《脇役転生の筈だった》38
夜。
母と父が暮らしている家で2泊する事になっていた。
午後に々な店を訪れた事により疲労が溜まっていたものの大切な話をしなければならなかったため私は1人で母と父の元へと足を向ける。
何度か深呼吸をして心を落ち著かせつつ扉を叩く。
「咲夜です。
お話があるのですが……よろしいでしょうか?」
張からか聲がし固くなってしまう。
留學の話をしたら、父と母は一どんな反応をするのだろうか?
「あぁ、勿論だ」
父の聲が聞こえてきて私は意を決して部屋の中へと足を踏みれた。
「お父様、お母様、夜分遅くに申し訳あり…」
「咲夜ちゃん、取り敢えず座りなさい」
「は、はい……」
母に言葉を遮られはしたものの席につき、お茶を一口だけ口に含むと心がし軽くなった気がした。
「咲夜、話はなんだ?」
「あ……えっと……。
ずっと私に留學の話が來ていたんです…。
今まで々と考えたのですが……」
私はそこでもう一度、考えてしまう。
本當にいいのだろうかと。
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「咲夜、お前の希を優先すればいい」
「っ……はい…。
この話をけたい、です……。
もし、お父様とお母様が許してくださるのでしたら一部屋借りてもいいでしょうか…?」
「勿論だ。
いつからだ?
明日か?
明後日か?
それとも今日からか!?」
……私の心配は杞憂だった様で逆に父は嬉しそうだ。
母も父の様子に呆れてはいるようだが口元は緩んでいる。
そんな父と母に改めて、私はされていると、そう思った。
「來週からのつもりなのですが…もうし遅らせた方が……」
「分かった。
來週からだな。
よし、來週は仕事を早く切り上げて……」
「あなた?
楽しみなのは分かりますが…仕事はちゃんとやってからですよ?」
「わ、分かっている…」
お母様の笑顔を見た父はし顔を引き攣らせていたもののちゃんと仕事をする事を約束していた。
「そうだわ、咲夜ちゃん!
あなた、し席を外すわね。
咲夜ちゃん、行きましょう?」
私は戸いを隠せずにいたが母は止められない事が分かっているため大人しく従う。
……前に止めようとした時、最初よりも悪い結果になったのだ。
何があったかは思い出したくは無い。
私は母に連れられて1室に連れられた。
その中へるとそこは、私にとって悪夢のような場所だという事が分かった。
その部屋には何百著もの服(ドレスが多い)があったのだ。
私は逃げようとしたものの母にガシッと肩を摑まれてしまった。
「さ~て、咲夜ちゃん!
明日の服を決めましょう!」
母はいつもよりも張り切っていた。
何故私は逃げられなかったのか、今までしでも練習をしていれば……と後悔をした。
「咲夜ちゃん、天也さんの事は好きかしら?」
「ふぇっ…!?」
予想外の質問にそんな間抜けな聲が口から飛び出した。
母はふふっと笑ってから私をジッと見つめてくる。
その姿は私が答えない限り何も進まないだろうと思わせる。
「は、はい……。
す、好き……です………」
私は恥で顔を赤くさせながらもはっきりと、答えを口にした。
その答えを聞いた母は満足そうに微笑むと再び質問をした。
「咲夜ちゃんは天也さんに綺麗だと言われたくない?」
「い、言われたい…です……」
「なら、咲夜ちゃんに合うものを探しましょう?」
そう言われて私は頷くしかなかったのだった。
そしてその後すぐに頷いた事を後悔した。
分かってはいた事だったのだが何十著も著せられたら……。
いつもよりも疲れた気がするのはきっと気の所為ではないはず。
…だが、明日天也が褒めてくれるのならばいいと考える辺りは私も甘いなぁ…などと思う。
ちなみに私がこの程度で済んだのは音や紫月を巻き込んだからだ。
音と紫月には明日誤っておこうと思う。
「あ……咲夜……?」
「魁斗?
どうかなされましたの?」
言葉使いに関しては母と父に隠したいという理由から元に戻しているだけだ。
他意はない。
「どうしたって……お前こそどうかしたのか?
疲れたみたいな顔してる」
「そうでしょうか……?
そんなにも顔に出ているのかしら…?」
その様なつもりは無かったため思わず眉を潛めた。
「魁斗、し付いてきてくれるかしら?」
「あ、あぁ……」
私は魁斗の聲を聞き、背を向けて歩き出す。
私達は特にこれといった會話をする訳でもなく、目的の場所につく。
外なのでし寒い気もするが大丈夫だろう。
そう思い近くにあったスイッチを押し、電気を付けるとそこには今はもう使われていないが手れされた事が分かるサッカーコートがあった。
そう、ここは兄が昔使っていたサッカーコートなのだ。
もう來ることは無いと思っていたが……。
「約束。
船では守れませんでしたから。
今はこれでお許しください」
「え……こ、ここ使っていい、のか?」
「えぇ、そのために案したのですもの」
「サンキュー、咲夜!」
私がボールを渡しベンチに座ると魁斗は目を輝かせながら夜のコートで一人、サッカーの練習に打ち込んだ。
「咲夜様」
「あら…ふふっ 。
お久しぶりですね、真田さん。
お元気そうで何よりですわ」
真田さんは私が小さい頃から仕えてくれている人で今も父に付いている。
つまりは信頼のおける人だという事だ。
「咲夜様こそお元気そうで何よりでございます。
それにしても……あの咲夜様にこんなにもご友人が出來るとは……」
そう、こんないらない事を言ったりもするが信頼出來る人なのだ。
「あら、お兄様やお父様の過保護なところが無くなればもうし友人は増えていたと思いますわ」
だがしだけ拗ねたようになってしまうのはごだ。
真田さんはまるで娘の長を見るかのように寂しそうに微笑んだ。
「咲夜様、何か溫かいお飲みでもご用意致しましょうか?」
「…お願いします。
もうしすれば魁斗も戻るでしょうし2人分…いえ、3人分お願いしますわ。
真田さんの分もいれて4人分だったわね」
もう1人は天也の分だ。
どうせ心配しているだろうし…。
「…心配、してくれてるのかな……?」
『咲夜だから』で済まされそうな気もするが……。
それでも苦笑して『仕方ないな…』なんて言ってくれるのだろう。
前世では何を頑張っても『香乃なら當たり前』『香乃だから』で済まされてきた。
私の頑張りなんて、誰からも認められなかった。
いや、見られてすらいなかった。
それを思い出すと思わず表が暗くなるのをじる。
「あ……悪ぃ……。
待っててくれたんだな…」
「あら、もういいんですの?
私の事は気にしなくともいいのですけれど……」
「あ、あぁ…。
大丈夫。
サンキューな!」
私は前世に関しての記憶を振り払うように背を向けて歩き出した。
「いいのでしたら戻りますわよ。
明日は早いでしょうから」
あの様子の母は暴走しやすいのだ。
きっとテンションが上がって早めに起こしに來るだろう事が予測される。
それに、真田さんにお茶を用意してもらっている事だし……。
「咲夜」
「あら…天也、どうかしましたの?」
やはり天也は來たようだ。
分かっていたとはいえ嬉しくじるのはきっと私が天也に対してを抱いているからだろう。
「心配しただろうが…。
何処を探してもいなかったからな…」
「あら、それは申し訳ありませんわ」
私は天也の言葉に悪びれもせずにクスッと笑って答えた。
天也は困ったように笑ってはいたもののやはりそうも怒ってはいないようだった。
「まぁ、咲夜だからな。
いつだって心配なんだが……」
「それは酷くありませんの?」
冗談めいた天也の言葉に私はツッコミをいれ、2人して笑う。
「咲夜様、お茶のご用意が出來ました」
「えぇ、ありがとうございます。
天也は……」
「行くに決まっている」
やはりついてくるらしい。
これが奏橙なら嫌な顔をしただろうが天也なら別に問題はない。
その後、3人で話しながらお茶をしていて結局寢るのは遅い時間になってしまったのだった。
そして、次の日。
まさかあんな事になるとは思ってもいなかった。
私達の立場を考えれば予測出來た事だった筈なのに……。
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