《脇役転生の筈だった》16
「咲夜、今度の日曜空いてるか?」
天也が突然そんな事を訪ねてくる。
何だろうか?
もしや、相談とかだろうか?
「えぇ、問題ありませんわ」
殘念ながら私は基本暇人なのだ。
大抵家で読書したり兄といたりする事が多い。
だから基本空いている。
「なら、プラネタリウムでも見に行かないか?」
それは……私をうのではなく好きな人をえよ。
……下見なのだろうか?
ならば斷る理由はないか。
「えぇ、喜んで。
時間と場所はどう致しますか?」
「そうだな…。
10時に駅でどうだ?」
「分かりました。
10時に駅ですね…」
私は簡単にメモを取ると筆箱の中にしまう。
……それにしても、プラネタリウムか。
あんまり見た事はないんだよなぁ。
楽しみだ。
……そして當日。
止める兄から逃げるように私は車に乗り込み駅に向かった。
実は、あのあと兄に話した途端に
「あんな害蟲と一緒なんてだめだ!!」などと言い出したのだ。
兄には呆れてものも言えない……。
あの病気、治らないかなぁ?
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なんて思いつつ駅につく。
時間は9時50分、10分前だ。
私は急いで向かうとすでに天也が待っていた。
「天也、お待たせしてしまい申し訳ありません」
天也は私に気づくと優しく微笑んだ。
いつもとは違う天也の表にドキッとしてしまうが気の所為だろうと片付けた。
「天也はこのようなプラネタリウムは良く見に行かれるのですか?」
「いや、あまり見ないな……。
…2人きりなんだから素でいいぞ?」
うん?
あぁ、そういえばそうだった。
この頃こっちでいることが多かったからなぁ。
「なら遠慮なく」
「そっちの方が咲夜らしくていい」
……それは褒め言葉じゃないと思うのだが。
「…あぁ、ここだ」
天也に案されて著いたのはドーム型の建だった。
新設されたばかりのように綺麗な建だった。
天也はスタスタと中にっていくとすぐにチケットを買ってきた。
私の分までチケットを買ってもらった事に申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「天也、チケット幾らだった?
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私の分は払うよ」
「…いい。
俺がったんだ。
俺が払うのは當然だろうが。
それに……」
「それに?」
心なしか天也の顔が赤い気がする。
何かあったのだろうか?
「それに……偶にはカッコつけさせろ」
「……天也、大丈夫?
熱ない?」
天也がこんな事言うわけがない。
きっと熱があるはず。
顔も赤いし。
「…無い。
この鈍が」
「なっ……」
せっかく人が心配してやってるのに。
その態度はないと思うんだ。
プラネタリウムの鑑賞を終えると私達は一旦外に出てベンチに座った。
「プラネタリウム、綺麗だったね」
「…あぁ、そうだな。
今度は現地で見てみたいな」
確かに。
現地で見た方が何倍も綺麗に見えるんだろうな。
「そろそろ晝食でも食べるか」
「あ、そっか。
もうそんな時間なんだ……」
意外と早いなぁ。
そんな事を呟く私を天也はいとおしげに見つめていた事に気づく事は無かった。
「何か希はあるか?」
「うーん……特にないかな?」
「なら、パスタとかはどうだ?」
私は特に希も無かったので天也の言葉に二つ返事でOKした。
「ここだな」
……普通の家の様に見えるが…本當に店なのだろうか?
看板すら出ていないのだが。
「天也、本當にここ?」
天也は何も言わずにインターホンを押した。
……すると、すぐに人が出てきた。
「春瀬、パスタ」
「…おい……。
俺の家じゃなくて店に行け……」
寢起きのような人が出てきた。
話を聞くに天也は店の方でなくシェフの家に押しかけたと言う事だろうか?
「いいだろ。
今日はお前が休みだったからな。
お前のパスタを食わせたい奴がいるんだ」
「はぁ?
って……あぁ、お前の……な奴か」
「なっ!?
春瀬!
それはいいだろうが!!」
……本當に何を話しているのだろうか?
天也が赤面している。
照れているのだろうが……。
「ったく…分かったよ。
嬢ちゃんもんな」
「え……お、お邪魔します…」
いきなり話を私の方に持ってこないでほしい。
ビックリするじゃないか。
天也はその春瀬さんの脇を通りさっさと中にってしまう。
私も天也に続いて恐る恐る中にった。
「嬢ちゃん、すまねぇがそこら辺に座っててくれ。
すぐに用意する」
「はい、お気遣いありがとうございます」
とはいえ……何か手伝えないだろうか?
まぁ、私に出來る事はないだろうが……。
「嬢ちゃん、天也、有り合わせですまねぇが出來たぞ」
……完したようだ。
…凄く早くないか?
「ありがとう、春瀬」
「ありがとうございます」
「嬢ちゃんは気にすんな。
天也は俺のプライベートを潰すな」
それは私も申し訳ないと言いたい……。
だが、當の天也と言えば全く気にせずに食べている。
さすがと言うべきだろうか。
肝が據わっている……。
「そういやぁ、嬢ちゃん名前は?」
私はハッとして自己紹介をした。
私とした事が挨拶を忘れるだなんて……。
「も、申し遅れました!
私は、海野咲夜と申します。
天也とは初等部の頃からの友人です」
座ったままになってしまったが軽く頭を下げる。
すると、その人は怪訝そうな表をした。
「海野?
……咲夜…。
嬢ちゃん、天司って奴知らねぇか?」
「天さんですか?
以前、お菓子を作る際にお教えしていただきましたが……」
天さんかぁ……。
優しい人だったなぁ。
でも、天さんがどうかしたのだろうか?
「ははっ!
嬢ちゃんがアイツの言ってた可らしい令嬢か」
……は?
きっとそれは別人では…?
思わずそうツッコミたくなる。
というかこの人は天さんの知り合いなのだろうか?
「悪ぃ悪ぃ。
俺は天春瀬。
天司の兄だ」
「兄弟で料理人をやっていらっしゃるのですね。
天さん……司さんにはお世話になっていますわ」
驚いた。
まさか天さんのお兄さんだったとは。
…2人とも天だから分かりにくいな。
天さんのお兄さんって呼ぼうかな?
「ははっ…。
嬢ちゃん、本當面白ぇのな。
俺の事は春瀬でいいぜ」
「では、私の事は咲夜と」
……というか、面白いって何!?
私、面白い事言ってないと思うんだけど!?
むぅ……腑に落ちない……。
「おう!
で、咲夜は天也の事どう思ってんだ?」
……はい?
どういう意味だろうか?
そんなニヤニヤして見るのをやめてほしい。
そして天也は何を赤面しているのだろうか?
「そう、ですね……。
好きですよ。(友人として)
し荒っぽいところがありますが気遣いが出來て優しいですし…」
なんか天也が嬉しそうにしている。
まぁ、一応褒めているからかな?
「良い友人ですよ」
…あれ?
天也が落ち込んだ?
何でだろう?
それと、春瀬さんは何で笑ってるんだろうか?
「まぁ、その…なんだ。
天也、頑張れよ」
「…分かってる!」
何だかんだ言っても仲いいんだなぁ。
「咲夜も、また來いよ。
今度は店の方に來てしいけどな」
「はい。
春瀬さん、味しい食事をありがとうございました」
私は丁寧にお禮を告げるとフッと笑って見送ってくれた。
「天也、どうかしたんですか?」
「っ…いや、何でもない」
とは言われたもののやはりどこか落ち込んでいる気がする。
私はまた知らないうちに何かやらかしただろうか?
私は心配になり天也に尋ねるが依然として「何でもない」としか答えなかった。
「…そうだった。
再來週に家でパーティーを開くんだが…來るか?」
パーティー……か。
あんまりいいイメージはないんだよなぁ。
だから私達の家は滅多にパーティーを開かないし。
でも天也の家のパーティーだからなぁ。
「どうする?
奏橙や結城もくるし、コンセプトとしては今やっているホテルの海外進出だな。
食事に関しては腕の良いシェフ達が集まっている」
「……食事って…。
天也は私が食事に釣られるとでも思っているんですか……」
私は呆れ半分に口にするが天也は苦笑をもらしただけだった。
私はそんな食いしん坊じゃないってのに……。
「で、どうするんだ?」
「參加致しますわ。
多分…いえ、必ずお兄様も參加すると言うと思いますわ」
あの兄は私だけ參加するってのを許すわけがないからね。
つまり、私が參加するなら兄も必ず參加する。
……面倒な事この上ない。
いや、心配してくれているのは分かってるんだけどさぁ。
「分かっている。
招待狀は明日、學校で渡す」
…まさかの手渡しですか。
………いいけど。
「分かりましたわ。
では、明日に」
「あぁ……」
……何故か天也は名殘惜しそうにしている。
そんなにも友人がないのだろうか?
ない友人とこうして遊ぶ機會がないからそんな目で見るのだろうか?
「……そうでしたわ。
私、ノートがもうすぐ終わってしまいそうでしたの。
…どうせですから付き合ってくださりませんか?」
私はわざとらしくそんな事を口にするが天也は全く気にした様子もなく…。
それどころか嬉しそうに頷いた。
なんだかこの頃、天也が犬に見えてきた。
「さぁ、行くぞ!」
「え、えぇ……」
天也のテンションが辛い…。
まぁ、偶にはこういうのも悪くはないか。
私は天也に連れられデパートの中にる。
そしてそのデパートにある雑貨屋にいくとノートを購し、そのままデパートを回ることにした。
「天也は何かほしいものはないんですの?」
私はもう必要なものは無いが天也は違うかもしれない。
そう思い訪ねてみる。
「……そう、だな……。
數學の參考書か問題集がしいな…」
……參考書か問題集って…。
どれだけ勉強してるのさ……。
ついでだし私は理科の問題集でも買っておこうかな?
「では、書店に行きましょうか」
「そうだな」
幸い書店は同じ階にあったらしく探さずに済んだ。
「參考書や問題集は……向こうだな」
玩を買ってもらう子供のような表をしながら天也はし早足に書店の中を進んでいく。
……全く、私の事も考えてしいものだ。
どうせだし私は私で見るとしよう。
……しばらく見ていたが私の方は簡単に見つかった。
私のお気にりのシリーズの參考書が出ていたのだ。
私は迷わずその參考書を選ぶと天也に聲をかけた。
「天也、どうですか?
何かいいものありましたか?」
「あぁ…。
これか、これで迷っているんだが……」
そう言って私に見せてきたのは2冊の參考書だった。
1つは知らないシリーズだがもう1つは私の持っているシリーズだった。
その事に私は思わず笑ってしまう。
すると天也は顔を顰める。
「申し訳ありません。
こちらの參考書が私の持っているものでしたので」
「なら、これにしよう」
と、あっさり決めてしまった。
……そんなのでいいのだろうか?
「…もうし考えた方がいいのでは?」
などと忠言してみるが天也はもう片方の參考書をしまってしまった。
「咲夜が持っているなら問題ないだろう。
それに、その手に持ってる參考書。
これと同じシリーズだろう?
なら、咲夜はこのシリーズを気にっている。
咲夜が気にっているくらいなら余程いいんだろう?」
……おぉう……。
わかり易いかは人それぞれだから私の基準で選ばれても困るのだが……。
「…天也がそれでいいのでしたら良いのですが……」
「なら、問題ないな」
……まぁ、いいか。
後で私に文句言ってきても知らないが。
さて、私もこの參考書のお金を払うか。
「…咲夜、今日はありがとう」
「急にどうしたんですか?」
いきなりそんな事を言わないでほしい。
「……今日は楽しかった。
ただそれだけだ」
「私も、今日は楽しかったです。
ですから私からもお禮を言わせてください。
今日はっていただきありがとうございました」
まぁ、楽しかったのは事実だし。
々と不自然な點はあったけど。
だから、まぁ……またこんな風に出かけるのも悪くはないと思う。
「そう言ってもらえて良かった。
じゃあな、咲夜」
「えぇ、また明日」
私と天也は待ち合わせ場所の駅で別れるとそれぞれの迎えを待ち、家に帰っていった。
……余談だが私が家に帰ると兄が凄い形相で私に駆け寄ってきた。
「咲夜!
大丈夫だったかい?
怪我はしていないかい?
あの害蟲になにかされなかったかい?
不埒な奴が居たりは?
何か問題は無かった?
何処か痛い場所とかは無い?」
……ハッキリ言ってウザかった。
心配させたのは私なのでそれを考慮してちゃんと答えていたが。
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