくて兄妹の様には見えないからな。
「そうだね。
個人的にも恨みはあるし、僕の可い可い天使に手を出したんだ。
し思い知らせてやらないとね」
そう笑顔で告げる悠人先輩が恐ろしかった。
とはいえ、今回は俺も悠人先輩と同意見なのだが。
俺の現友人であり、好きな奴に手を出したんだ。
しくらいやり返したいと思うのは當然の事だろう。
「咲夜を泣かせたんだから當たり前だな」
「そうだね。
僕としても彼はし……。
だから咲夜に協力するよ」
奏橙は咲夜にそう言った後、俺に耳打ちした。
「僕は影に徹するから、天也、頑張ってね?
咲夜には悪いけど……いいチャンスだし」
「なっ……!?
善処する……」
これでは咲夜を好きなのがバレバレじゃないか。
咲夜に不審がられたらどうしてくれる……。
いや、それで咲夜の意識が変わるならいいのか?
「一芝居うちましょうか」
その咲夜の一言で明日、とる行が決定した。
咲夜のやり方に文句は言えないが流石にこれでは溫すぎると思う。
それは悠人先輩も同じようでかに作戦を練っていた。
俺は咲夜にマカロンを渡すと留めていたタクシーで家に帰る。
その日、俺はマカロンをあげた時の咲夜の花のような笑顔が頭からずっと離れずあまり寢れなかった。
咲夜が可過ぎて辛い……。
次の日の朝。
俺はいつも通り奏橙と共に登校する。
先に來ていた音とし話し、段取りを確認していた。
そして、咲夜が登校して來てシナリオ通りに進める。
するとクラスメイト達が咲夜のために行を開始する。
その速さに咲夜の人が伺える。
そして、男子の中には咲夜に対し熱の篭った視線を送る者もいた。
そいつらの事は敵認定しておいた。
後で悠人先輩にでも伝えておけば問題ないだろう。
そして晝休み、俺はとんでも無い事を知ることになった。
それは晝食をとっている時だった。
「見つけましたわ!
海野咲夜!!
あなた…よくも私を……!」
などと大聲でぶ馬鹿がきた。
誰かと思い見てみるとあの松江梨だった。
それに思わず顔を歪める。
先輩方もその失禮な行に対し顔を顰めていた。
それが咲夜や音ならばまだ、違っていただろうが……。
咲夜や音であれば友人のように接していることもあり多なら見逃すだろう。
だが初対面の者に関してはそうはいかない。
だからこそ、咲夜も嫌そうな顔をする。
「松江さん……。
申し訳ありませんが放課後にしていただけませんか?」
それはここで事を起こさないという咲夜なりの優しさだった。
だが、松江梨はそれに気付かずに怒りだす。
そのせいで更に、自分の印象が悪くなっているとは考えないのだろう。
「なっ……あなた自分がやった事に対して…!」
その松江梨の一言で悠人先輩がキレた。
その怒りは俺や奏橙まで震え上がらせる程だ。
だが、松江梨はそれに気付かずに地雷を踏み続けていた。
「咲夜、いいのか?」
ここで事を起こしてもいいのか、そういう意味を込め、聞いてみる。
ここで事を起こすと後後悠人先輩が何かしでかすかもしれないからだ。
咲夜はし考えてからため息をついた。
「えぇ、問題ありませんわ。
優先順位の違いというだけですもの」
それは先輩方に対して申し訳ないから、という事だろうか?
自分の事よりも先輩を重視している咲夜に思わず苦笑をもらす。
咲夜らしい、そうじたからだ。
「あ…あなた…どこまで私を侮辱すれば気が済むのよ!」
それはこちらのセリフだ。
思わずそういいそうになるのをグッと堪える。
松江梨、彼には先輩が見えていないのだろうか?
先輩に敬意を払うのは當然の事なのだが彼の行は敬意を払うどころかその真逆だ。
そんな彼に思わず呆れてしまう。
そして咲夜が諦めたように箸をおいた。
すると箸をおいた咲夜を見て彼は何を勘違いしたのか
「わ、分かればいいのよ」
などと口にした。
あまりの馬鹿さ加減に先輩方も俺達も呆れ果てていた。
「巫山戯ないでくださいまし。
見て分からないのですか?
私は今、先輩方と晝食をとっているのですよ?
先輩方に挨拶もしないだなんて失禮でなくて?
大聲でぶ事もはしたないですわよ?
常識というものをもう一度學び直して來たらどうなのかしら?
それと、紫月に謝ってください。
あなたのせいで私の大切な友人が泣いてしまったのですよ?
それどころか、あなたが引き起こした事を『私のせいで』と私に謝罪をしてきましたの。
その意味がお分かりでしょうか?」
咲夜も不機嫌さを丸出しで咎める。
それは當然の事だといえるが、彼はそうは捕えなかったようだ。
「松江さん、あなたの行のせいで私とお父様の関係が崩れるところだったのですよ?
あなたの噓1つでそこまでの事が起こりゆるという事を理解してくださいませ。
それともう1つ、今後一切紫月に関わらないでくださいませ。
謝罪もする気が無いようですし…」
咲夜はそう言うと要件は済んだと言うように食事を再開しようとする。
「…な、な……何でそんな事をあなたなんかに言われないといけないのよ!
あなたが居なければ…神崎様だって…!」
奏橙が原因だったのかと奏橙を見て見るといつに無く冷たい視線で彼を見ていた。
それは、軽蔑の目だったのかもしれない。
だが、そんなにも冷たくさめきった目は初めてだった。
「…それはないよ。
僕は君といる気はないからね。
咲夜を陥れようとした君と一緒にいるだなんてお斷りするよ」
その聲のトーンはいつもよりも數段低い気がした。
それだけ奏橙は今回の事に怒りをじているという事だろう。
「殘念でしたわね、松江さん。
わざわざ私にめられただなんて噓を吐いてまで奏橙と友人になりたかったのでしょうけど……」
うん?
友人?
仲ではなく友人?
「……咲夜、違うと思うよ?」
音が咲夜を呆れた様子で見つめながら訂正した。
「…人になりたかったんじゃないかな?
有り得ないけどね。
……もしかして咲夜、クラスの男子から晝食われるのって自分と友人になりたいからって思ってた?」
すると咲夜はキョトンとした表になった。
「……違いますの?」
まさかの事実だった。
咲夜は自分に向けられる好意を全て勘違いしていた。
咲夜の中にはというものが無いのだろうか?
思わず頭を抱えたくなった。
「……奏橙、後でいいか?」
「いいよ」
「悪い…」
まさかここからだとは思っていなかった。
ここまで鈍いとは思ってはいなかったが、これでは好きな奴もいないだろうしな。
咲夜にはまだ好きな異がいないと考えるとまだ勝ち目はありそうな気がしてくる。
放課後、俺と奏橙は個室にいた。
「……なぁ、奏橙。
……友人である以前の問題だったんだが……」
話題は勿論、咲夜の事だ。
「……流石にあそこまでとは誰も思わないって…」
問題は悠人先輩ではなく、咲夜の鈍さだった。
あれが演技だったらまだいいのだが……あの様子だと本気だろう。
「はぁ……どうすればいいと思う?」
「あれはどうしようもない気がするけど……」
奏橙もお手上げの鈍さなのか……。
分かってはいたがこれは苦労しそうだ……。
「音に相談してみるのは?」
「……そう、だな」
悠人先輩に相談するより全然いいだろうしな。
咲夜を取られる心配も無いしな…。
「…明日にでも相談するか」
咲夜の知らぬところで協力者が増えていくのであった。
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