《脇役転生の筈だった》19
私はこの頃日課になりつつある放課後の集まりの事を考えていた。
隆會の集まりといい學年委員の集まりといい……。
何故私に面倒事がまわってくるのだろうか?
そして、何故終わると扉の前に兄が立っているのかと。
今日の集まりは隆會だ。
そのため、私達は4人で會議室へと向かっていた。
「天也はどなたか好きな方はいませんの?」
「は!?
い、いきなりどうしたんだ?」
天也のあまりの慌てように思わず笑ってしまいそうになる。
だが、その反応からするときっと好きな人がいるんだろうなぁ……と、漠然と思った。
「いえ、先程文化祭は好きな方と回るものだとお聞きいたしましたので…。
天也にそのような方がいる場合は誤解されるかもしれませんので一緒に回れないと思ったんですの」
「………ったく、そんな事かよ…。
そんな事だろうとは思ってたけどな!!
……期待しただろうが…」
天也が最後に言った言葉は聞き取れなかったが何故か怒っているのは分かる。
もしかしてアレだろうか?
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元々私と回る気は無かったとか?
だから勘違いするなという事か?
「僕の方には聞かないんだ?」
「奏橙には紫月がいますもの。
分かりきった事は聞きませんわ」
「………それはそれで……」
奏橙は私に何か文句でもあるのだろうか?
意味が分からない。
2人してなんだというのだろうか?
……まさか、こんなところで話すなという事だろうか?
まぁ、他に人はいないからいいか。
「音はどなたかいませんの?」
「うーん……いません、ね……。
咲夜はどうなんですか?」
音に言われて考えてみるが1番最初に浮かんだのは兄だった。
…これは多分兄のシスコンというイメージが高いからだろう。
そうと思いたい。
次に浮かんだのは天也だった。
多分、というよりも初等部の頃からの友人だったからだろうが。
そう考えると…うん。
「いませんわね……」
「…そ、そうか…!
いないのか………」
天也はパッと嬉しそうに笑みを浮かべたがすぐに俊と落ち込んだように俯いた。
「…奏橙、天也は緒不安定なんですの?」
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「気付かないって凄いよね」
答えになってない返答をされた。
私は意味が分からずに首を傾げていると奏橙は天也に何か耳打ちした。
すると天也はハッと顔を上げる。
そしてジッと私を見ていた。
……一、なんだというのだろうか?
「咲夜、俺は諦めるつもりはないからな」
「…何が?」
つい素が出てしまったが仕方ないだろう。
それよりも…天也は諦めないと言ったが何を諦めないのだろうか?
…全くもって分からない。
もしかして勉強かな?
…きっとそうだろう。
私の疑問にも答えずに天也はどんどん先に行ってしまう。
私は多の文句はあったものの何も言わない事にした。
何事もなく、予定通りに隆會の會議が終了すると私達4人は帰らずに話しを続けていた。
「それにしても…當日の見回りか……。
2人1組だったよね。
なら、天也と咲夜、僕と音でいいか」
奏橙に勝手に分けられた。
…何故私と天也なのだろうか?
ここは普通、音と私、天也と奏橙だと思うのだが。
「いざって時のためだよ。
の子2人じゃあ危ない事があるかもしれないからね。
だからだよ」
そう言われてしまうと反論出來ないのだ。
私は無いとしても音は可いからそんな事もありそうだと思ったからでもある。
「さ、咲夜安心しろ。
咲夜は俺が守……」
「咲夜!
僕の可い可い可い天使よ!
さぁ、迎えに來たよ。
帰ろうか!」
兄がしてきた。
……そして私は天使ではない…。
大學から毎日迎えに來なくとも良いというのに……。
本當に心配癥だ……。
ため息をつきそうになった時、隣からチッと、舌打ちが聞こえた。
私は隣の天也を見ると何事も無かったかのように平然としていた。
「天也、今舌打ちしましたよね?」
「何のことだ?」
「いえ、舌打ち…」
「知らないな」
「舌…」
「知らん」
「…………」
認める気は無いらしい。
私が折れるしかないだろう。
私はため息をつくと笑顔で立っている兄のもとへ近づいた。
「お兄様、お待たせしてしまい申し訳ありません」
「気にしないでいいよ。
僕の可い天使のためなら何日でも何ヶ月でも、何年でも待てるからね」
何年って……私は何処に隠れろと?
兄から逃げ切る事は不可能だと分かっているのだが……。
「冗談はおやめ下さい」
兄が何ヶ月も待てるわけがない。
多分1日もすれば私を探しに來る。
そんな自信があった。
「そんなに長く咲夜を離しておくつもりはないけど……」
兄がボソッと呟いたそんな言葉が聞こえてしまった。
あぁ、やはり……。
とおもうのと同時にヒヤリと背中に冷たいものが走った。
それらを含めて結局私は兄の発言についてはスルーする事にした。
だって怖いし。
兄が段々と狂気に呑まれていくような……。
そんな時、先輩がってきた。
會長こと明來あくる先輩だ。
「悠人先輩?
どうしたんですか?」
「うん?
…あぁ、明來か。
僕はただ、可い可い天…咲夜を迎えにきただけだよ?」
もう突っ込む気すらおきなかった。
……明來先輩も凄く引いてるよ?
駄目じゃん。
「悠人先輩…が?
笑ってる……!?」
…え?
そこ!?
しかも兄は基本的に笑っていると思う!
「……お兄様は良く笑っていますよ?」
「いや、悠人先輩が笑うなんて…!!
ありえない!
おかしい!!
怪奇現象だ!」
いや、怪奇現象って……。
兄が笑ったからってなんだというのだろうか?
それだけで怪奇現象って何……?
うーん……良くわからない……。
「あの無表な先輩が笑うなんてありえない!
はっ……!!
もしや、偽か!?」
兄は偽認定されたようです。
……兄が無表ってそっちの方が偽なじするんだけどなぁ。
私はチラッと兄を見てみるとニッコォ…と笑っていた。
ただし、殺気でも出ているのではないかという様子で、だったが。
私はその様子を見て、兄からしだけ離れる。
「……明來、ちょっといいかな?
咲夜、悪いけどしだけ待っていてくれるかい?
すぐに戻るから……」
「分かりました。
行ってらっしゃいませ、お兄様」
兄は冷たく笑って明來先輩に付いてくるように言うと、私には優しげに微笑んだ。
その対応の差にし戸うが天也や奏橙の時の方が酷いため私も笑顔で接した。
ここで兄を送り出さなければ私の方にも被害がくるかもしれないと思ったので私は笑顔で送り出す。
兄はそんな私の頭を優しくポンポン、と叩くと明來先輩の襟をつかみそのまま出ていってしまった。
「…會長、終わったな」
「余分な事言わなければよかったのに…」
天也と奏橙の2人は他人事のように會話を続ける。
その様子に私は明來先輩を心配しつつも兄がやり過ぎないことを祈る事にした。
「明來先輩…無事ならいいのですが…」
「保に走った奴がそれを言うか?」
どうやら天也にはバレていたらしい。
私は笑顔で誤魔化す事にした。
……元はと言えば明來先輩が兄を偽扱いしたり怪奇現象と言ったりしたからなんだ。
しくらいは……いいよね…?
ーー悠人ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
僕は咲夜に斷りをいれてから明來の襟を摑み、引きずって今は使用されていない教室にる。
「ゆ、ゆゆ悠人先輩!
な、なにを……」
なにを?
ふふっ…分かっているだろうに。
偽だの怪奇現象だの…好き放題言ってくれたしね。
全く…それで咲夜に僕に対する嫌悪でも抱かれたらどうするつもりだったのか……。
「明來、君の発言で咲夜に嫌われていたらどうするつもりだったのかな?
他のどうでもいい奴等とは違って咲夜には知られたくない事があるんだ。
……で?
誰が、偽で怪奇現象だって?」
そんな事で咲夜が僕を嫌ったりするような事はないと分かってはいるが萬が一のことがある。
それに、咲夜の中での僕の評価が下がったらと思うと……ね…。
僕は笑顔すらも作らず、無表に戻る。
「ゆ、悠人先輩!
それは、言葉のあやというかなんというか……」
明來が必死に言い訳を探しているようだが、そんな事で気が収まるとでも思っているのだろうか?
そんな事、あるわけが無い。
……まぁ、咲夜に『お願い』されたらしだけ控えるけれど。
本當、咲夜は可い。
あの黒曜石のような綺麗な瞳で見上げられ、首をコテン、と傾げる姿とかは本當に可い!
寫真に殘したいくらいだ。
あの艶のあるブロンドの髪も綺麗だし…。
前に何回か結わせて貰った事があったけどサラサラだった。
しかもマカロンを上げると嬉しそうに笑うし、大切そうに抱き抱えるんだ!
うわぁぁぁぁ!!
本當、咲夜が可い!!
可いすぎて辛い!!
そんな可い咲夜に嫌われるなんて……考えただけでも嫌だ。
そんな事あった日にはきっと……。
だから、そうなるかもしれない理由を作った明來は許すつもりはない。
「しだけ……お仕置きが必要のようだね?」
僕は咲夜の事を思い浮かべ、うっすらと笑みをうかべながらガクガクと震える明來の襟を摑んだ。
その後、部屋だけでなく廊下にまで悲鳴が響いたという……。
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