《脇役転生の筈だった》30

溫泉から出ると私達は著替え、食事に向かった。

食事はバイキング形式となっていて高級料理が多く並んでいる。

「バ、バイキング形式!?

予約だけで3年もかかると言われているのに…」

とは紫月。

この客船のバイキング付きは1日20名限定となっているのだ。

理由は貴重食材ばかりを扱ってるから。

1人1人の希も反映しているためなめにしているのだ。

だが、そんな中でもいつも1席だけは空けている。

急遽VIP待遇の方がきた時のためだ。

「そういえば取るのが難しいと言われてるが……俺の家がとると大抵とれるよな?」

「當たり前でしょ。

お父様が私の友人って事で(嫌々ながらも)VIP待遇として扱っているんだから」

「…そうだったのか?

なんか悪いな……」

「気にする必要は無いよ。

殆どはお兄様がやった事に対するお詫びだし」

そこで皆が黙ってしまった。

……気持ちは分かる。

あのシスコン兄じゃあ……ねぇ?

「……咲夜、あれはいつもあるのか……?」

そう言って天也が指したのはデザートコーナーの一角…マカロンタワーだった。

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……うん。

いつもは無い。

「……お父様……お母様に怒られてるだろうなぁ……」

「咲夜ってご家族にされていますよね」

「……まぁね。

……ちょっと…結構困る事があるけど。

特にお兄様とお父様の事で」

それに音は何か思い出したのかあぁ……と、遠い目をした。

それだけ々とやらかしてる兄と父に呆れつつもされているという事実が嬉しくもある。

「天野様、悠人様から事付が…」

スタッフの1人が近付いてきたかと思ったが兄から天也に伝言があったらしい。

「なんだ?」

「…『僕の可い妹に手を出してみろ。

お前の命はないと思え』

との事です」

スタッフを帰すと私は頭を抱え、他の皆は顔を引き攣らせた。

「……お、お兄様の……馬鹿ァァァァァァァ!!

シスコン!!

過保護!!……?」

「……咲夜、俺生きて帰れる気がしないのだが……」

それは私にもなんとも言えないのだが……。

だが、それを見て笑っている奏橙は格が悪いと思う。

「はぁ……まぁいいや。

とにかく、食べよう…」

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「…あぁ。

最後の晩餐になるかもしれないしな…」

騒なことを言わないでしいんだけど…?」

「そうですよ!

そんな事にはならない…と思います………多分」

……多分って!!

言い切ってしかった!!

音にまで言われてしまい自分の兄の病気が早く良くなってしいと思う。

「咲夜のお兄様ってあの…蟲嫌いで妹を大切にしているのですよね?

その方が何故…?」

「…お兄様の言う蟲ってさ男子の事なんだよね。

害蟲が天也と奏橙かな。

あの自他共に認める重度のシスコンは…ねぇ……?」

紫月のイメージを壊すようになって悪いけど……。

この頃は奏橙は蟲になって天也が毒蟲になってきたんだよね。

……これもどうかとはおもうが…。

閑話休題

それぞれ、食事を持ってきたところで夕食が始まった。

私の皿の上にはバランスよくのせられている。

その中でも料理長のオススメでもあるローストビーフはし多めにとってきた。

「さ、咲夜……こ、高級すぎて……」

音とは萎してしまうらしい。

弟である魁斗の方は既に食べているのだが。

「気にしなくていいのに。

ほら、魁斗だってもう食べ始めてるよ?」

「む、無理!

無理ですよ!

こ、こんな高級なもの……」

「姉さん、食べないのか?

味いぜ?」

魁斗は何食わぬ顔して平然と食べている。

それを見た音も恐る恐るといった様なじだったが食べ始めた。

「っ…味しいっ…!」

「でしょ?

家のイチオシの料理人だからね」

私が満面の笑みで自慢すると天也がゴホゴホと咳をした。

ったのだろう。

そのせいなのか顔が赤くなっている。

「…やば……かわ……」

…やばい?

かわ?

川……三途の川?

った事で三途の川が見えたとか?

………大丈夫そうだから放っておこう。

「咲夜様」

「あら……天さん?

何故あなたがここに……?」

私に聲を掛けてきたのは屋敷にいるはずの天さんだった。

になったのだろうか?

「副料理長が調を崩しましたので代わりに私が配屬されました」

「そうだったのですか……。

副料理長に、おをお大事になさってくださいと伝えてください」

「承知いたしました。

咲夜様、ケーキをご用意させていただいているのですがどういたしますか?」

……父はケーキまでも用意させていたらしい。

いや、嬉しいけどさ……。

…私達、6人だけなんだよね。

「もうししたらお願いしますわ。

それと…ザクロのジュースはあるでしょうか?」

「はい。

ご用意致しております」

ザクロのジュースはこの船の人気の1つだ。

酸味と甘味が丁度よく合わさっていて味しいと評判なのだ。

このジュースを求めて乗る人もいる程に。

「では、それを人數分お願いしますわ」

「かしこまりました。

そちらはすぐで宜しいでしょうか?」

「えぇ」

々お待ちください」

そういって天さんは一旦、廚房へ戻ると人數分のザクロジュースを持ってきた。

「お待たせいたしました。

ザクロのジュースです」

「ザクロの?」

「えぇ。

この船の名の1つとなっております」

さんは微笑みながらもそう説明をした。

「そうでしたわ。

さん、後程しお時間をいただけるかしら?

ご紹介したい方がいますの」

「承知いたしました。

……では、失禮致します」

さんが私から離れたのを見計らい疲れたように口調を元に戻した。

「天也、後でちょっといい?」

「ん?

あぁ、いいが……」

これでいいか。

家のお抱え料理人ってこともあるし…何より両家に関わりのある料理人の兄弟だしね。

今度春瀬さんのパスタ、食べに行きたいなぁ……。

「あ、そうだ。

ケーキ用意しているみたいだからあんまり食べすぎないようにね?」

一応忠告しておく。

さて、私はマカロンを取りに行くとしよう。

私はマカロンコーナーでいくつかマカロンをとった後、席に戻りゆっくりと食べ始める。

「ん~!

味しい~」

「咲夜、本當に味しそうに食べますわね」

皆から注目されていたことに今更ながらに気付き、恥ずかしくなり俯いた。

「そういえば、今日は柚子はないんだな」

「そんな柚子ばかり食べてるわけじゃないし。

偶には抹茶とかも食べたいし…」

私は思わず口を尖らせた。

そんな私の様子に天也は咲夜らしい、と笑った。

その笑顔を見て更に顔が熱くなっていくのをじる。

天也に対してのを自覚してからというものこんな仕草1つで顔が熱くなり、が高鳴るのをじる。

まるで病気のようだ……そう思う程自分がおかしくなっている。

「咲夜?

熱でもあるのか?」

「無いし!

もう!

…そろそろケーキお願いするよ?」

「あぁ、そうだね」

し笑いの含んだ聲を出したのは奏橙だった。

奏橙は私を見てただニヤニヤしていた。

絶対、理由に気付いているだろう奏橙の足を思いっきり踏みつけてやる。

「いっ………咲夜、それは灑落にならない…」

「何か?」

私は満面の笑みで聞き返す。

奏橙は顔をひきつらせながらもを引いた。

……まぁ、確かに痛いだろうね。

…ヒールだし。

でも、刃を出さなかっただけマシだと考えてほしい。

私の兄と父は過保護過ぎるあまり靴にやたらと仕込みをするようになったのだ。

この靴もその1つ。

ある仕掛けを作させると刃が出るようになっている。

他にも今著ているドレスの裏には2本のナイフがっている。

折りたたみ式と鞘にっているものだ。

……強度はないが。

あとは…ズボンかな。

ズボンの足首の辺に針を隠せる部分があるのだ。

そこには睡眠作用のあるを塗りつけてあるものと麻痺をおこすもの、あとは痛みを消すものの三種類がある。

それの他に何も塗っていない針もあり、各瓶を持ち歩くようにしている。

ちなみに、何種類かの解毒剤も持たされている。

……父と兄は一何を想定しているのだろうか?

「すいません、ケーキをお願いしますわ」

「かしこまりました」

すると、それからししてから大きなケーキを持ってきた。

これには私も絶句した。

まさか、ここまでとは思っていなかったのだ。

……その大きさはまるでウェディングケーキほどにある。

それを誰が想像出來ただろうか?

「……咲夜」

「……言いたい事は分かっています。

ですが…誰がこんなに大きいと思いますか!?

まず、ケーキを用意した事も先ほど聞いたばかりですのよ!?」

「………はぁ……」

「…私はひと切れで十分ですわ」

「私もひと切れでいいかな…」

「私も…」

「俺もひと切れで…」

「僕もひと切れで」

「俺もそれで…」

各自、ひと切れ取ったところで減ったのは10分の1よりもないだろう……。

「…皆さん、もう宜しいですの?」

「あぁ」

「…天さん、スタッフの皆さんをお呼びして頂戴」

「かしこまりました」

スタッフの人達が來るまでしずつ食べていると皆が集まったようだ。

「…50人、ですか…。

し心もとないですが……。

皆さん、お疲れ様ですわ。

本日は私と友人達のために働いてくださりありがとうございます。

そのお詫びと言っては何ですが……。

殘りは皆さんでいただいてください。

これから二日間も宜しくお願いしますわ」

し笑みを浮かべつつ言うと皆、嬉しそうにしていた。

一杯ずつザクロのジュースも用意するように言ってから私達は夕食を終えたのだった。

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