《脇役転生の筈だった》29

プールでひとしきり遊んだ後、遊び疲れた私達は今度は溫泉へと向かう。

夏とはいえ外なので水から出るとし寒かった。

「わぁ…船の上とは思えないくらい広いです…!」

「向こうへ行けば巖盤浴とかサウナとかもあるよ?」

「巖盤浴って…前來た時にあったか…?」

「んー、多分無かったと思うよ?

1ヶ月くらい前にお父様の思いつきで空いてたスペースに取り付けたやつだし……」

…2、3ヶ月くらい前に父がいきなり、

『そうだ!

サウナを付けよう!』

と言い出したのが始まりだ。

そして急遽取り付けたやつがこの客船にあるサウナだ。

母は口元は笑ってはいたものの……目が笑っていなかったのをよく覚えている。

「……咲夜の家族って自由だな…」

「……私とお母様は違うし!

…………多分!!」

違う……よね?

私の基準が父や兄なのでし心配になってしまうが父や兄より自由にしていないはずだ。

せいぜいマカロン関係にしか……。

「くくっ……多分って…!」

「だって私の基準がお父様やお兄様なんだもん。

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それに、天也だって自由だし、奏橙だって基本自由でしょ?

だから比べられるような人があまりいないの!」

私がしムキになって言うと天也と奏橙が口を揃えて言った。

「「咲夜に言われたくないな(よ)」」

「酷い!?

二人共、私の扱いだけ酷くない!?」

前々から思っていたがやはり私に対してだけ冷たい気がする。

いや、冷たいというよりも遠慮が無いのか。

だが、當の二人は表を変えずに言った。

「気の所為だ」

「気の所為だね」

「絶対に気の所為じゃない!」

そんな風なやり取りをしていると音や紫月が面白そうに笑った。

魁斗は……何故か顔を赤くしている。

…何故だろうか?

「仲がいいですわね」

「まぁ、初等部の頃からの付き合いだからね。

……元はと言えば天也がしつこかったのもあるだろうけど」

ボソッと呟いた奏橙に対して天也が「おい」と、どこか楽しそうにツッコミをれる。

だが、確かにそうだ。

私は最初の頃、攻略対象者である天也や奏橙に近付かないようにしていたのだ。

関われば関わる程殺される確率が上がる…そう思い込んでいた事と面倒だったからだ。

それに私は所詮脇役。

だから脇役は脇役らしくヒロインである音のサポートに徹しつつも死亡フラグを折っていこうと考えていた。

それが今は攻略対象者の一人である奏橙は紫月と両思いとなり、私の友人で馴染。

天也に限っては婚約者にまでなっている。

…兄はシスコンと化してしまったが。

その他の攻略対象者である先輩や後輩とは友人のようなじで親しくさせてもらっている。

それを思うとシナリオなんていくらでも壊せる…そんな気がしてくる。

「咲夜、どうかしたか?」

天也が急に黙り込んだ私の顔をのぞき込むように見てくる。

そんな事でドキッとしてしまった私が恥ずかしくなり、ぶっきらぼうに「何でもない!」と返す。

すると、何を思ったのか天也が急に私の手を握ってきた。

私が思わず天也の顔を見ると照れているのか顔を隠した。

「咲夜が走って転んだりしたら大変だからな…」

「っ…。

こ、転ばないし!

……天也が転んで怪我でもしたら大変だし…仕方ないからこのままでいてあげるけど」

まるでツンデレのような言葉になってしまったが天也は特段気にした様子もなくいつもよりも嬉しそうに笑った。

「それは反則でしょ……」

と思わず呟く程、見惚れてしまう笑顔だった。

幸い天也本人には聞こえていなかったようで安心した。

聞こえてたら死ぬ程恥ずかしいし。

砂風呂にでも行って顔まで埋まりたいくらい恥ずかしいだけだ。

「咲夜と天也は二人きりにしてあげよう」

「そうですわね」

「そうですね」

「……分かった」

私が気付いた時にはそんな會話の後に4人は離れてしまっていた。

そして、後ろを歩いていた奏橙がこちらを見てニヤっと笑った。

その目線は私と天也の繋いだ手に送られていた。

死ぬ程恥ずかしいが先程、繋いでいると言った手前離しにくい。

どうすればいいだろうかと考えを巡らせているうち、プールにった後ということもありが冷えたのか寒くなってくる。

「咲夜、取り敢えず近くの溫泉にるぞ」

「……ん。

ここから近くだとワイン風呂になる…」

「あぁ。

し急ぐぞ」

「……ん」

急ぐといいつつもしっかりと手を握り歩幅を私に合わせてくれる。

そんな天也の事がやっぱり私は好きだと思う。

ーーー天也ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

咲夜が水著を著て出てきた時、一瞬誰かと思うくらい綺麗で、言葉が出なかった。

いつもは下ろしている髪も今日は1つに纏め、その頬はし赤くなっている。

俺が何も言わないでいると咲夜は心配そうに見てくる。

それがまた可いと思ってしまう。

俺が固まっていると音が口を尖らせた。

「天也、何か言ってあげてください!

咲夜ったら可いんですよ!

最初は著るのを嫌がっていたくせに天也の名前を出すと顔を赤く染めちゃって……」

俺の名前を出すと、という部分で俺はし驚いたがそれだけ咲夜が俺の事を意識するようになったのだと嬉しくじた。

そんな俺とは裏腹に咲夜は慌てて音の口を塞ごうとしていた。

「か、かかか音!?

何言ってるの!?」

「本當の事ですから」

音の馬鹿ァァァ!!」

そんなやり取りをしていた咲夜に俺は顔を背けて言った。

顔を背けたのは咲夜が小のように思えてきた事とあの慌てようが可いらしく直視出來なかったからだ。

「その…なんだ……?

…に、似合ってる…。

いと、思う……」

元々咲夜が可いから當たり前だが。

それでも音と結城に禮を言いたい。

「な、なっ……。

何を言っているんですの!

私ですもの。

當たり前でしょう」

顔を赤くしながらもそんな風に言う咲夜がやはりおしいとじる。

それに、照れると令嬢の様な口調になるのは変わらない。

それを思うと俗にいうツンデレとやらを思い浮かべてしまう。

プールでひとしきり遊ぶと溫泉に向かった。

溫泉には俺の知らない間にサウナも出來てたようで驚いた。

しばらく話していると咲夜が寒そうにしていたので取り敢えず溫泉にろうと急ぐ。

だが、その移中も寒そうにしている咲夜を見て思わず

「上著があればな…」

と呟いたのは咲夜には聞こえていないようだった。

咲夜のしだけ冷えた手を引き急いで向かおうとする。

だが、それでも俺は咲夜が転ばないよう歩幅を合わせ、しっかりと手を繋ぐ。

自然と俺と咲夜の距離が近くなる中、ドクンドクンと俺の鼓が響く。

その鼓は咲夜の隣にいるせいなのかいつもより早くじた。

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